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これは非日常も氣龍にとっては日常  作者: 神常神


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8/12

メルト-溶けて死埋葬

一定の距離を保ちつつ、男の攻撃を()わす神とマリク。

その度に木の葉が舞い、枝が落ち、木自体が溶け倒れたりしていく。


「無茶苦茶しやがるな」

「神」


アイコンタクトをした二人は、男を挟むように左右に広がり一気に近づく。

その様子を見た男は一瞬迷ったが、よりスピードの速い神の対応を優先した。

男は神に対し一発二発と、溶解液の玉を投げていく。

しかしそれを難なくかわした神は、足を止めることなく男に接近し、勢いのままに飛び蹴りをしようとした。

が、男の足の甲に溶解液の玉が乗っているのに気づき、地面にかろうじて残っていた足に力を入れ、自ら体勢を崩し男の横に転がった。

すると男の蹴り抜いた玉が、近くの木に勢いよく命中した。


「おしいっ」


神とやり合っている間に、今度は接近したマリクがミドルキックを男に入れる。

男はそれをガードし笑う。


「軽いな」

「俺はインドア派だからな」

「ふ……い、いってえええ!」


マリクは自分を(おとり)に使い、()()を男の右脹脛(ふくらはぎ)に噛みつかせていた。


「俺の闇Bite(バイト)は、闇や影の中なら何処へでも這わせられる」

「離しやがれ!」


男は両手に玉を生み出し、フユに投げつける。

しかしフユは地面に潜り、難なく躱した。


「おい」


声の方に振り向いた男の顎を、神のつま先が蹴り上げる。


「ぐっ」


男の体は宙を少し舞い、近くにあった太い木の幹に後頭部からぶつかった。


「つぅ」


男は後頭部を腕でさすりながら、神を睨みつける。


「お前に休む暇はねぇよ」


マリクがそう言うと、男が背中を預けていた木からフユが現れ、首を狙って牙を剥いてきた。

気配を感じた男は咄嗟にガードするが、右手の前腕に牙を深く向かい入れてしまう。


「ぐわあああ!」


慌てた男は左手に溶解液を(まと)い、フユの首目掛け手刀を入れる。

が、これまた影に逃げ込まれてしまう。

ザ、ザ、ザ、ザ。

男が足音に目線をやると、拳が目前に迫っていた。

そして当然のように、男は神の勢いと体重の乗ったパンチを横っ面にくらい、大きく吹っ飛んだ。

男はそのまま傾斜を転がるように落ちていき、下の方で倒れたままピクリとも動かない。


「やったか?」

「いや、手応えはあったが。まだ仕留めれてない」


二人は斜面に足を取られないように、男に近づいていく。

するとその時、男はむくっと起き上がると、全速力で逃走を開始した。


「マジかよ!」


二人はすぐに追いかける。

男の身体能力は人間の三倍ほど。

二倍ほどもない、マリクだけなら振り切れただろう。

しかし神は四倍から五倍。

少しずつ差は縮まっていく。


「逃がすかよ」

「俺が逃げる?違うな!」

「うっ」


男の狙いはこれだった。

追いかけていた神は小さな穴に、(すね)あたりまでハマってしまい、前のめりに地面に手をつく。


「ハハ、掛かったッ!もうお前の足は溶けたッッ!」


神が足を取られたのは男が防衛のため、事前に作っていたトラップだった。

穴には溶解液がたんまりと入っていた。

男は足を止め、クルッと振り返ると、走りながらお腹の前で生成していた大きな玉を、神目掛けて放り投げた。

直撃。


「ハハ、ざまあ……あ?な、何だとッ」


神は穴から足を抜き、スッと立ち上がり男を見据える。

溶解液は確かに神に命中したが、彼の表面を伝うようにして、地面に垂れていく。


「な、なんで効かないッ?」

