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第八話 スニーキングミッション

フェイナのソロは後二話くらいあります。


その後は主人公がまた主軸に、なるといいなあ……(遠い目)


荒廃した都市、反乱軍がキャンプをしている都市の外壁にフェイナの姿があった。門は固く閉ざされていたため、壁をヤモリのように這い登っていくはめになっているのだ。先に外壁頂上部に向けて撃ちだしたロープ銃、短い銛にワイヤーを繋げたもの――――のワイヤーを巻きつけているから落ちることはない。


ワイヤーを手繰り寄せながら、少しずつ登り、頂上に着くと、そこから都市の内部を見渡せるようになった。


そこでフェイナは暗視ゴーグルの拡大機能を使って周囲の状況を見渡す。本来真っ暗なはずの都市のビル影から光が漏れている。外壁頂上を移動して、光が直接見える位置に回り込む。閉ざされていた門の真正面、大通りのような道の先に夜間用の大型照明機械が煌々と輝いている。暗視ゴーグル内が真っ白になったので、ゴーグルを外すと、十分な視界が確保されていた。こちらから丸見えであるが、同時に向こうも近づく動体に容易く気が付ける。


「厄介な……」


ちらりと時計に目をやる。


1時半。


外壁を登るのに予想以上に時間をかけてしまった。ここでのんびりしている暇もない。

フェイナは目だけをキョロキョロと動かすと、一点でその目が止まる。そして、その点と照明との間を何度か目が往復すると、スクッと立ち上がり外壁の中へと飛び降りた。


高さにして10メートルはくだらない高さだが、フェイナは音もなく着地して、姿勢を低く保ったまま建物の陰に走りこむ。大通りの右側のビルの陰だ。

そしてそこから大通りの奥のビルの陰に視線を向ける。煌々と光る照明機械に反射して何かが光る。

モーションセンサーと呼ばれる、動きを感知するセンサーが巧妙に隠ぺいされて設置されていたのだ。フェイナは手近にあった瓦礫を1つ手に取り、そこへ向けて投げつけた。


ビービービ―ビービ―ビービ―!!


瓦礫がセンサーの前に飛び出た瞬間、センサーが動きを感知、警報音が響き渡る。大通りの音がにわかに騒がしくなり、銃を持った兵士が2人現れた。センサーに駆け寄り、辺りを警戒している。


「敵か?」

「まさか、ここを知っている人間はいないはずだ。ネズミか何かだろう」


砂漠使用の迷彩服を身に纏い、顔の下半分をマスクで隠している。本来あるべき部隊章はなく、『血の盟約』のマークである髑髏を持った人間が描かれた腕章をつけている。

1人がセンサーのチェックを行い、異常なしと無線で伝える。

そして立ち上がって前を向くと、


そこにフェイナがいた。


「っ!」

「ふっ」


声を上げようとした男の喉に深々とナイフが突き刺さる。何度か痙攣したかのように体が跳ねるが、数秒で動かなくなる。もう1人の男は背後を警戒していてこちらの状況に全く気が付いていない。その背後からフェイナは忍び寄る。


「まったく、こんな夜中に誤作動するなんて、嫌味かなにか……っ!?」


何かを感じ取ったのだろうか、男が固まる。

事実、彼の首筋には血に染まったナイフが突きつけられている。少しでも横にずらせば、頸動脈を軽々と切り裂ける位置だ。首筋にナイフを当てた時点で、フェイナは耳から口元に伸びている無線の線を切り落としている。彼の声が味方に届くこともない。


「……指揮官はどこ?」

「ひっ!?」


背後から静かにフェイナが質問する。男は事態が呑み込めずにじたばたするが、鋼鉄のフェイナの腕はビクともしない。


「指揮官は?」


フェイナがもう一度聞く。男は完全に戦意を喪失しており、手に持っている銃を空に向けて撃ち、仲間に知らせることも、大声を上げる気も、なかった。


「た、隊長は、指揮官車で睡眠を、取っている。た、頼むから、助けてくれ!」

「いやよ」


次の瞬間、フェイナが男の首を掻っ切った。血が飛び散り、男が力なくだらりと崩れ落ちる。フェイナは2人の死体を物陰に引きずり込み、1人目の男のまだ使える無線を奪う。弾丸は口径が違ったために諦めた。胸ポケットを物色すると、1枚の写真が出てきた。この死体であろう男が家族と映っている写真だ。それを見てフェイナは何とも言えない表情をした。


