初めて
不幸な人間にとって、死とは無期懲役の減刑である
〜アレクサンダー・チェイス〜
『うっわ、あっぶねー。後ちょっとであたしかの有名な留置所って所に放り込まれてたわね。あー、こわこわ』
所変わってそこはとある教会の通路。
彼女が所属する組織の所有建造物の中である。
この中なら警官には出会わないだろう。
ここでなら好きなだけ煙草が吸える。
と、思って胸元をまさぐるのだがお目当ての煙草がなかった。
おかしいな。
さっきはたくさんあったのに…
『って、どうせあんたのせいでしょ?早く返しなさいよ不道』
そう言って七花は振り向く。
そこにいたのは先程の女を想像させるような真っ黒のスーツをまるでダル着のようにして着こなしながら七花が吸っている銘柄と全く同じ銘柄のタバコを吸っている男だった。
『んあ?まあまあ、いーじゃないの。硬いこと言わなくてもさ。七花ちゃん』
そう言って男は七花の小さな頭を撫でながら歩き出す。
その姿はまるでアニメに出てくるおじさまキャラを気取ったようだ。
まあ、エヴァに出演しているとあるおじさまキャラに似てなくもないけど。
ほら、あのヒロインに迫られてたおじさんキャラ。
とか、思いつつ七花は腰にある愛銃を取り出して、とりあえず男に向けて躊躇うことなくぶっ放した。
『ちょっ⁉︎七花ちゃん?どーしたのさもー、若い子は怖いなぁ』
何発か撃ったのだがそれを全弾かわしてから男は抗議するように言ってくる。
が、そんなこと七花には関係ない。
抗議してきた男のネクタイを掴み思いきり引き寄せてから叫ぶ。
『んなこたぁ、どうでもいいのよ!早くあたしの煙草を返し…んっ⁉︎』
思いきり近付けて七花が抗議しようとした瞬間、目の前の男に唇を覆われた。
そこからしばらく男の接吻は続いた。
男の舌がまるで別の生き物のように七花の口内へと侵入して容赦なく七花に快感の波を与えてくる。
それを追い出すように自らの舌で男の舌を押し出そうとするがそれは逆により深い繋がりあいになっただけだった。
そうして待つこと五分。
『ふぃーっ、ごっそさん』
男はようやく七花を解放し彼女へと笑いかける。
そんな男に対し七花はへたり込んで俯いていた。
それは、果たして羞恥の現れだろうか。
それとも…
『なっ、にっ、をするんだおっさんてめえごらぁっ!』
まあ、単純に怒りですよね。
七花は一瞬で立ち上がり自らの愛銃を構え男へと撃ちまくる。
弾切れになってもすぐに弾を詰め直し流れるように男を撃ち続ける。
『ちょっ⁉︎七花ちゃん!危ない!危ないから!』
男はそんなことを言いながら避ける。
避ける。
避ける。
だが、七花は止まらない。
弾が全弾なくなるまで撃ち続けた。
そうして最後に男に向けて叫ぶ。
『はっ…初めてだったんだぞごらぁっ!』
『え?マジで?ごめん』
だがしかし、男はそんな怒り心頭な七花に対しただ適当に謝るだけだった。