第三話 潜入
4000字から6000字で落ち着こうと頑張ってますが、戦闘がないと表現が酷い……
いや、戦闘も酷いですが……
では、どうぞ
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傭兵旅団の旗艦『グランドフリューゲ』が港湾都市『ハルバート』を出発して3日が経った。
結局、マックは報酬の値切ろうとしていた都市政府を打ち負かして契約通りの報酬を受け取ることに成功したという。
おまけに、逆に雇い主の不備を指摘して、1週間分の食糧までガメてきた。
その日の夕食は盛大に食堂が賑わった。
あまり長持ちしない新鮮な魚などの食材が手に入ったのだ。料理長が腕によりをかけて作った料理はどれも最高の一品。めったに食べられないものを食べて旅団の士気は大いに高まった。
「で、仕事した俺たちがダウンしている間に、めぼしいものはあらかた食ったというのか」
「ま、まあそうなるな。だ、だが、呼んでも来なかったお前が悪いんだし、負傷者のところにはちゃんと持って行った」
ルートが同年代の青年を睨み付けている。
睨み付けられた青年は、怯みながらも決して引こうとはしていない。
「ほお、ではなぜ俺には届けてくれなかったんだ?」
「寝てたし」
「……ちょっと面貸せ」
「ええええええっ!?」
「酷いよ、ルート。届けたの俺じゃないのに……」
「うるさい、お前の隊の人間には間違いないだろうが、フラッシュ」
「ぐぐぐ……」
頭をさすっている青年、フラッシュが何か言いたそうな顔をしているが、殴られた手前迂闊なことを言えば更なる追撃が来るとわかっているのか、表情だけで何も言わない。
「しっかし、ルートの部隊が開店休業だなんてな。よっぽどの相手だったんだな」
「うん? ああ、まあそうだな。仲間めがけてミサイルぶっ放すような奴が敵とは思わなかった」
「……戦いたくないな」
PPPPPPPPPP
携帯端末が着信を知らせる。
ルートとフラッシュが同時にポケットに手を突っ込み、同時に取り出した。
「そっちだ」
「の、ようだ」
鳴っていたのはフラッシュの方だった。
『お、繋がった』
「旅団長でしたか」
通信の相手はマックだった。どうも神妙な面持ちだ。何かあったのは間違いない。
『すぐ来てくれ。出動要請だ』
「! 了解しました」
通信が切れ、ルートに向き合った。
「お前の分が回ってきた気がしてならないんだけど?」
「知ったことか。ほら、あまり旅団長を待たせるなよ」
「……わかったよ。……あ、そうだレイにお大事にって伝えといてくれ」
「了解だ」
それだけ言うと、フラッシュはマックの執務室へと走って行った。
「……あ~、暇になってしまった」
とりあえず体鈍らないようにしないとな、と呟いて、ルートも自室へと歩いて行った。
「緊急要請だ」
執務室へフラッシュが着くと、マックは開口一番そう言った。
「ここから約100キロ離れた都市『デュマル』から旅団に向けて救援要請が送られてきた。空港が占拠され、人質を取って犯人が立て籠もっているとのことだ。都市政府は今の戦力では事件解決は不可能と判断、遠距離無線を通じてわれわれに助けを求めてきた」
「『デュマル』ですか。一度行ってますね」
「ああ、その際こちらが常時傍受している無線の周波数を教えておいたから、それで連絡を取ってきたのだ。幸い100キロ程度だ。ヘリで現場に急行、指揮権を移行する」
「了解、全隊員を後部格納庫に集めます」
「うむ、407部隊出動せよ」
「……以上が今回の作戦の概要だ。質問はないか?」
誰も手を上げない。皆大丈夫、と頷く。
「では、全員装備を持ってヘリに乗れ」
後部格納庫。
大型のヘリや高速機が格納されている格納庫で巨大な防弾シャッターの外はカタパルト射出機が2基設置された滑走路がある。
