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第三十三話 裏切りには裏切りを……

ハンムラビ法典みたいなこと言ってますが、気にしないでください。


そう言えば、エジプトかどこかで目に硫酸入れた人に対する刑がそのまんまだったんですってね。延期とかになったそうですけど、怖いですねえ……。


犯罪を容認する気はさらさらないですが、自分がされてもつらくないことすればいいのに、って思ってしまいます。あ、それじゃ犯罪にはならないか。そうだ、そうすればいいじゃないですか……。


とか、考えている今日この頃。

「状況を説明する」


いつものように、集められた隊員たちの前で、マイクを手に持ったマックは巨大なスクリーンを指示棒で軽く叩いた。


「我々は現在、『デルジャナ』南方190キロのこの地点にいる。『デルジャナ』までの行程はほぼ無事に消化し、先日立ち寄った都市での修理は途中で止めることになってしまったが、ほぼ全快に近いほどまでになっている。我々はこれより都市『デルジャナ』へ侵攻、敵勢力を殲滅しつつ今回のターゲットであるジャック・マガスを目指す」


マガスの顔写真がスクリーンの端に映し出される。


「『ニースローグ』の仲間により敵の現在の戦力が概要ではあるが、掴めた。戦車、航空機、ヘリ、どれを取っても我々では到底相手取ることのできない数だ。概算ではあるが、戦車100、航空機80、ヘリ40、歩兵戦力に関しては万に達している可能性すらある」


辺りをどよめきが支配する。

桁が違いすぎるのだ。旅団は非戦闘員を含めても2000人になんとか届く程度で、数の上で圧倒的に負けている。戦争は数ですべて決まるとは言わないが、重要なアクターであることに変わりはない。5倍以上の差があっては少なからず戦う前から結果が見えていると思われても仕方ないの無いことだ。


「ご存知の通りだが、我々は少数精鋭を気取っているわけではないが人数が少ない。正面切って戦うことはまず不可能だ。そのため、我々は古い仲間のやったことを再びやろうと思う」


『デルジャナ』の地図が拡大され、円形の都市の詳細が表示されたものに切り替わる。そして、そこに1本の青い矢印が南から伸び始め、都市内の入り組んだ迷路のような道を進み、中央付近にあるドームのような建物に吸い込まれていった。


「15年前、『始まりの機械人』を倒すために機械人だけの部隊が組織され、見事彼らを打ち砕いた。あの時の目的地はここではなかったが、我々の目指す場所はここ、『デルジャナ』最大の屋内競技場だ。内部には80基以上の核弾頭が配備されていると思われる」

「発射時には、外に出すのですか?」


暗闇から声が響き、それにマックは小さく首を横に振ることで返答した。


「ここの天井は開閉式だ。ドーム自体が巨大なサイロの役割を果たしている。『大崩落』時に軍事転用されたため、ミサイルの直撃程度では破壊することは叶わん代物になっている。そのため、『血の盟約』戦と同じく、少数による潜入工作と大規模な主力による戦闘となることに決まった」


スクリーンに映し出されていた映像が切り替わり、『デルジャナ』の地図が縮小、周囲の地形が姿を現す。


「出入り口は3つ、東西、そして南だ。本艦は南より突撃、敵の陣地を乗り越えて中枢を目指す。それを航空部隊1個小隊が掩護、戦車隊は2隊に分かれて東西から部隊を率いて突入する。これはあくまで時間稼ぎだ。『ニースローグ』都市軍の派遣隊到着を待ち、絶対に無闇な先行はするな。突入するのは401部隊、メンバーは前回と同じで行く。リーダーのルートは作戦までに必要と思われる物をすべてリストアップして提出しろ。レイ、全ての武装を換装するから後で俺のところに来い。カンナ、お前の十八番を存分に発揮できるよう体調を整えておけ。ラーキン、フィリップ、とにかく出来るだけ多くの武器弾薬を運べるようにしておけ。弾が多いに越したことはない。これは大柄なお前たちにしかできないことだ。」


ルートたちに手早く指示を飛ばすと、マックはスクリーンを消す。照明がついて目が明るさに順応するまで目を瞬かせる。


「『ニースローグ』都市軍の到着は明日の1500時を予定している。だが、敵の動き次第ではそれを待つことは不可能だ。その場合は、先ほど通り時間稼ぎに徹する。401部隊はヘリで途中まで輸送する。掩護3個小隊と共に上空から突入し、浸透、ドームを目指せ。絶対に死に急ぐんじゃないぞ!」


マックがその場を締めて、作戦会議は終了した。












「な、なんだお前たちは!!」

「あら、私を知らない人がこの建物にいたとは驚きね」


ジゼルは行く手を遮った男を押しのけて通路を進む。その後ろには武装した兵士が顔を隠してついてくる。そしてジゼルの横にはマスクで口元を隠しているフェイナがジゼルの背後を守る様に寄り添っている。


