表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは非日常も氣龍にとっては日常  作者: 神常神


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

決着

俺は最大火力で目の前のバカを押し潰してやった……はずだった。

異変に気づいたのはすぐ。

俺の目の前で潰れて凹んでいるのは、地面だけだった。

奴の姿が見当たらない。


「どこ、いった?」


俺は左右後ろを、キョロキョロと確認するが見当たらない。


「どこいったあ!?」


待てよ、冷静になれ。

俺の目の錯覚じゃなければあいつの体、一瞬光ってなかったか?

まさかあいつ、能力(リチュアル)を今まで発動していなかったのか?

まずい、まずいぞ!このまま逃げられでもしたら―


「ん?」


足元に揺れを感じる。

なんだ?

俺が足元を確認しようとした時だった。

地面から黄色の鎧を(まと)った奴が現れたのは。

確認できたのは一瞬で、次の瞬間には(あご)に強い衝撃を感じ、高々と飛ばされ天を仰いでいた。

なん…………だよ?

受け身も取れず俺は地面に叩きつけられる。


「グ、が、あ」

「龍が昇るように拳を叩き込む。名付けて昇龍拳(しょうりゅうけん)てところか?」


奴が気取ったことを言った気がする。

が、しかし今はそんなことどうでもいい!

顔は、顎は、体は、どうなってる?首はもげてないよな?なら、なんで動かないッ!


「お前が俺を潰そうと、かなり強い力で押してくれたおかげで、速く深く潜れたよ」


何言ってやがる?


「見ろ、月が出た。代わりにお前のツキは沈んだようだが」


うるせえうるせえうるせえ。


「お前の敗因は得意になりすぎたことだ。一思いにやるべきだったな、俺を」

「うるせんだよおおおおおお!」


俺は全身に力を込め、仰向けの上体を強引に起こす。

そして震える足を立て、膝に手をやり、力を目一杯込め立ち上がろうとする。


「うおおおおああああああッッ!」


咆哮をあげた俺は、両手に膝をやりながら立ち上がることに成功する。


「はあ、はあ、はあ、はあ」


俺の視界には、一目でわかるような龍を感じるモチーフの、黄色い鎧のようなものを纏った奴が立っている。

ぶっ殺してやる!


「さぁ、こいよ」


奴は俺に人差し指で、クイクイっとかかってこいと合図を出す。


「ぐっ」


しかし俺は足が動かない。


「ああ、そうか。生まれたての子鹿じゃまだ歩けないか?」

「てめぇ」

「なら、俺から行くぞ」


そう言った奴は、一瞬で間合いを詰めてきた。

やった。

俺はニヤリと白い歯を見せる。

なぜならこの戦いの最中、俺はずっと一つのミスリードを行っていた。

それは、能力を発動する時()()()()()

俺の能力の発動は、視線を送ればそれだけで本来出来る。

得意になってたのはどっちだ?最後の最後、不用意に真っ正面から突っ込んできやがって!膝に手をついていて、手をかざせないとでも思ったか?


「バカがッ!」


俺は目前に迫った奴を見つめ、残る力全てで一気にプレスする。

すると奴は当然うつ伏せになる形で、地面に突っ伏しかけた……しかし、奴は突っ伏すことはなく、両手を伸ばす体勢をとり、プールに飛び込むような感じで地面に潜り、俺の視界から姿を消した。

しまった……俺は、同じ(てつ)を踏んだのか?

さっき奴が言っていたことは、こういうことだったのか?

ちくしょう、ちくしょう!

俺は足元を警戒する。

まだだ!さっきと同じなら、また足元に揺れを感じるはず。

なら、次の一撃をなんとか(かわ)し、横からのグラヴィトンで奴を思いっきり吹っ飛ばす。

そして何とか壁のある場所まで逃げて、仕切り直しだ!

もう縦には打たねぇ!

しかし5秒、10秒と経っても足元に揺れを感じない。

なんだ?さっきより深く潜ったのか?


「言ったろ」


俺のすぐ後ろで声がした。


「得意になりすぎたって」

「てめえええ!」


身を(よじ)った俺に、拳の連打が打ち込まれる。


「グッ、ゲッ、ゴッ、ゴッ、ガッ、がッ、ががッ、があッ、ッッ」


俺の体が吹っ飛ばないように、後方に飛びそうになったら体を引き寄せられパンチ、また後方に飛びそうになったら引き寄せられパンチと、それが何度も繰り返された。

そして俺が虫の息になった時、胸ぐらを掴まれ額を突き合わされた。


「俺とお前じゃ覚悟が違うかどうか知らないが、覚悟じゃ埋められないぐらい、格が違うんだよ」


俺は腫れ上がった瞼から見える細い視界に、グラヴィトンを発動させる。

しかし、途端に奴は俺の視界の外に移動する。


「予想通り、視線だけで能力(リチュアル)を発動できるんだな」

「な、んで?」

「ああ?なんでも何も、お前何度か手をかざさず能力使ってたろ?」

「んッ……あ?」


俺は何も考えられず、白目を剥き、血を吐きながら膝から地面に崩れ落ちた。







月の明かりが多少なりとも明るくした広場で、二人の男が転がっていた。

一人はまるで土下座をするような態勢でピクリとも動かず、もう一人は大の字になり天を仰ぎ見ていた。

そこに二人の女性が近づいてきて、それぞれ一人ずつ男の状態を確認した。


「生きてますか?」

「……遅くね?来るの」

「あなたが私達を振り切って行ったんでしょ!」


愛里寿の雷が落ちる。


「だって、気づかれたっぽかったし」

「愛ちゃんがいなかったら、私今ここに来れてませんけど。て、その足!大丈夫なんですか!?」

「いえ大丈夫じゃありません」


神は早口で自分が大丈夫でないことを伝えた。


「愛里寿ちゃん。こっちはもう、肉体の消失が始まっています」


人形の擬態に乗り移った愛が、男の死体の消失を確認した。

異世界人は人間界で死ぬと、肉体が粒子レベルまで分解され、その形を失う。

この人間界で異世界人の存在がバレていない理由の一つが、この現象にあった。


「分かったわ。あとどれぐらいで消えそう?」

「5分もあれば」

「OK。問題はこのバカか」


彼女はジト目で神を見る。


「愛里寿」

「なによ?」

「優しくしてくれ」


神は弱ると、甘えるタイプの男性だった。


「こんな時だけ名前で呼ぶなッ」

「いたっ」


彼女にデコピンをされる。


「いや、マジで。止血とかしないと―」

「あの死体が消えたら、あなたを車まで運んであげるわ」

「これがハラスメントですか?」

「そんだけ話せんなら大丈夫でしょ?」

「……」


神は口をパクパクさせる。


「いや、急に話せないふりされても」


そんなやりとりをしつつ、彼女たちは死体の消失を、最後まで確認するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