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第十四話 <過去Ⅲ> ミフネ・マッケイン


三つ目。


新キャラ登場です。


まあ、存在は前々から出てきてましたけどね。



扉が開き、白衣の服を着て、マスクをした男性が出てきて、マックたちの前に立った。

この場には、マック、レイ、そして少年が2人いる。もちろん、片方はルート、片方は名乗り遅れてしまったフラッシュだ。心配そうな表情で2人は男性、医師を見上げた。医師はそんな2人に気が付くと、屈んでその頭を優しく撫で、大人2人、片方は見た目だけだが―――—を見上げて笑みを見せた。


「手術は成功です」


そう、医師は告げた。

それを聞いた瞬間、その場にいた全員が安堵のため息をついた。医師もほっとした表情をしている。

しかし、医師はすぐに真顔に戻って、大人2人だけに向かって言った。


「ですが、損傷の酷かった両手両足は、すでに手術で治せるレベルではありませんでした。残念ながら、切断という選択に踏み切りました……」

「切断、ですか……」


マックの表情が凍りつく。

幼くして両手両足を失ってしまった少女、フェイナを思い、マックは酷く落ち込んでしまった。


「義手義足の手配はしておきました。一日両日中に彼女の元に届くでしょう。麻酔が切れて、目が覚めたら、しっかり彼女に状況を教えてあげてください。信じられないでしょうから……」

「……分かりました」


背後の手術室の扉が開き、中から看護師がフェイナを乗せた担架を押して出てきた。口には酸素マスクが当てられ、シーツ越しに見える彼女のシルエットはあまりにも小さい。本来あるべき四肢が無いのだ。


「レイ、彼女についていてやってくれ。2人も頼んだ」

「分かった。マックは?」

「旅団のトップが俺に用があるらしい。ああ、すみませんが先生、旅団長の執務室というところに行きたいのですが……」

「ああ、それでしたら若いのに案内させましょう、少し待っていてください」


医師が快くそう言うと、近くの艦内電話でどこかに連絡を取り始めた。レイはマックに別れを言って担架の後をルート、フラッシュを連れて追いかけていった。

しばらくして、隊服を着た若い兵士が現れて、軽く敬礼をして、笑った。


「君は……」

「どうも、4時間ぶり、くらいですね」


ヘリに乗っていた、兵士だった。あの時はよく見ていなかったが、随分若い。マックも十分若いが、彼はまだ幼さも残っているほどだ。十中八九成人していないだろう。


「どうぞ、旅団長がお待ちです」

「すまん」


彼の後に続いて通路を進む。


「随分と、立派なものなんだな、傭兵というのは」

「そうですか? 確かにこの艦は立派ですけど、儲かってはいませんよ? 難民や孤児の世話にかなり回してますから」

「そうなのか? 武装も立派なものだが」

「あれは、現在この旅団が防衛軍に雇われている状況ですので、大量に回ってくるんですよ。いざという時の互換性とかだそうです。こっちは自腹切らないで最新鋭の武器が使えるので使いたい放題してますけどね」


タハハ、と彼が笑った。屈託のない、青年の笑い方だ。どうしてここにいるのか、マックは無性に聞きたくなった。だが、それは彼のプライベートであり、聞かれたくないことかもしれない、と思い直して、相槌を打つだけにしておいた。


「ここには、子供がたくさんいるのか」

「ええ、後部甲板の下には本来大型の格納庫があるんですが、旅団には戦闘機をたくさん買うお金も整備するお金もないので、改築してそこも居住区にしているんです。もちろん、防音もしっかりしておいてますので、現在は200人ぐらいいます。内半分は身寄りのない子供ばかりです」

「そういった子供はどうするんだ?」

「大抵は、一緒に乗ってきた大人が保護責任者になって、次の都市に着いたときに任意で降りてもらっています。時々、僕みたいに旅団に留まる子供もいますが、少ないですね。できれば、戦争とは無縁の世界で暮らしたいでしょうから」