「こ、これは越権行為だ! 軍のクーデターは極刑だぞ!!」

「残念、裏切られたのは我々なのよ? そこをお退きなさいな」


ジゼルが自らの持つ拳銃を男に向けると、撃鉄を起こす。


「これより我々『ニースローグ』都市軍は世界に仇を成す敵、マガスへの共謀容疑で大統領を逮捕する。法規に基づき、現役の大統領と言えども逃れることは許されない!」


ジゼルは男の足元を拳銃で撃つ。男は飛び上がって逃げ出していき、ジゼルは男に目もくれずに拳銃をしまうと階段を上って大統領の執務室を目指す。


「フェイナ、大統領が妙な動きをしたら、分かってるわね?」

「はい、皆さんの代わりに……」


もし、大統領がジゼルたちの手を逃れて逃亡した場合、悪者になるのは確実にジゼルたちである。何しろ、相手は大統領だ、しかも人望厚く、彼がジゼルたちが裏切り者だと言えば、市民は大統領に味方するだろう。自分たちが支持していた男が何者かも知らずに。


だから、何があろうとも大統領を逃がすわけにはいかない。逃げようとしなくとも、妙な動きを見せればフェイナが大統領の動きを止めることになっている。これは、双方の同意のもとで決まったことで、いざとなればジゼルは全ての責任をフェイナに被せることになっているのだ。申し出たのはフェイナで、そうすることで少しでも失敗時のジゼルに対する責任が軽くなれば、とのことだった。


最初は、ジゼルは猛反対した。

だが、結局ジゼルが折れてそういうことに決まった。失敗時は、フェイナが単独で都市を脱出、旅団と合流することになっている。それを追撃するのはジゼルの役目だが、本気では追わない。それどころか、フェイナが『デルジャナ』に向かっていると口実をつけてでも『デルジャナ』へ向かう腹積もりだ。


もちろん、失敗など考えていない。

そのためにこの大統領公邸を軍の車両で包囲し、敷地内も完全に封鎖したのだ。

だが、大統領たるものいつ何時も造反に備えなければならない。歴代大統領が造った、大統領のみが知る脱出口の1つや2つ、あってもおかしくない。


「いっそのこと最初に1発撃っちゃいましょうか」

「ジゼルさん、それは駄目ですよ……」

「冗談よ。さあ、行くわよ」


豪奢な木製の両開きの扉。

その目の前にジゼルとフェイナは立ち、ジゼルが背後の兵士に待機するよう指示する。

そして扉を丁寧に2回ノックした。そして中からの返事を待たずに扉を開け放ち、大きな執務机の向こう側で外を眺める男を見据える。


「……まさか、このようなことになるとはな」


男、大統領は静かな口調で囁くように言った。そして顔を2人に向け、柔らかい笑みを浮かべたまま椅子に座ると、背もたれに寄りかかって腕を組む。


「大統領、国際的犯罪者、ジャック・マガスに対する共謀容疑で身柄を拘束させていただきます」

「今ならまだ間に合う。すぐに引き返すがいい。私もそれくらいを許す度量はあるつもりだ」

「残念ながら、主導権は我々にあります。裁判所に書類を提出し、すでに逮捕状を請求しました。大統領、いえ、大統領の偽者、あなたの悪事は露見したのよ」


ジゼルが合図してフェイナが持っていた拳銃を大統領に向ける。

だが、大統領は臆する気配も見せず、笑みを崩さない。


「ならば、冥土の土産に君の推理を聞こうじゃないか。どうして私が偽物だと思うのかね?」

「……、いいわ、教えてあげる。あなたが15年前の終戦前に、機械人たちの残骸を最初に確認したのはあなただったわね。あなた、いえ、当時の彼はその時あなたたちに殺されたんでしょうね。そしてあなたがその座について、見事にあなたは大統領に就任してこの都市の行政を握った」


そこでジゼルは一息つき、大統領の反応を窺うが、笑みを浮かべたまま動かない。だが、その目は先ほどと違い、こちらを見定めるような目に変わっている。それだけでも、ジゼルにとっては彼が偽物である証拠になっているのだが、それだけでは足りない。圧倒的な証拠がいる。反対派すら賛成に回すような、決定的なものが。


それすなわち、大統領自らの言質。


「続けて」


大統領が静かに促す。その手が妙な動きをしないかフェイナが監視していたが、今のところ逃げるそぶり、何かをしようというそぶりは一切見せない。


「…………そしてあなたは『デルジャナ』の監視と管理を申し出て都市軍から選抜するよう私に申し出た。まさか私が選んだ人間が裏切るとは思わなかったけれど、裏であなたが手を引いていたのなら頷けるわ。トップが言えば決意も揺らぐわよね。それも尊敬しているのだから、なおさら、ね。そして見事あなたは『デルジャナ』にマガスたちを招き入れることに成功し、今まさに巨大な災厄を引き起こそうとしている」


言い終わると同時に大統領が拍手をし始めた。

今銃を向けられているにも関わらず、大統領は余裕綽々、緊張している様子もなく2人を見つめ、口を開いた。


「お見事、と言いたいところだが、あいにく間違いが含まれている。監視部隊の指揮官を誘ったのはマガス本人だ。そして、私はマガスを『デルジャナ』に招き入れたのではない。彼はずっと昔から『デルジャナ』にいたのだ」

