第二十六話 隻眼の最期
ふい~、対『血の盟約』戦落着ということで……。
後は大学のテストの結果を待つばかり……、大丈夫な、はず。
前日まで小説書いてましたけど……。
「バースト」
おそらく、屋上のレイがそう呟いたのと、地上でルートがボヘミアン目掛けて言ったタイミングはほとんど一緒だっただろう。屋上から真下に『スカル』を見据え、放たれた銃弾は寸分の狂いもなくボヘミアンのいるコックピットを襲った。
ボヘミアンも、瞬時にルートの言った意味を察知したのだろう。ルートから銃口を屋上に移そうと操縦桿を引き、真上を見た。
だが、ボヘミアンの反応はどんなに急いでもレイには追いつくことはできなかった。放たれた銃弾はレイに向けられた銃、腕の合間を縫うようにしてボヘミアンのいるコックピットの防弾ガラスを貫通し、ボヘミアンの太ももの肉を抉った。
「ぐ、おおおおっ!」
ボヘミアンの苦悶の声が彼の口から漏れる。
「指揮官たるもの、いついかなる時も全周に注意を払うべし。指揮の基本だ」
ルートがそんなボヘミアンに冷たく言い放つ。
それが癇に障ったのか、ボヘミアンは痛みに耐えながらも『スカル』を操縦して銃をルートに向けようとして、レイの弾丸に阻まれた。コックピットにもう1つ穴が開き、ボヘミアンの右腕に直撃、骨を砕き、肉を穿って貫通、血飛沫がコックピットの防弾ガラスに飛び散る。
「阿呆、そんなことをうちのレイが許すはずがないだろうが、……と、無事か、フラッシュ?」
瓦礫を乗り越えながら、ビルからフラッシュが咳き込みながら出てきたのを見て、ルートは安堵のため息をついた。
「あのね、デカブツに蹴られて、無事な、はずがない、でしょうが……」
フラッシュは頭から血を流してはいるが、足取りはしっかりとしている。
「ば、馬鹿な。『スカル』に蹴られて死んでいないだと!?」
腕を抑えながらボヘミアンが呻く。
「旅団の装備をなめんじゃねえぞ。俺たちのボディアーマーは頑丈なことで評判なんだぞ。言っておくが戦車砲でも貫通しねえからな、爆発とか衝撃で死ぬだろうがな」
「ば、馬鹿な……」
ボヘミアンが絶句している。戦車に撥ねられたのと同等か、それ以上の衝撃を受けて生きていられるアーマーなどあるはずがない、という思考に埋め尽くされているのだ。
「さて、と」
ルートは腕をグルグル回しながら『スカル』の腕を回り込み、コックピットの前までやってくる。
「大人しく捕まりやがれ」
コックピットの防弾ガラスを強引に開け、コックピット内で血まみれになっているボヘミアンを正面に見据える。ボヘミアンはルートを睨み付けるが、それ以上の痛みに襲われているらしく、表情が曇っている。
「ルート、無事のようだな」
そこにレイが到着した。狙撃銃でもない通常の小銃で狙撃などできるのは機械人ぐらいだろう。おまけに動いている相手の急所を外すという芸当を成し遂げている。こういうのは、急所を外そうとすると急所に当たってしまうというジンクスがあるが、そんなものはレイには関係ないようだ。
「ぐっ、人間もどきに後れを取るとは……」
ボヘミアンはコックピット隅に隠されていた拳銃を撃たれていない方の手で抜き、めがけて撃とうするが、そんなことをルートが許すはずもなく、一瞬のうちに拳銃を弾き飛ばされた。腕が衝撃で痙攣し、ボヘミアンは小さく呻いた。
「さて、洗いざらい吐いて貰おうか。この核弾頭、マガス、全てな」
「ふん、俺が吐くと思っているのか? たとえこの命が果てようとも『血の盟約』はどんな人間の心にも宿っている闇だ。戦争で家族を失った人間が人間もどきを恨まないはずがないんだよ。『血の盟約』はそうして生まれた。俺を殺したところで、その事実は変わらん。俺たちがやろうとしていたことはすべてマガスが引き継ぐ!」
「ご高説ありがたいが、そんなことを聞いているんじゃないんだ。マガスはどこにいる」
ルートが感情の籠っていない口調で喋る。
久方ぶりに、ルートが真剣にキレているらしく、フラッシュとレイも何も言わないで黙っている。
「そんなに聞きたいのか? なら、もっと良い物を、くれてやる!!」
「なっ!!」
一瞬の出来事だった。
ボヘミアンの眼帯がハラリと落ちると、そこにあったのは、小さな穴。そして火花が散った。
ボヘミアンは失った目の代わりに、目の中に1発限りの銃を仕込んでいた。そして、目の前にいる敵を確実に殺せる、必殺の距離までルートが近づいてくるのを待っていたのだ。
