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第三十一話 追手

カーチェイスがこれほど難しいとは思わなった……。


『A-10奪還~』という小説でカーチェイスの素晴らしさを知ったのですが、やはり自分で作るのは大変です……。


もっと軽い小説でも次は書きましょう……


「……はあ」

「気づいたか」

「下手だね、隠れるの」


頼んだ料理が出来上がり、それを頬張りながら傍から見ればただ談笑しているようにしか見えない表情で物凄く難しい話をしていた3人は、視界の端で不審な動きをする男を見つけて、そんな感想を呟いた。むろん、表情も変えず、視線もそちらには向けていないが、神経はすでにその男を包囲しているも同然の状況だった。


「俺の休暇……」

「あれ、仕事兼ねてるって言ったのはルートだけど?」


ルートが近くで見ていないと分からないぐらい小さくため息をつく。そしてあまり不審に思われない程度に食べる速度を上げて、席を立った。


「お勘定は……?」


レジへ行き、店員である女性に代金を聞くと、値段を言われ、細かいのが無かったために大きいので渡すと、お釣りとレシートをルートに手渡した。そして、ルートは眉をしかめた。


「……傭兵の方ですね?」


女性は静かに言った。

事態を呑み込んだルートは表情を変えずにお釣りとレシートと財布に入れると、そばの椅子に座って、フラッシュの会計を待つ間にその女性の「独り言」に耳を傾ける。


「あれは政府の秘密警察です。一般人に紛れ込んで外部の人間を見張っているんです」


ルートはジープを見るふりをして再び先ほどの男を見る。新聞で顔を隠して監視しているようなのだが、傭兵のルートにしてみればあまりにお粗末なスパイで、つい苦笑が漏れてしまう。


「それで、あなたは、いやあなたたちは何者?」


女性に向けてにこやかに言うと、女性が驚いたような顔をして手を止めた。そして感心したようにおどけてみせるとフラッシュにお釣りを返しながら答えを呟いた。


「私は『ニースローグ』諜報機関の者です。この店の店員とサクラも」

「げっ、よりによってあんの婆の手の者かよ……」

「そのお言葉、しかと伝えておきますね」


フラッシュが「相変わらずだね」と言っているが、その言葉はルートの耳には入らない。ジゼルが絡んでいるとルートにとってろくなことがないのだ。


「で、どうすればいいんだ?」

「このまま、都市外へ出てください。絶対に車は止めない方がいいですよ、止めたら最後、囲まれますから」

「まるでマフィアの手口だな。到底政府のやることとは思えん」

「ええ、この都市の政府はバックにかなり大きな組織が絡んでいるらしく、裏の権力はかなりのものなんです。そしてその組織の1つにはあなたたちの『お友達』もいらっしゃるようです」


その言葉に3人の視線が女性に集まる。


「詳しいことは総司令から直接行くと思います。私はただのしがない店員ですので。あ、これはお土産です。みなさんで召し上がってくださいね」


そう言うと女性は一礼して店の奥へと消えていった。後に残されたのはレジの横に置かれた小さな包み。それをレイが持ち上げると、ニヤリと笑みを浮かべてそれをルートに投げ渡した。

そのズシリとした重みと固い感触で中身が何なのか理解したルートも、レイに釣られて笑みを零す。唯一フラッシュだけが、「仕事できないからよろしく」と言って先にジープへ戻っていった。先に戻ったのは言うまでもなくジープの無線で事態を艦に伝えるためである。

その間にルートとレイは上着の下に収めてきた拳銃の安全装置を密かに外し、そのまま店の外へ出た。周囲を見渡す仕草も見せずに敵を目視し、その数が若干増えていることに気が付く。


「ジープ6時に2人、4時に1人」

「6時の黒塗りは敵のだな」


通りを挟んで反対側に先ほどの新聞を持った男、そしてジープを止めた通りのやや距離のある所に帽子を目深に被った男が2人、こちらを気づかれないように見ている。とっくにばれているのだがあえて気づかない振りをする。2人の男の隣には運転席にすでに男が乗った黒塗りの自動車が止まっている。それを確認してルートは助手席に乗り込む。


「レイ、運転を任せる」

「了解した。フラッシュ、連絡は?」

「大丈夫、都市の入り口まで応援が来るって」


後部座席で無線機を操作していたフラッシュがそう言い、ルートは運転席に乗り込んだレイにキーを放り投げる。バックミラーを確認しつつ、上着の下から拳銃を取り出すと1発目が装填されていることを確認してそれをギア横にあるボックスに隠しておく。


レイがエンジンを始動して、焦ることなくゆっくりとスピードを上げると来た道を戻る様に黒塗りの横をすれ違う。一瞬運転席の男とルートは目が合った気がしたので、あえて手を振ってみせると、男が顔を真っ赤にして睨んできた。それをルートは面白そうに笑いながら見ていた。