「なっ!! それじゃ、まさか……!」


フェイナが驚いて声を上げると、大統領はジゼルに向けていた視線をフェイナに移して、小さく頷いた。


「いかにも、ジャック・マガスという男は機械人だ。『デルジャナ』においてナンバー2の権力を持っていた、な」

「馬鹿な! 『始まりの機械人』たちはすべて殺されたはずだ!」


だが、その問いは大統領の高笑いに遮られる。


「この男の身体は『始まりの機械人』が殺された場所で奪い取った。そんな場所では、敵が1人生き残っていてもおかしくあるまい?」

「『始まりの機械人』が生きていたとなると……、あなたにはもっと聞かなければならないことがありそうね」


執務机を回り込んで拳銃を大統領にジゼルは向けるが、大統領はまったく動じない。


「おかしなことを言うのだね、ジゼル。私がここまで追い詰められておきながら、君たちにこれ以上話すと思っているのかね? 機械人たる私が、貴様らのような人間に、屈するとでも? あいにく、そうはいかないのだよ!」


大統領の手がジゼルの持つ拳銃に伸びる。

フェイナが大統領の腕を撃ち、片手は弾き飛ばしたが、もう片方の手はその陰からするりと伸びて、引き金に手を添えるジゼルの手を握りしめた。


「なっ!」

「せいぜいあがきたまえ、人間諸君」


引き金に指を滑り込ませ、大統領、いや偽者は自らに向けられた拳銃の引き金を引いた。


乾いた破裂音が響き渡り、偽者の脳天に小さな穴が開く。だが、血が噴き出すこともなく、偽者は衝撃で椅子からずり落ちて執務室の床に横たわった。予想外の行動にその状態で固まってしまうジゼルとフェイナは、倒れた偽者に視線を集中させる。


「司令、大丈夫ですか!!」


そこに発砲音を聞きつけた兵士がなだれ込み、大統領の死体、いや残骸を見て絶句する。血も流すことなく脳天に穴の開いた顔を兵士に見せつけるかのように倒れている偽者を見て、兵士は苦虫を噛み潰したような表情をする。


「ほ、本当に大統領が機械人だったなんて。それでは、我々は一体何のためにこの都市を……こんな奴のために!」


後から入ってきた兵士も、あまりの衝撃に言葉を失っている。

それを見たジゼルは彼らに向き合って静かに口を開いた。


「あなたたちはこいつのためにこの都市を守っていたわけじゃない、あなたたちは市民を守ってきたのよ。それは誇るべきものであって、決して軽蔑されることではないのよ。だから、自暴自棄にはならないで。私たちには、まだやらなくてはならないことがまだ残されているのよ、フェイナ?」


背後にいたフェイナに向き直ると、フェイナが微動だにせずにジゼルに向き合った。


「懐かしい面子に会いに行くわ。案内を頼めるかしら」


そう言うと、フェイナは顔をほころばせてジゼルに敬礼した。


「お任せ下さい、閣下」

作者「はい、どうも、作者のハモニカです!」


道男「ルートだ。どうした、今日はご機嫌じゃないか」


作者「はい、私、初めての感想を頂きました!! 笑人 様、ありがとうございました!!」


道男「感想というよりはご意見に近いな」


作者「どっちだって良いんです! 私の作品を見て感じていただいたことを教えてもらうということは、とてつもなくうれしいことなんです!」


道男「まあ、俺としても作者が元気になってかくペースが落ちないことはうれしい限りだが」


作者「…………」


道男「……おい」


作者「いや、違いますよ? 書いてますよ? ただ、なんか台詞ばっかの話になっちゃって……」


道男「会話が多いと切りにくいことはあるだろうが、それは多少工夫しろよな?」


作者「あれ、今日のルート妙にとげとげしくない……。これは、雨が降るか、いや天地がひっくり返るのですか!?」


道男「んなわけないだろうが。素直に喜んでやってるのに、なんだその言いぐさは」


作者「あ、あなた本当にルートですよね、マスクしたフラッシュとかじゃないですよね?」


道男「どうして、そう思う?」


作者「いや、彼、私に『属性が欲しい』とか、『特殊技能が欲しい』とかせがむ前におべっか使ってくるから」


道男「……この間のだけでは足りなかったようだな……」


作者「あれ、どこ行くんですか? まだ終わってませんよ? って、行っちゃった。よく分かりませんが、フラッシュは前にも何かやらかしていたようですね……。まあ、それはともかく、これからも感想などはいつでも、というか是非お願いいたします。ご意見でも構いません。お待ちしております。それでは今日はこの辺で……」















道男「小便はすませたか? 神様にお祈りは? 部屋のスミでガタガタふるえて命ごいする心の準備はOK?」


照男「え、ちょ、いきなりなに……、うわああああああああああああっ!!!」








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