距離は1メートルもなかった。到底、避けられるはずがない。だが、ルートが避けなくても、守ってくれる仲間がいた。瞬時に近づいてきたレイはその手をルートの顔の前に置き、放たれた弾丸をその手の平で受け止め、弾き飛ばした。火花が散って、弾かれた衝撃でレイの腕が本人の意思に反して大きく振られるが、それをルートが止める。
「そこまでして、殺したいのか」
「いかにも。俺の仕事は殺すことだ。それは貴様らと何一つ変わらん。そして、殺しに正義も糞もないのは知っているはずだ。勝ち残った者のみが正義となり、敗者は虐げられる。俺はそんな屈辱を味わう気は毛頭ない!!」
ボヘミアンがコックピット内の赤いレバーを引いた。
止める間もなく、引かれたレバーに連動して、コックピットのディスプレイが真っ赤になり、そして何かのタイマーが作動し、カウントダウンを開始した。
「貴様、自爆する気か!」
「何を今さら、もとよりこの核を撃つつもりだったのだ、死ぬ気だったのだよ、俺は。貴様らに倒されるという誤算はあったが、これで俺の生涯に幕を下ろすとしよう」
「レイっ、こいつを止められるか!?」
ルートはコックピット内にレイを呼び寄せる。レイは急いでコックピットの計器を操作してカウントを止めようとするが、カウントに関する操作をしようとするとディスプレイに「エラー」の文字が浮かび上がり、それ以上は操作ができないようになってしまう。
「くそっ、このままじゃ核が……!」
「何を言っている、核は爆発せんよ……」
ルートの問いに答えたのは、なんとボヘミアンだった。3人の視線がどこか達観としているボヘミアンに注がれる。
「どういうことだ」
「あれを見ろ」
ボヘミアンが空の1点を指す。すでに遠くへと行ってしまっているヘリの姿が僅かに見える。こちらの戦闘機、ヘリが艦と戦車、そして『スカル』に気を取られている隙に、離脱をしてしまったようだ。
「俺はあれを囮に使う気だった。だが、お前らは迷わずに俺に狙いを定めてきた。あれが撃ち落とされていたら何の後悔もなく核を起爆させていたが、あれには同志が乗っているのでな。あれを巻き込む気はない」
3人が意外そうな顔をする。
殺人を至上の喜びとしている男が仲間のために行動するなんて、信じられなかったのだ。ボヘミアンもそれを3人の表情から窺い知ったのか、わずかに口元を吊り上げる。
「俺は人類至上主義者だ。同じ考えの元に集った、優秀な同志を殺すほど、飢えちゃいない。さあ、ここにいると爆発に巻き込まれるぞ?」
すでにカウントは20秒を切っていた。ルートはコックピットから飛び降り、距離を取り始める。そこに、ボヘミアンが声をかけた。
「もし、貴様らが俺たちの野望、そして悲願を打ち砕こうと思うなら、『デルジャナ』へ行くがいい! そこでもって、マガスが貴様らを完膚なきまでに打ち砕き、貴様らの信念を打ち砕いてやるだろう! そして、俺たちの悲願は達成される! 地獄で貴様らの足掻きを見物してやろう!!」
カウントがゼロになり、コックピット下にあった自爆用の火薬に火が入る。そして巨大な火の玉と化し、『スカル』はボヘミアンの肉体もろとも爆発四散し、後には何も残すことはなかった。
衝撃で地面に倒れ込んだルートたちは土煙が晴れるとゆっくりと起き上がり、先ほどまで『スカル』があった場所に出来た小さなクレーターを見つめた。
「……核は誘爆しなかったか」
「もとより、核弾頭は熱では爆発せん。起爆コードが必要だからな」
「なんか、最後はあっけなかったね……」
『デルジャナ』。
ボヘミアンは最期にそう言った。
『大崩落』最後の戦場となった、機械人、『始まりの機械人』たちの本拠地にして最後の要塞であり、その市街地では人間と機械人が血で血を洗う激戦を繰り広げ、泥沼化した。そして、泥沼化した戦況を打破するために、『始まりの機械人』から離反した機械人による彼らの暗殺作戦が決行され、見事に戦争を終わらせることに成功した。
その後、『デルジャナ』は復興されることもなく、1級危険区域に指定され、今は何人たりとも立ち入りを許されていない。内部には未だに無数の兵器が眠っているとされ、その中には、核弾頭も含まれているという。
そんな場所に、マガスは根城を構えている。
「ボヘミアンは捕えられなかったが、必要だった情報は得ることができた。それで十分だ」
「それじゃ、今度はこいつを焚くよ」
フラッシュが青い表示のある発煙筒を取り出し、安全ピンを抜いて少し離れた場所に放り投げる。そして勢いよく青い煙が吹き出す。