「あまり敵を挑発するなよ? 馬鹿は怒りやすいんだ」


呆れた様子で運転するレイだったが、その顔もまんざらではなさそうであった。


「それじゃあ、怒り出す前にこの都市から逃げ出そうか」


後ろのフラッシュもなぜか楽しそうな声で言う。

奴らがどれほどの相手に喧嘩を売ったのか、思い知らせてやる必要がある、という意見でその場の3人の意見は一致していた。それは怪我人のフラッシュもであった。


「スパイとか言いつつ、ジゼルさんのスパイに気づけなかったような奴らだ。たかが知れているが、精々あがいて貰おうじゃないか」

「レイ、悪役っぽいぞ、その台詞」

「わざとだ」


レイは片手で器用に拳銃をスライドさせると1発目が装填される。


そうこうしている間にも車は通りを郊外へ向けて走っており、ジープはほどほどの速度で一直線に郊外を目指す。

そして大きな交差点に出た時、事態は動き出した。


「来たか」


交差点のど真ん中に巨大なトレーラーが停止して、ジープの行く手を阻んでいた。レイは慌てることなくブレーキを踏んでトレーラーの手前で停止した。それが合図だったかのように、物陰から複数の男が飛び出してジープを取り囲んだ。全員が黒いサングラスをしており、それなりの訓練を受けた体つきをしている。そしてその腰が妙に膨らんでいるのが一目で分かる。


「あの~、動けないんですけど」


あえてルートは丁寧な物腰で助手席に近いところにいた男に話しかけた。男は助手席の窓に近づくと、外からは分からないように、だが車内の3人にははっきりと聞こえる声で話しかけてきた。


「大人しく我々について来い。そうすれば手荒な真似はしない」


あまりに安直な脅し。つい吹き出しそうになるのを何とか堪えながら、ルートは男に目を合わせる。そして物腰は柔らかいまま、ルートは口を開いた。


「あまり火遊びが過ぎると痛い目にあいますよ? さっさと失せた方が身のためですよ」

「な、なんだとお!?」


男が激昂してルートの胸倉に掴みかかろうとしてきた。だが、その手がルートの服を掴む前に男の胸に小さな穴が開いた。そして男が仰向けに倒れると、他の男がその男に駆け寄り、残りが拳銃を抜いて腕で銃を隠しながらルートたちに向けてきた。


「おや、貧血ですか? 何なら救急車を呼びましょうか?」


後部座席からフラッシュが妙に大きな声で言った。車内からフラッシュを見れば、その手にサイレンサー付きの拳銃が握られていることに気が付くだろう。だがあいにく、男たちはドア越しでそれを見ることはできない。

この場合、発砲して困るのはルートたちではなく、男たちの方だ。


「くっ、貴様ら、生きてここから出られると思うなよ」

「何の事だかさっぱりですね。それでは失礼しますね、お大事に」


終始にこやかに対応したルートはレイに出すよう合図を送り、男たちの合間を縫ってジープを発車させた。バックミラーに男たちが撃たれた男を担いでどこかに走り去っていくのが見え、ルートはジープのポケットから拳銃を取り出す。


「白々しいにもほどがあるだろう、フラッシュ」

「他の人にも聞こえるぐらいとなると、あれくらいが丁度良いんだよ」

「お、速い、もう来たようだぞ」


振り返ると黒塗りの車両が軍用のジープを引き連れてトレーラーの脇をすり抜けてこちらに迫ってきた。ジープの天井のハッチが開け放たれて先ほどの男が現れたが、今度は隠すつもりもなく、大型の機関銃を持っている。銃身下の大きなマガジンを天井に置いてこちらに狙いをつけてくる。そして容赦無く引き金を引いて発砲してきた。防弾のガラスに無数の蜘蛛の巣状のヒビが入り、車体に弾丸が当たって弾かれる甲高い音が車内に響き渡る。


「ちょ、重いよ! これ重機関銃だよ!」


後部座席のフラッシュがその音を聞いて悲鳴じみた声を上げる。


「くっそ、下手すると貫通するぞ。フラッシュ撃ち返せ!」

「うわっ、! 無茶言わないでね!!」


後部ガラスが割れて破片が座席にうずくまるフラッシュに降り注ぐ。それを見てすぐさまルートはドアの窓から身を乗り出して拳銃で応戦する。

何発かが当たって火花を散らすが、効果があるようには見えない。12発の弾丸はすぐに弾切れを起こし、ルートは車内のフラッシュに投げ渡す。代わりにフラッシュが持っていた拳銃をルートに渡すとフラッシュは弾切れの銃のマガジンを取り出して弾の入っているマガジンを再装填する。


「ルート! タイヤ狙え!」

「やってる! まっすぐ走ってくれ!!」

「無茶言うな!! ハチの巣だぞ!」


走っている上に、レイが回避行動をとっているために狙いは定まらない。それでもルートはタイヤを狙って撃ち、そのうちの1発がタイヤに命中し、パンクして破裂音が響くが、車体は傾かずに黒い破片がが飛び散る。