「なぜ家族を残してテロなんか……」


答えを返す男はすでにこの世にいない。

フェイナは写真を持ち主に返して立ち上がった。


「あなたにも守りたいものがあったでしょうけど、仲間を殺した罪は全員に贖ってもらう。1人の例外も許さない」


そしてレイの腕の貸しも、と小さく付け足す。

フェイナは物陰から大通りに出て、上手く瓦礫を陰にして都市中心部へと進む。途中何度も偵察している兵士に遭遇したが、誰も消えた2人について気が付いておらず、むしろフェイナは拍子抜けしてしまった。




「……あそこか」


都市中央部、巨大な庁舎のような建物の前に数十両の車両が止まっている。広場のような場所を使って、駐車場のように使っているようだ。外縁に戦車、その横にはヘリも止まっている。そして内側にトラックや装甲車が止められている。どうやら、トラックや装甲車で睡眠を取っているようだ。その周囲に銃を持った兵士が立っている。時々あくびをかみ殺しているのを見て、フェイナは呆れる。


自分たちの立場が分かっていないのだろうか。

彼らは追われる立場の人間に今やなってしまった。いくら危機感が薄れていたとしても、任務中がそんなでは隙だらけだ。

そう思うわけだが、あいにく敵を知恵づけるほどフェイナは優しくないし、むしろその隙につけ込む方の人間だ。兵士がよそ見している間に戦車の下に滑り込み、下から敵兵の配置を確認する。


できれば、後顧の憂いを払うために戦車を吹き飛ばしたいところなのだが、あいにく対戦車地雷は持っていない。通常の手榴弾ではキャタピラを破壊できるかもしれないが、そんなものでは足りない。

だから、狙うはヘリだ。コックピットにでも投げ込めば簡単に破壊できる。


戦車の下から這い出し、ヘリの陰に滑り込む。そしてポケットから直方体の物体を取り出す。カバーを被ったそれを2つに手で裂き、その内の1つにコードのついた円柱状の起爆装置を突き刺す。粘土質のそれにめり込み、それで手榴弾を包み込む。

プラスチック爆弾と呼ばれるそれを2つに裂いたので、威力は減退したが、それを手榴弾で補ったのだ。そしてそれをヘリのテールローター駆動系にねじ込む。


1つは戦闘ヘリに、残りは2機ある武装ヘリのうちの1機に取り付けた。あいにくそれしか量がなかったため、最後の1機は燃料タンクにナイフで穴を開けて燃料を抜くだけに止めた。隣に止まっているヘリが爆発すれば、誘爆するだろう。


「よし、こんなもんでいいかしら」


フェイナがそう呟くと、ヘリ置場から離れてトラックや装甲車が止められている方へ向かう。ここは特に警備が厳しく、トラック2台に1人程度に配置されている。トラックのそばに近づくと、中から形容し難いいびきが聞こえてくる。そそくさとそこから離れて、指揮官車を探す。


指揮官車と言っても、他の車両と変わらないかもしれない。だから装甲車を見つけては1台ずつ確認しなくてはならない。

だから面倒だ、などとフェイナが考えていると、後部ハッチが開いている装甲車が視界に入ってきた。他の車両同様兵士が警備しているが、どうも他のと空気が違う。見ると車両の横に大きく『血の盟約』のマークが描かれていた。


「分かりやす……」


他の車両にはそのようなマークは描かれていない。大手を振ってここにいますと言っているようなものだ。警備の兵士に気が付かれないように背後から近づき、その口を塞いで背後から肋骨の合間を縫って心臓を一突きにする。くぐもった悲鳴が喉から漏れるが、口から漏れ出ることはない。その状態でナイフを捻り、心臓内部に空気を送り込み、絶命させる。隙間から大量の鮮血があふれ出て、地面に血の池を作り出す。