なぜかそれを見てルートとフラッシュが安堵のため息をつく。それに気が付いてフラッシュが顔を真っ赤にする。
「ちょ、僕だっていつもドジるわけじゃないよ!?」
「オレンジだったら爆弾が落ちる前にお前をボコボコにしておくところだ」
「だから、やらないって!」
ルートがさも当たり前のように言い放つのに対して、フラッシュがむきになって食い下がっている。
それをルートが華麗にスルーしつつ、迎えのヘリを待っていると、北門へと通じる通りから土煙と共に『血の盟約』の戦車が怒涛の如く突っ込んできた。
そして砲塔のハッチから上半身を出した男が機関銃を乱射しながら大声を上げている。
「レイ、頼める?」
あいにく、ルートは銃を持っていない。フラッシュも同様、今銃を持っているのはレイだけだ。だが、持っているのは小銃で、戦車を相手取るには厳しいものがある。
だが、レイは至極冷静で、口元が少し歪み、戦車の背後の空を見上げている。
「心配はご無用だ」
「……あ~、理解した」
戦車の砲身がこちらに向けられる。おそらく、内部では狙いをつけ、引き金に指をかけているのだろう。
だが、発砲することは出来なかった。
『おーし、401の残り3人、その場を動くんじゃないぞ』
フラッシュのもつ無線から聞き馴染んだ声が聞こえ、戦車の背後の空から白煙が伸びてきた。そして無数の白煙を生み出していたロケット弾が戦車に吸い込まれ、砲塔を吹き飛ばし、男の首を引きちぎり、砲身が宙を舞い、車体が浮かび上がってキャタピラが空転、1回転して地面に叩き付けられる。
「派手だな」
「マックらしくないな」
「むしろフェイナだね、これは」
「「同感だ」」
徐々にその姿が大きくなったヘリが3人の頭上までやってきて、ホバリングしつつ徐々に高度を落とし、戦車の残骸の避けながら着陸し、側面のハッチが開かれる。
「ルートさんたち、ご無事で何よりです!」
ヘリにはすでに401部隊の残りの3人、カンナ、ラーキン、フィリップが乗っていた。そしてルートたちの姿を見ると声をかけてきた。
「そちらも無事回収されていてよかった。そして旅団長、なぜあなたが前線に出てきてるんですか。それもフェイナ連れて」
コックピットを覗き込むと、笑顔のマックと不愛想なフェイナに迎えられた。フェイナは機外にレイを確認して小さくため息をついていたが、それに気が付いたのはマックとルートだけで、2人もあえて何か言おうとは思わず、スルーすることにした。
「いやなあ、久々に戦場へ出てみたくなってな。回収作業だけだったし、まあ問題はなかろう?」
「まあ、そうですけど……」
マックの行動は、ある意味ボヘミアン並みに読めない、と思ったルートであった。
「その様子だと、ボヘミアン確保は失敗したようだな」
後から乗り込んできたレイとフラッシュの姿を確認し、マックは少し声のトーンを落とした。
「申し訳ありません、自爆されてしまい、確保できませんでした。ですが、マガスの居場所に関しては、有力な情報を手に入れました」
その言葉に、マックとフェイナが目を見開き、後ろにいたカンナ、ラーキン、フィリップが飛びつき、後ろではレイとフラッシュが質問攻めにあい始めた。大男2人に詰め寄られたフラッシュには後で飯をおごろうとルートは思いつつ、話を続ける。
「ボヘミアンは、マガスは『デルジャナ』にいると言っていました」
その台詞に、マックの表情が凍りつく。
「馬鹿な、あそこは立ち入り禁止領域のはず、都市軍が警備しているはずだ」
「その都市軍がマガスの手の者という可能性があります。この間の反乱軍は表だって反抗しましたが、あえて何も情報を上げないという反抗の仕方もあります」
「まさか、そんなことが……」
マックが座席の背もたれにドサリと身を任せる。
「ボヘミアンは、起爆こそしませんでしたが3基の核弾頭を所持していました。おそらく『デルジャナ』にあったものの内の3基かと。だとすれば、マガスがやろうとしていることも自ずと……」
「みなまで言うな。これは世界規模の危機になった。都市レベルの話じゃないぞ……。帰ったら都市政府と連絡を取って対策を検討する必要があるな」
マックは操縦をフェイナに任せ、ルートとの会話に集中することにした。
フェイナが操縦桿を引き、ヘリがフワリと宙に浮く。そしてあっという間に高度を取って通りを北上し始める。眼下に無数の戦車の残骸と死体が積み重なっている光景が広がる。そこにはもちろん旅団の隊員や戦車もある。無傷では済まされず、こちらも出血を強いられたことが一目で分かる。