固形タイヤを使っているようで弾が当たっても別段ダメージがあるようには見えず、諦めてルートは重機関銃を街中にも関わらず遮二無二に撃ってくる男を狙って引き金を引く。男が自分が狙われていることに気が付いてルートを狙うが、もとより反動が強く、狙って撃つよりばら撒くと言った方が正しい重機関銃では車に乗っているルートを撃つことなどまぐれ当たりを期待するほかない。

ルートは逆に落ち着いて狙いを定めると、1発ずつ丁寧に狙って撃つ。


だが、動く的を撃ちにくいのはこちらも同じで、なかなか当たるものではない。それどころか、背後のもう1台のジープと黒塗りの車に視線を向けるとルートは目を見開いた。


「なんて奴らだ、レイ、あいつらロケット弾持ってるぞ!!」

「何を考えてるんだ、あいつら!!」


レイはハンドルを大きく切って細い道に入った。身を乗り出せばビルの壁に擦れるほどの狭い路地にジープが入ると、後ろからすぐに追手のジープが入ってくる。だが、細いおかげで後続のジープはルートたちの車両を味方のジープ越しに見ることになったため、ロケット弾を撃ちたくても撃てない状況になってしまった。

角を曲がって一瞬敵の銃撃が止んだ隙に、うずくまっていたフラッシュが起き上がって割れてしまった窓から銃を覗かせて発砲し、運転席と助手席の隙間から後部座席に乗り移ったルートがその隣でマガジンを交換して撃ち続ける。


「路地は長くは続かない。何とか打開策を見つけろ!」


路地にあったドラム缶をレイが跳ね飛ばし、ドラム缶が内容物をぶちまけながら散乱する。スピードをさらに上げながらレイが叫び、ルートは銃を撃ちながら脳をフル回転させて何とかしようと思考する。


「迎えは出口まで来てる! そこまで持てば良い!」

「あのロケット弾、避けられるか!?」

「形は!?」


レイの質問にルートは窓から顔を出して後続のジープの合間から2台目のジープに乗っている男が持っている筒に目を凝らす。そしてその筒の特徴を克明に記憶してそれを言葉にする。


「ダークグリーン、照準器は8角形、太さは……20センチもない奴だ!」

「『フォールス』か、赤外線誘導だ」

「フラッシュ、照明弾出せ!」

「分かった!!」


座席下の赤い箱をフラッシュは取り出すと、その中にあった照明弾用の銃を取り出す。


「『フォールス』は再装填するタイプだ。再装填に時間があるから、その間に逃げ切るぞ!」


赤い照明弾を銃に込めて、フラッシュは座席に伏せた。ルートは頭を出さないでジープの背後に向けて銃を撃ち、背後の重機関銃を牽制する。


「ああもう、1日の休養すら許されないのか」

「マガスを倒したらたまってる有給消化してやる!」





妙な決意が3人の中で芽生えた瞬間だった。

作者「いわゆる1つの労災が適応される一歩手前ですね」


道男「いきなりミスターやるんじゃない……。とはいえ、旅団に労災があったらよかったのにな……」


作者「出てきませんけど一応残業手当の延長線みたいなものはあるはずなんですけど、たぶんこの小説が完結するまではおそらく適応されません」


道男「というか、それまで入っていける隙間ないだろう?」


作者「いや、番外編でも作ればいいんですが、番外編のネタが今のところ少ないので5000字も書けない気がするんですよね」


道男「レイの年齢ネタはどうしたんだ」


作者「いやあ、本編で少し使っちゃったからボツにしようかなと思います。かといってフェイナのレイへの想いとかやるにしても、私に恋愛を語らせようなんて100年早いですよ」


道男「……、そういう小説読んでいたことないよな。「なろう」では読んでるだろうが」


作者「まあ、ファンタジーものとかは大体そういうもんでしょう? でも、いざそれを自分で書こうと思うと、どうしても筆が止まるんですよ……」


道男「つまり、ネタに困っているわけだな」


作者「番外編の、です。本編はまだ脳内にストックがありますから無問題もーまんたいです」


道男「それならいいが……」


作者「はい、これからも頑張って本編だけは更新続けたいと思っています。番外編とかは、終わった後にいくつかやるか、いっそのことやらないということもありますので」


道男「そういえば、最近新しい小説の構想を考えているらしいな」


作者「……余計なことを言わないでよろしいのですよ。この小説が終わったらそれで終わりたくないので、まったく違うファンタジーものでもやろうとか考えてますけど、まだ構想の段階です。いっそのこと後書きはルートさんと私でやっちゃいます?」


道男「同じ作者とはいえ、それは駄目だろう」


作者「ですよねえ。まあ、ネタに困ったらそういうのもありですね」


道男「だから……」


作者「ともかく、それはこの小説が終わったらの話ですから、それはもう終いにしましょうか」


道男「次回予告でもして終わるとしようか」


作者「はい、え~、追手に追われるルートたちが都市を脱出するお話にする予定です」


道男「感想などお待ちしている」


作者「是非 m(_ _)m」

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