今回、フラッシュたちは定員20名の中型輸送ヘリで出動する。
すでに格納庫の重厚なシャッターは解放されており、外から冷たい朝の風が吹き込んでいる。
朝の9時を回っているが、まだ少し寒い。
ヘリがエンジンを温めてフラッシュたちの到着を待っていた。
フラッシュ以下12名はそそくさとヘリに乗り込み、パイロットに合図を送ろうとして固まった。
「よっ」
「レイ!? お前どうしてここに?」
パイロット席にレイが座っていた。先ほどルートにお大事にと伝えておいた手前、驚いてつい声を上げてしまった。
「いやなあ? 腕の修理が思うより時間がかかると言われてな。だから腕のパーツを全部旧型の狙撃用アームに取り換えて腕ごと修理してもらっていたんだ。そのことをマックが聞いて、「ちょうどヘリ部隊に欠員が出ているから手伝ってくれないか」と言われてな。ここにいる」
「そんな簡単にほかの部隊から人引っ張ってきていいのかな?」
「それがマックという人の人柄だろう?」
レイがにやりと笑う。そして「飛ぶからさっさと座席についてくれ」と言い、フラッシュに座るよう促す。
「到着は20分後、上空から落下傘降下し、空港屋上から犯人グループを制圧する」
「レイも出るのか?」
「俺は遠くからスコープでも眺めてるさ。頑張れ」
エンジン出力を上げたため、それ以降の会話は無線越しになった。
「降下準備」
レイがそう言うと、全員が立ち上がった。ヘリのローター音が聞こえないようにかなりの高度から飛び降りる。風に乗って都市を縦断し、空港の真上に着地する予定だ。
都市『デュマル』。
内陸の空の玄関口として多数の都市と空路を結んでおり、大陸のハブ空港であるデュマル空港は世界屈指の巨大空港だ。2ケタの滑走路と5本の管制塔を持ち、複雑な空の道を管理している。
今回の人質事件はそのデュマル空港で起きた。
犯人グループは人質と引き換えに身代金と脱出用の飛行機を要求している。十分に訓練されており、迂闊に突入した警察隊が返り討ちにあったという情報も入ってきている。
「確認するぞ。空港上部に取りついた後はイーグルチームとタイガーチームに別れて、北棟と南棟から中央棟を挟撃する。イーグルが敵を引き付ける間に、タイガーが人質を確保、確保し次第敵の掃討に移る」
空港周囲はすでに都市警察により閉鎖されている。邪魔が入るとしたら犯人の仲間のみだ。
イーグルチームはフラッシュ以下4名、タイガーチームは8名、人質救出に人員を割かなくてはならないのは致し方ない。迅速さが求められるためタイガーチームは軽武装だ。まともにやりあっては勝ち目はないため、イーグルチームの援護が不可欠だ。陽動していても、敵がタイガーチームに気が付いた場合は火力でそれを抑え込むのがイーグルチームの仕事でもある。
故に、アンドロイド2名がイーグルチームに加わっている。長いこと部隊の仲間として連れ添ってきた力強い仲間である。
「見えるか?」
ヘリの扉を開き、下を覗き込む。だが、雲に隠れて下の状況はよく分からない。
「ネガティブ。雲で見えん。レイ、どうだ?」
『座標では正しいはずなんだが、なあ。仕方がなかろう。頑張ってくれや』
「軽く言うな」
だが、今はレイの言葉信じるしかない。
予定通りならヘリの前下方に空港があるはずだ。それを信じて飛び降りるしかない。敵にばれなければいいのだが。
降下する順番はイーグルチーム、タイガーチームの順で、空港に取りついたら屋上の換気口から潜入して人質を取って立て籠もっている吹き抜けのロビーを挟撃する。
ヘリはフラッシュたちが飛び去ったらすぐさま『デュマル』へ向かい、現地の警察と合流、突入する407部隊を掩護することになっている。
「準備はいいか?」
後ろを振り返り、全員を見渡す。全員が頷く。
「いつでも行ける」
