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第十四話 <過去Ⅳ> 非日常の中の日常


戦闘シーンが書きたい……。


過去編では戦闘書かない予定なんで、どうしてもグダグダになってしまいます。






戦争が終わった。


あまりにも唐突な幕切れだった。


防衛軍を束ねていた都市のトップが演説台で「人類は再び平和を取り戻した」だの、「これからも機械人と共存していく」などと一般市民から拍手喝采の演説をしているのを、マックとレイは旅団の食堂に据え付けられていた大型のテレビで他の仲間と共に眺めていた。


今日までに、旅団が救出した難民の数は優に2000人を超える。そのほとんどが、すでに都市で降りて新たな人生を歩んでいる。


「いつの間にか、って感じだな」

「なんでも、機械人の親玉を全滅させたから、指揮系統が駄目になったらしいぞ。なんせ命令が無いと何もできないような連中ばっかだからな」


『始まりの機械人』を自称していた、機械人のトップたち。彼らは、潜入した機械人の暗殺部隊によって1人残らず殺されたと言われている。

さらに、指揮系統の中枢であった基地を破壊され、各地に指示を送ることが出来なくなり、敵はなし崩しに崩壊していった。一部は寝返り、一部は逃亡したりと、散々な末路であった。

都市政府は、逃亡した機械人に出頭を命じている。人工知能を改修することで、社会復帰を促すという。


「マックも、随分と傭兵稼業が板についてきたな」


ふと、背後から声をかけられ、マックが振り返るとそこには旅団長であるミフネの姿があった。確か今年で60の大台に乗るらしいが、相も変わらず老いを感じさせない。

マックが敬礼したのに気が付いて、周りの隊員も立ち上がってミフネに敬礼する。

するとミフネが困ったような表情をする。


「マック、君がそんなんだと、まるで軍隊みたいに旅団がなってしまうんだがなあ。我々は家族なのだ、堅苦しいことは極力抜きで行こうじゃあないか。もう君たちが来て3カ月だぞ?」


そう言われる、今度はマックが苦笑する。

正直、マックはまだ軍にいた頃の癖が抜けておらず、上司を見ると敬礼してしまうのだ。努力はしているが、上司な上、尊敬できる相手ともなると、頭で理解していても体が無礼講になることを拒否してしまう。


「それはそうと、マック、最近子供たちの所に行っていないそうだな?」

「はあ、捜索任務で艦を離れていることも多かったですし」

「寂しがっておったぞ、後で顔を見せに行きなさい。レイは暇を見つけては行っておるのだがな」

「事務をマックがやってくれてますので」


マックはこの3カ月、1人でも多く救おうと体力が許す限りスケジュールを詰めて捜索、救出任務に従事している。下手をするとすでに何人かの若い隊員たちよりも任務時間が多いかもしれないと、噂されるほどだ。それゆえ、3人の子供に会う機会をレイに任せっきりになっている。


「分かりました。後で行きます」

「そうしてやってくれ」


それだけ言うと、ミフネは食堂を後にした。


「それじゃ、レイ」

「俺も行こう。フェイナの様子を定期的に見てやってくれと、医師に頼まれているしな」













「あ、マック!!」


格納庫を改装した居住区。その真ん中に、子供たちの保育施設がある。それほど大きくはないが、子供たちが過ごすには問題ない広さが確保されている。

マックが敷居をくぐって中を覗き込むと、ルートがこちらに気が付いて走り寄ってきた。それに気が付いてフラッシュとフェイナがやってくる。


「みんな元気そうだな」


マックがルートの頭を撫でる。


「フェイナも、調子はどうだ?」


半袖短パン姿のフェイナを見て、マックが聞く。

3カ月前に手術をして、四肢を失ったフェイナは義手義足を付けている。とはいえ、まだ満足に歩ける状態ではなく、時々フラッシュに体重を預けるそぶりを見せる。

フェイナの義手義足は旅団で作られたものだ。詳しい内容は分からないが、なんでも筋肉のわずかな動きを感知してフェイナがどこをどう動かしたいのかを理解して、駆動させているらしい。ある程度慣れれば、細かい動きもできるようになるが、まだフェイナには少し大変なようだ。