「死者19名、負傷者32名。軽微では済まされない被害を受けてしまった」
苦々しく言うマックの表情は暗い。戦争になれば、死者が出るのは世の摂理とまでは行かないが仕方のないことだ。だが、やはり家族同然の仲間が逝くのにはいつまで経っても慣れるものではない。
「もし、マガスのやろうとしていることが実現したら、旅団どころじゃないわよね……」
操縦桿を握るフェイナがポツリと呟く。
それにマックが大きく息を吐きながら頷き、ルートは少し俯く。
「ここから『デルジャナ』は遠い。『血の盟約』の残党がたどり着くより速く行けるとは思えないが、全速力で向かう必要があるようだ。近辺の都市には支援を申し出ておこう。幸いあの近辺には得意先がいくつもあるから、多少耳を傾けてくれることを祈るばかりだ」
「了解」
ルートはそれを聞いた後、後部に戻り、隅に1つだけあいていた座席に滑り込み、誰かに声をかけられる前に眠りにつくことにした。
戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
今からへばっている訳にはいかない。
作者「はい、ボヘミアンとの戦いが一段落したので、また『これ』やろうとか考えた作者のハモニカです」
道男「もう諦めたルートだ。というより、気が少し楽になったから諦めた」
作者「そして、本日はルートをなだめる為にもう1人お越し願いました」
フラッシュ(以下照男)
「激しく納得のいっていないフラッシュです」
作者「いや~、ルート良かったですね、仲間が増えましたよ?」
道男「まあ、な」
照男「僕の意志完全無視だよ!? ていうか、本当になんなの、これ!?」
作者「まあ、漢字は輝男でも良かったんだけどね」
照男「是非そっちにして!」
作者「無理♪」
道男「諦めろ、フラッシュ、こういう奴だ……」
照男「ていうか、どうして僕なの!? レイとかフェイナとかいるじゃん、むしろそっちの方がいいんじゃ……」
作者「あ、それも却下。レイは二文字だからいじれないし、フェイナは下手すると殺されるから」
照男「それって僕なめられてる?」
道男「まあ、確かに一番インパクトは薄いよな。主人公、アンドロイド、サイボーグ、エトセトラ……、何も属性かかって無いのフラッシュくらいか?」
照男「そ、そんな……orz」
道男「それに、対『血の盟約』戦書いてる時、確か作者、401部隊にフラッシュいたこと忘れてたろ」
作者「ちょ、内輪ネタをほじくらないで……ってフラッシュが再起不能並みのダメージ受けてるから! 確かに『ブラッディスカル』に乗り込む辺りでようやく人数合わないなあ、とか思って見返したけどさ! 大男2人がインパクト強すぎて完全に忘れてたんです!」
道男「ちょ、おま、トドメをさすんじゃない!」
照男「ぼ、僕だって、僕だってええええ!」
―――――照男さんがログアウトしました
道男「……なんだこれは」
作者「気にしないでね」
道男「結局2人でやることになっちまったじゃないか」
作者「まあ、ここはただ単に私がキャラをいじりたいが為にやっているだけですし」
道男「…………、歯ぁ食いしばれ」
作者「ちょ、落ち着こう。今日は君は弄ってないよ? むしろ君もこっち側だったでしょ?」
道男「はあああああああっ!!」
ゴベシッ!!
―――――作者がリアルの世界に旅立ちました。
道男「……分かる人間いるのか、これ……」
ゲフッ、油断しました。あそこまで手癖が悪いとは……。
それはともかく、大きな山場が1つ終わりました。まあ、中ボス的存在でしたから、ボヘミアンさんは。
最期の眼帯攻撃とか、雰囲気的には『ロケットピース!!』的な感じでお願いしますね?
MGS・PWのあの人です。人間パチンコやってみたいな……。
さて、リアルでレポートが立て続けに降臨なさった為にコンピュータをそっちに使用しなければならない比率が徐々に大きくなっている今日この頃、
『私はそんなこの世のすべてを憎む! 熱力学第二法則を憎む!!』
って感じです。これ分かる人いるかな……。
あ、私文系ですけどね。
まあ、小説書きが結構大学生活の重要なサイクルに組み込まれているので、これからもあまり日を開けずに頑張りたいですね。亀更新になると忘れそうで怖い……、違った、忘れられそうで怖い……。
誤字脱字でも構いません。
感想お待ちしております。