「すまん、余計なことを聞いたな」


マックがばつが悪そうな表情をして頭を下げる。それを彼は慌てて制する。


「いえ、僕が勝手に言ったことですし。と、ここですよ」


彼が1つの扉を指差す。他の部屋とは違い、少し装飾に凝っているようで、一見する限りでは木製の扉のようだ。


「自分はここまでです。では失礼します」


敬礼して、彼はにこりと笑って去って行った。

マックは敬礼し返して扉に向かい合った。そして、軽く2回扉を叩いた。

中から「どうぞ」と男の声が聞こえてきて、マックは扉を開けた。


中は、執務室というよりは図書館に近い印象だった。そこそこの広さの部屋には執務机が1つと来客用のソファとテーブルがセット。そして、執務机の背後の壁は大量の本が並んでいる。


ふと扉の幅を見ると、扉は表面だけが木製で中心は金属製だった。


そしてマックは声の主に視線を向けた。


「初めまして、え~と、マック君、でいいかね?」


執務机越しに初老の男がそう言った。短く切りそろえられた髪は、白髪が目立つ。髭を綺麗に切りそろえていて、威厳のようなものが醸し出されている。皺はあるが、老いをまったく感じさせない鋭い目が、マックを見据えている。まだまだ現役といった感じだ。


「は、はい、『ブラン・コーリア』防衛軍外部部隊ドロス隊隊長のマック・ジーンであります。この度は助けていただきありがとうございます!」


直立不動で敬礼する。

すると旅団長の男は苦笑して敬礼を返した。


「そう形式ばらなくて構わんよ。ここは軍隊ではないからな。私はこの傭兵旅団『フリューゲ』を束ねるミフネ・マッケインと言う。今年で59の老兵だ、堅苦しいことは苦手になってしまってな」


まいったもんだよ、とミフネは言い、マックにソファを勧める。


「今回呼んだのはほかでもない、君ともう1人のお仲間をスカウトするためだ」

「スカウト?」

「この旅団も随分と古強者が少なくなってな。若い連中が占める割合が増えてきた。経験豊富な兵士を探していたところなんだ」


ミフネはにこやかに言う。だが、いまだにその目はマックを品定めするかのような鋭いものだ。


「君は一部隊を若くして束ねていたようだな」

「無様にも隊長だけ生き残ってしまいましたが……」

「もう1人がいる。それに君は3人もこれからがある若い命を救った」


ミフネはそう言うと、執務机の引き出しから何かを取り出してきた。そしてそれをマックの目の前に置く。

それは翼をモチーフにしたエンブレムが描かれた部隊章。


「君の直接の上層は部下の報告では壊滅したそうだな。では、現在君が防衛軍のトップだ。自分で決めていいぞ?」

「いきなり、ですね。断った場合は?」


マックがそう言うと、ミフネはすぐさま1枚の紙をマックの前に置いた。そこには細かい字でいろいろ書いてあるが、肝心のところは大きく、分かりやすく書かれていた。


「請求書……?」


それは請求書だった。明細は書かれていないが、とてつもなく法外な金額がそこには書かれている。マックの4、5年分ほどの給料に相当している。


「いかにも、それは君たちをここまで連れてきた時のヘリの燃料費、および少女の医療費が含まれている。まさかと思うが、あの子を放り出して行く気じゃあないだろうな? 言っておくが、分割とか、ローンなんて都合の良いものはないからな。ここを出ていくときにきっちり払ってくれ」