「まだ痛いけど、結構慣れた」

「そうか……」


いまだに、フェイナはあまり笑わない。ショックが大きすぎたせいもあるだろうが、こればかりは時間をかけてゆっくりほぐしていくしかない。


「フェイナ、足を見せてみろ」

「うん」


レイがしゃがみ込んでそう言うと、フェイナは座って足を少し持ち上げた。それをレイは手で持ち上げたりして問題がないか診察している。

フェイナは手術が終わっても定期的な手術が必要なのだ。

小さい子供は、成長著しく、骨もぐんぐん成長する。すると、肉を突き破って骨が露出してしまうのだ。そのため、こうやってレイが定期的に成長具合を見てフェイナが痛みを感じる前に対処するように心がけている。今のところ、問題ない。

マックは薄々気が付いていたが、フェイナはマックとレイで若干対応に差がある。

頻繁に顔を出すレイには、ある程度心を許しているのだろう。ルートとフラッシュは誰にでも笑顔だが。


「うん? フラッシュ、少し伸びたか?」


ふと違和感を感じてフラッシュを見る。


「1センチくらい伸びたよ!」


嬉しそうにフラッシュが言うと、自然とマックも頬が緩む。


マックは戦争で妻と子供を亡くした。それ故に、親のいない子供を放っておけない。おかげでハードな毎日を送っているが、後悔はしていない。それで助かる子がいるのなら、マックは身を粉にして働くつもりだ。

だから、こうして自分が助けた子供たちが笑顔で暮らしているのを見ると、嬉しいものなのだ。


「うそっ!? おれ抜かれたのか?」


それを聞いたルートが何かショックを受けたようで大げさに頭を抱える。


「安心しろ。ルートも成長期だからな。たくさん食べてたくさん寝れば、すぐに追いつくさ」

「ほ、本当だな!?」


だったら今すぐ食べてやる! と言い残してルートは施設の中に飛び込んでいった。大方おやつを求めて走り回るつもりなのだろう。おやつでは縦ではなく横に成長してしまう気がするが。


「フラッシュ、君も行きなさい。ルートに追いつかれてしまうぞ?」

「うん! じゃあまた来てね、マック!」

「ああ」


そう言うと、フラッシュを手を振りながらルートの後を追って走り出した。それをマックも手を振って見送り、傍でフェイナを診断しているレイに近づいた。


「どんな感じだ」

「やはり成長期だな。少し骨が張り出している。フェイナ、違和感はあるか?」

「少し。また手術するの?」


少し不安そうにフェイナが尋ねる。


「いや、まだ大丈夫だな。ペースは半年に1度程度だろう。これからさらに成長するならその限りではないが」

「あ~あ、あたしルートとフラッシュにおいてかれるな~」


フェイナが天井を仰いでため息をつく。

フェイナは義手義足だ。そのため、成長というのが如実に表れにくい。成長するから定期的に義手義足を取り換えて身長は伸びるのだが、どうしても自分が成長したと実感しにくいのだろう。


「身長で追いつけないんだったら、2人をあっと言わせるくらいの美人さんに育てよ?」

「マック、セクハラ……」

「どこでその言葉を覚えたんだ……」


まだ5歳くらいの少女にセクハラと言われると、さすがにマックもダメージを受けた。がっくりと項垂れる。


「でも、美人になりたいな」

「フェイナのポテンシャルは高い。しっかり運動して食べていれば、一般に美人と呼ばれる域には達すると思うぞ」

「ぽてんしゃる?」

「要は美人になれるってことだ」

「ほんと!?」


フェイナが飛び上がって嬉しそうな顔をした。そしてその場にマックがいることを思い出してその表情がどんどん真っ赤になっていく。

それをマックは笑顔で見ていた。


「そっちが素のようだな。明るい方がモテるぞ」

「う、うるさい」


プイッとそっぽ向くフェイナ。

それをレイとマックは暖かい眼差しで見つめる。

平和な日々だ。傭兵の艦の中とは思えない、平穏がここにはあった。マックにとって、ここはある意味望んでも手に入れられなかった理想郷なのかもしれない。傷を癒すことのできる、そんな場所なのかもしれない。