『グッドラック』
レイが最後にそう言い、フラッシュは大空に飛び出した。
重力の法則に基づいて垂直に落下していく。あっという間に最高速度に達し、雲を突き抜ける。
そして視界一杯に広がる、巨大な空港施設。
すぐさまパラシュートを開くと、それまでの落下速度がつんのめるように落ちる。体を支えているハーネスが体に食い込む。
両手でパラシュートを操作しながら下に視線を向ける。
空港のロビーがある巨大な建造物が徐々に大きくなってくる。やや離れたところに無数の車両群を確認する。
上空の強い風にあおられて流されそうになるが、それを巧みな操作で無効化して真正面に空港をとらえる。着地地点の建造物を目指していくと、その下にロビーを広く見渡せるガラスの壁が確認できた。残念ながら今はシャッターが下ろされていて中の様子を確認することはできない。
「全員ついてきているか」
『全員ついてきてます』
最後尾を行くローグから即座に返事が返ってくる。アンドロイドである彼が全員の位置を常に見守って、風に流されていないか見ている。1人でも予定進路を外れた場合はその隊員の軌道修正を任されている。
『タイガーチーム、北棟を目指します』
後続8名がフラッシュたちと針路を変更して北棟へ向けて降下する。
それを見つつも、フラッシュたちが着陸態勢に入った。
ザザッ
屋上のコンクリートで靴底を擦る音とともにフラッシュが屋上に着地、手早くパラシュートを外し、銃を構えて後続を掩護する。
フラッシュが着地して15秒でイーグルチーム全員が着地。
近くの換気口の外装を外しにかかる。
『タイガー、着地完了』
「イーグル了解、作戦を開始」
『了解』
離れた北棟に降り立ったタイガーチームから無事着地の報が入る。
換気口の蓋を静かに外し、暗視ゴーグルを装着する。こうしないと暗くて何も見えない。
楔を打ち込み、そこにワイヤーを結びつける。そのワイヤーを換気口からダクトに垂らし、それに身体を繋いで狭いダクトに体を入れる。35メートルの縦穴を滑り落ちて地下まで落ちたらシャレにもならない。
手足をダクトの壁に押し付け、滑り落ちないように気を付ける。暗いダクトの中でロビーの方向へ伸びるダクトを探しながら、少しずつ降りていく。
15メートルも降りると屋上の光も届かなくなる。そこで丁度横に伸びるダクトの入り口を見つける。
それに頭から入り込んで、匍匐で前に少しずつ進んでいく。
ダクトは薄いため、少し進むたびにベコベコと静かに進むフラッシュにこれでもかと自己アピールしてくる。狭いために少しの音も大きく感じてしまう。
頭に叩き込んでおいた図面を思い出しつつ、何度かダクトを曲がり、突き当たると下から光が漏れている場所にたどり着いた。ここがダクトの終点だ。
光が漏れているのはダクトの点検用の蓋で、わずかな隙間から下を見ることができる。見たところ近くに人の気配はない。
フラッシュはドライバーを取り出し、蓋の四隅にあるネジを1本ずつ慎重に抜いていく。間違っても隙間から下に落とさないようにしながら。
最後のネジは蓋を片手で抑えながら外す。ネジを取った途端に下に落ちれば、けたましい音を立てることになる。最後のネジを外すと重みで蓋が数センチ落ちる。すかさず蓋の向きを変えてダクトの中に入れて、ダクトから下に飛び降りる。
正しければ、ここはロビーから少し離れた南棟の一室であるはずだ。
銃を構え、扉に近づき、少し扉を開いて通路を確認する。犯人グループはここまでは偵察に来ていないのか、通路の先まで人影はない。
そこでフラッシュは静かに扉を閉め、無線で屋上の後続に合図を送った。
「イーグルリーダー、潜入した」
思った以上に酷い(泣)
柔らかい表現ができないんで。
ジョークとかユーモアとか欠乏して逝きますので(誤字にあらず)よろしくお願いします