成長期はこれからです、と君は言う
一年前から、私と石田は図書当番の日が一緒だった。
だから話すようになって、気づけば一緒に漫画を読んだりするようになった。そういうと、友人からは「付き合ってるの?」と言われるが、そんなことはない。
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「先輩、身長いくつでした?」
「……日本人男性の平均とほぼ同じ」
薄曇りの昼休み。今日は身体測定があった。
私と石田は並んで図書室のカウンターに座っている。
私は話しかけられるまでは三兄弟の誰が父親殺しの犯人か悩んでいて、石田は直木賞と山周賞同時受賞したマタギの一生について考えていたようだ。
キリがよかったのか考えるのに飽きたのか、ハードカバーから目線をあげ、石田が横目で私を見ている。
背が高いことは、私の数あるコンプレックスのひとつだ。
これでもう少しウエスト位置が高くてきっちりくびれていれば、モデル体型と誇れただろうが。現実はいつだって残酷だ。
「……やっぱり大きかったんですね」
「そういう石田は?」
石田の目線がそらされる。座っていても私よりわずかに低いそれ。
「成長期はこれからです」
石田の耳たぶが赤い。普段、淡々としているのに不意に見せるこういう捻くれたところを可愛いと思う。
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私と石田は、少し仲のいい先輩と後輩だ。
それでも私は、石田がどんなふうに笑うか知っている。たぶん、石田も。
私は石田との関係性を言葉に表したくない。居心地のいい曖昧さを享受しながら、石田の隣で本を読む。