ニヤリとミフネが笑う。

元から、逃がすつもりなどなかったのだ。承諾したら万々歳、拒否しても到底返済できない金額を突きつけて入隊させるつもりだったのだ。


「……最初から選択肢などなかったのですね」

「人聞きの悪いことを言うな。払ってくれればいつでも艦を降りて構わんぞ。あの子供たちの面倒は見られんが」

「……やっぱり断れないじゃないですか」















「うん? 戻ったか、マック」


マックが案内された部屋に入ると、そこにはレイ、ルート、フラッシュ、そしてベッドに寝かせられたフェイナの姿があった。

ルートとフラッシュは疲れていたようでソファで寝ている。丁度レイが2人に毛布を掛けてやっているところだった。


「すまん、任せっきりになってしまったな」

「なあに、マックは疲れるだろうが、俺は疲れんからな。寝ずの番など得意中の得意だ」


マックは部屋の隅にあった椅子を持ってきてベッド脇に置き、そこに座った。レイも自分の椅子に座り、フェイナの様子を見つめる。


「これからどうするんだ?」


レイが、今まさにマックが考えていたことをズバリ当ててきた。

マックはレイの方を向き、小さくため息をついた。


「旅団に入隊する」

「ここに……?」

「そうだ、すまんが俺が勝手に決めてしまった」


そう言うと、マックはポケットから2枚の部隊章を取り出した。1枚は自分の、もう1枚をレイに渡す。それをレイはしげしげと見つめると、もう片方の手でそれまで付けていた軍の部隊章を服から引きはがした。


「構わないのか?」

「何を言う。俺はマックの部下だ。隊長の判断には従う」


ニヤリと笑う。

後で縫わなければな、と呟きながらレイは部隊章をポケットにしまった。


「旅団長はどんな人だった?」


部隊章をポケットに入れるとレイは話題を変えてきた。

するとマックは大きく項垂れた。急にテンションが下がったのが目に見えて分かった。


「ど、どうかしたのか?」

「あの人は、策士だ。少なくとも俺には言い返す機会を与えない。政治家として十分やっていけるな、あれは」


マックに入隊を勧めてきた時も、表面上は柔らかい物腰であったが、目つきだけは笑っていなかった。拒否権など与えない、自分が思ったことは絶対に実現させる、強靭な男の目つきだ。そのくせ、頭も切れるとなれば、これほど恐ろしい男は滅多にいないだろう。


「とにかく、そのうち皆の前で入隊式のようなものをやらせるそうだ。後これ、隊内での身分証のようなものだそうだ、持っていてくれ」


カードのようなものを取り出し、レイに手渡す。顔写真はないが、そこにはレイの名前などが記載されている。マックが教えて作らせたようだ。


「速いな」

「それには激しく同意する。聞いたら俺たちがヘリに乗っていた時点でカード自体は作っていたらしい。後は名前を入れるだけだったとさ。傭兵部隊に入る人間は何らかの事情を持っている人間が多いそうだから、細かいことも書かないそうだ。部隊内でしか通用しないそうだ」

「だろうなあ」


何せ顔写真が無いのだから。


「子供たちはどうなるんだ?」

「ここの保育施設とやらに入れるそうだ。次に着く都市までに引き取り手がつけばその人に連れられて艦を降りることも可能だ。俺としては、できればそうなってくれるとありがたいのだが、今の戦況ではどこの都市も安全ではないからな」

「難しいな」





「ん……」

「おっと、気が付いたか」


見れば、フェイナが目を開けている。

マックとレイが近寄ってその顔色を窺う。目がキョロキョロと動き回って、マックとレイを見比べたり、ソファで眠りこけているルートとフラッシュに視線を向けたりする。


「生き、てるの?」

「ああ、君は生きてる」


そう、マックが優しく言うと、フェイナは大粒の涙を流しながら泣き出した。


「手足の、感覚が、な、いっ!」


おそらく、手で涙を拭おうとしたのだろう。そこで自分の手がないことに気が付いたのだろう。それを理解した瞬間、どうしようもなくて暴れだそうとした。

それを慌てて2人がかりで押さえつけて、舌を噛まないようにレイが指を口に突っ込む。生身の人間がやれば指を噛み千切られるかもしれないが、レイなら痛くも痒くもない。落ち着いて状況を説明するために泣き止むまで待つ。


「マック」

「な、なんだレイ」

「これから大変だぞ」

「今さらだぞ、それ」


新キャラ、ミフネ・マッケインでした。


以前から何度か『先代』という呼び名で出てきてましたが、この人です。


え~、ミフネさんです。

脳内イメージはもちろんあの、ミフネさんです。

マト〇ックス見てからあの人をリスペクトしております。


最終決戦でうおーっ!! て叫びながら引き金を引き続ける姿、……感動しました。


ミ・フ・ネ!!


ミ・フ・ネ!!





はい、少し自分の世界に入ってしまいました。

すみません。

え? すみませんじゃすみません? 山〇君、座布団1枚。





ともかく、過去編においていろいろと最強な人物です。

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