「俺たちが傭兵だってことを忘れさせるな、ここは」

「……そうかもしれないな」

「お? 機械人も物忘れはするのか」

「からかうな」

「ハッハッハッ」


レイもつられて笑い出す。

それをフェイナが不思議そうに眺めていた。


「ハッハッハッ、とそうだ、すっかり忘れていた。ルートとフラッシュを帰すんじゃあなかったな」

「え、何かあったの?」


いきなり真顔になったマックを見てフェイナが不安げになった。


「いや、まあ大したこと、なのか? 俺とレイが君たちの保護責任者になるんだ」

「ほごせきに、え?」

「要は君たちの親代わりだな。俺がルートとフラッシュ、レイがフェイナの面倒を見る。君たちが15歳になるまでだがな」

「と、いうことはお父さんになる、ってこと?」

「ん~、この場合レイがフェイナのお父さんになるな。まあ、呼び方など意味を持たんが。今まで通りでも構わんだろ?」


レイが頷く。

フェイナは、少し混乱しているのか、頭をグルグルと回す。時折、「お父さんが2人」などという不吉な言葉が聞こえてくるが、マックはあえて聞かなかったことにする。2人が誰を指しているのか考えると恐ろしくなる。是非ともフェイナの実の父親とレイを指していることを切に願った。


「フェイナ、これからは俺が君の面倒をずっと見る。子供を持った隊員は広めの部屋をもらえるからな。一緒に暮らすこともできる」


そうレイが言うと、心底嬉しそうな顔をして、レイに抱き着いた。


「やった! これからは家族だね、お父さん!」


ピシッと、空気が凍ったのはマックの気のせいだろうか。レイが固まっている。


「れ、レイ?」

「機械人が『お父さん』と呼ばれるとはなあ」

「りょ、旅団長!?」


いつの間にか背後にミフネがいた。そしてどこか嬉しそうな表情で固まったレイとフェイナを眺めている。


「大方、処理が追いつかないんだろう。機械人にとって親という概念は無意味だからな」

「!」


マックがハッとしてレイを見る。

機械人は工場で作られた。それゆえ、親という概念はないのだ。そんなレイが突然お父さんと呼ばれれば、処理機能がどう反応するべきか困ってしまうのも無理はないだろう。


すると、ようやく動き出したレイがフェイナを抱きかかえて、その頭を優しく撫で始めた。フェイナも嬉しそうに笑っている。


「どうやら、問題なさそうだな」

「の、ようですね」

「あとは、君だな」


ふと振り返ると、1枚の紙が差し出された。

見るのは2度目となる、請求書。


「……なんですか、これ」

「ここ3カ月でルートとフラッシュが壊した備品の修理費だ。君の給料から引いておく」

「ええ!?」

「保護責任者としてこれくらい当たり前だろう。しっかりしつけてくれよ?」

「そ、そんな……」


一介の傭兵であるマックにはあまりにもきつい金額が請求書には書かれている。


「安心しろ、あの時とは違って数年分の給料が全体的に減るだけだ。その間に2人が新たに壊せば追加されるがな」


面白そうに笑うミフネに、マックは何も言い返すことができなかった。














「マックはどうしちゃったの?」

「物を大事にしないと、お父さんが困る、ということだ」

「…………」

「フェイナ?」

「……ごめんなさい」

「……冗談だろう?」


マックは3年間の減俸。レイは1年間の減俸が命じられた。


マト〇ックスみたいな厳しいミフネさんじゃありません。


どちらかと言うともっと柔らかい、そうですね……、司令官ポストにいるような人ですとジ〇ングの梅〇艦長クラスですかね。締めるところは締めます。


このころのルートたちは年相応のやんちゃな子供たちです。さすがに保育施設全部トーチカみたいなコンクリ建造物じゃないですから、子供でも壊せるものはあります。





次回一気に10年くらい飛ばします。


理由は簡単、書くことがないからです。あまり過去編引きずると本編忘れそうでして……。


10年経てば、15歳ですね、皆。

そろそろ動き出します。それぞれが将来を考え始め、動き出します。





誤字脱字でも構いません。

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