死んだ兵士が銃を落として、辺りにカランという乾いた音が響く。

一瞬、ヒヤリとして辺りを警戒するが、幸い誰かがこちらにくる気配はしなかった。死体を手早く隠して、装甲車の中に乗り込む。


乗り込むと言っても、装甲車の中というのは広くない。この兵員輸送車を改良した指揮官車は後部ハッチを開けるとすぐ目の前に様々な指揮に必要な機器が詰め込まれている。その座席に男が1人寝ているのだから、話は速かった。


拳銃を取り出し、男のそこそこに太った腹にかなり強くねじ込んだ。何度も何度も突くのは面倒だったからだ。


「んぐっ!?」


男が苦しそうな声を上げて、目を開ける。一瞬事態を理解できず、目が泳ぐが、そのうちフェイナに固定される。そしてその手に握られる銃とフェイナの顔を1往復して、ようやく事態を半分程度理解したのだろうか、表情が目に見えて凍りついていった。

だが、大声を上げさせるわけにはいかない。フェイナは男が声を上げる前に口にガムテープを巻きつけた。そして座席に寄りかかっていた男を座席ごと縛り上げる。


「んん?!」

「騒がないで、殺しゃあしないわよ」


フェイナが思いっきり睨むと、男は首を何度も縦に振って黙りこくった。その間に足も座席に縛り上げる。

それを終えて、ようやくフェイナが男の目の前に立った。男は到底軍人とは思えない体型をしている。鍛えられているべき体は妙に白く、余計な脂肪がついている。いわゆるエリート軍人と呼ばれる、デスクワーク派の人間なのだろう。こんな男に従わなければならない兵士がむしろかわいそうになってきた。


「さて、質問はすべて『イエス』か『ノー』で答えなさい。あなたがこの部隊の指揮官で間違いないわね?」

「んー!(コクコク)」


首を縦に振った。


「『血の盟約』の居場所を知っているわね?」


その名を聞いて男が顔面蒼白になる。おそらく自分の都市からの追ってだと思っていたのだろう。


「知っているの?」


その顔の前に銃を向ける。そして引き金に手をかける。


「んー!(ブンブン)」

「別に今言わなくてもいいし、言ってもあいつらにあんたは殺させないわよ? うちで”面倒”見てあげる」

「っ!? んーんー!!」

「ああもう、うっさい!」


事ここに至って男が激しく暴れだそうとしたので、フェイナは首筋に手刀を当てて気絶させる。そして項垂れる男を座席ごと持ってきた袋に詰め込む。そして口をきつく縛る。小さい穴が何か所か開いているから窒息することはないはずだ。


そしてそれを肩から担いでハッチから辺りを見渡す。まだ騒ぎにはなっていないようだ。

フェイナは時計に目をやる。午前2時15分を指している。


「時間が余った。どうしようかしらね…………ん?」


悩んでいると、どこからか無線の音声が入っていることに気が付いた。音源を探すと、指揮官車の無線の1つが受信待機になっていた。向こうからの一方通行だから、こちらが聞く分には問題ないと判断したフェイナは無線を開く。そして直後に男の怒号が飛び込んできた。


『侵入者だ! 2人殺られてる! 至急全員をたたき起こしてくれ!!』

「やっば……」


気づけば辺りが騒がしくなりつつあった。トラックの横を叩く音と、「起きろ!」という怒号が響き渡る。


男を押し込んだ袋を抱えて、急いで指揮官車を飛び出す。トラックが止まっている一角は避け、戦車が置かれている区画を通って都市の外縁を目指す。


「あと45分どうしろっていうのよ」


闇夜にフェイナの姿が消える。

フェイナの話が1番長い感じがします。


フェイナはナイフ使いですから描写が少し細かくなっているせいですが……。


誤字脱字でも構いません。感想お待ちしております。

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