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健気な戦闘開始宣言

 紺のブレザーに白いブラウス。グレーのプリーツスカートの裾は膝のかなり上だが、その下の素足のほとんどは膝下近くまである紺のハイソックスとそれとほとんど変わらない高さの焦げ茶色のブーツに包まれている。ブーツはお洒落な女性用の物ではなく、鋲などが打たれたパンクロッカーが履きそうなゴツゴツしたデザインの物だ。

 ミエは、とあるミッション系スクールに通っているといっていたので、そこの制服なのだろう。焦げ茶色ゴツゴツブーツが激しく不似合いではあるけれど。

 立ち上がっても座席の背もたれから頭ひとつ分ぐらいしか出ない小柄さだ。意思を込めた視線を怪物の方へ向けるその様は、まるで春先のリスのようだ。

 引き締めた表情で戦闘態勢に入ったミエは、右手首に絡ませていたロザリオをじゃらりと鳴らした。


「ロザリオ……」


 祐介は思わず呟いた。

 キリスト教カトリック教会で使われる祈りのための用具、だとミエから説明を受けていた。

 数珠状の紐にペンダントトップのように十字架が付いているのだが首から下げることはしない。

 通常は祈りをささげる度にその珠を手繰って回数を確認する物だ。

 だが彼女はこれを討魔のための武器として用いていた。

 ロザリオの中で一番大きなパーツである十字架でも小さな彼女の掌からはみ出す程度の大きさしかない。しかしその殺傷力はこれまでに二度の怪物との遭遇時に佑介も目の当たりにしていた。

 いや、ミエとその小さな兵器により命を救われたのだ。


「んん、どうしよっかな」


 思案のミエの声。

 どう攻めるべきか考えているのだろう。その様からは余裕すら感じられる。


「佑介さんがバトルタイプじゃないんなら、ここはミエが頑張りますねっ」


 健気っぽさを感じるセリフだが、これは戦闘開始宣言だ。

 祐介が言葉を発する暇もなく彼女は通路を小走りに三列先の座席まで進むと、片膝を乗せるような形でシートに飛び込む。


 祐介のいる位置からは彼女の様子は見えなかったが、何をしようとしているのかは理解できた。

 窓を開けて敵を攻撃をするつもりだ。


 ――そんな事をしたらそいつが入ってきてしまうじゃないか!!


 思わず佑介は立ちあ上がっていた。

 具体的に考えがあったわけでははないが、ミエの軽挙を止めようと思ったのだ。


 だがそれもまた恐怖とパニックが咄嗟にとらせた行動だ。

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