「ショコラ」

「は、はあ?」

「つっても分かんねぇよな」


神の言う通り、愛里寿のバリアが彼を守っていた。


「ガキの頃から変わった特技があってさ。俺は、感覚で方角が分かるんだ」

「なん、だからなんだ!」

「今俺が向いてんのはちょうど東だ」

「だからなんだよおッッ!」


会話の最中に気づかれないよう、足の上に作っていた玉を男は蹴り飛ばす。


「この方角が、ちょうどいい」


神の体が青い光に包まれる。

そして男の蹴った玉は、神の目の前で大きな葉が盾のようになり、彼には届かなかった。


「てめぇ、なんだよッ、それッ!?」


男の目には龍をモチーフにした、青の鎧を纏った神が映っていた。


「これが俺のRitual、The・Dream(ザ・ドリーム)


神はゆっくりと男に近づく。


「くそッ」

「もう遅い」


男は踵を返そうとしたが、いつの間にか足首に絡まっていた太い(つた)に、足を取られ尻餅をついてしまう。

神は男のそばまで来て見下(みお)ろす。


「ぐわあ。ま、待て!わかった!降参だ、異世界に帰る。俺はまだ死にたくないんだ!」

「十中八九死刑だぞ?」

「それでも100パーじゃない。生き残る可能性のある方に俺はかけるさッ。だから許してくれッ、頼むッ!」


男は顔の前で手を合わせ、目をギューっとつむり許しをこう。


「……分かった」


神の意思に反応し、男の足は蔦から解放された。


「ありがとう、ありがとうございますッ」


頭を下げる男の顔には、ゲスい笑みが張り付いていた。


「ついてこい」


背中を向ける神に、男はゆっくりと立ち上がると、溶解液を全身に静かに纏い襲いかかった。


「俺がそんなに甘い奴に見えたか?」


振り向かずに神は言う。

その瞬間、男の体を複数の太い蔦が襲う。


「無駄だ!」


男の言う通り、男に触れた蔦は溶けて地面に落ちていく。

しかし次から次に蔦が鞭のように襲いかかる。


「無駄だっつってんだろおッッ!」


男が手で切り払い続けるも、だんだん激しくなる攻撃に男の対処は遅れだす。

そして体の溶解液の鎧に一発、二発と攻撃が通りだす。


「お、おい、待てッ、無駄だって―」


休む間のない蔦の猛攻に、溶解液の鎧はみるみる剥がされ、男は先ほどまでの姿が、露わになっていく。


「待て、ぐッ、ちょ、ま、うあ、あッ」


ついに体の溶解液は全て剥がされ、手でガードする男は少しづつ後退する。

しかしガードを気にせず鞭のように襲う蔦に、次第にガード崩れていく。


「ぐ、ぐあ、ぐ、べ、ば、ぼ、べ、べ、ば、ば、ぼ、ぼ」


今まで男に背を向けたまま立っていた神が、ゆっくりと体を振り返らす。


「命への感謝がない。それがお前の敗因だ」


それから数秒の間、蔦で手足を大の字に拘束され宙に浮いた男は、神の変身が解除されるまで無防備に蔦の鞭を受け続けた。

そして神の変身が解除されると蔦は動きを止め、男は力無く地面に落下しうつ伏せに倒れた。


「あ……ああれ、メルト-溶けて死埋葬(リチュあル)……ぁ……うあ……なんぁぃ…………」


神は男の様子を確認する。

すると、男の指先が消失を始めているのが目に入った。


「終わったな」


そう言ったのはマリクだった。


「遅くねぇか?」


今更の到着に神は言う。


「途中で穴にハマって萎えた」

「おい!」

「あんな奴になら、勝てると思ってたよ」


そう言ってマリクは笑顔で拳を突き出す。


「俺の変身は三分だぞ?三分以上経過してからくんじゃねぇ、よッ」


そう言った神は、勢いよく拳を突き返した。


「いったあ!」

「ふふ」


二人は男の消失を最後まで確認し、帰路につくのだった。

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