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これは非日常も氣龍にとっては日常  作者: 神常神


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3/9

悲劇は繰り返す

7月9日。金曜日。夕方。


「青森県、広前城(ひろさきじょう)の敷地内にて、木でできた十字架に磔にされた男女6名の遺体を発見。十字架は円を描くように配置され、円の中央には6つの頭部が自分の体を見つめるように、それぞれ配置されていた」


彼女の資料を読む声を、神はストレートティーを飲みながら聞いていた。


「鹿児島県、観覧車アシュランの一つのゴンドラの中で、男女6名の遺体を発見。全ての遺体は目と口が縫われていたうえ、後頭部が溶かされていて、虫が湧いている遺体もあった……読んでるだけで気分悪くなりますね」


愛里寿は苦虫を噛み潰したような表情でそう言った。


「俺がこの仕事に就いて約三年。こんなに

(むご)い奴らは初めてだ。ズズ」

「その割には普通にティータイムしてますね?」

「まぁ、実際に現場を見たわけじゃないしな。文だけで気分は害さない」

「ふーん」


ジト目で彼を見る愛里寿。


「何だ?」

「モテませんよ」

「そのほうがいい。こんな仕事をしてるんだからな」


そう言い、また神は紅茶を啜る。


「……あと、神奈川でまた頭が潰れている遺体が発見されました」

「場所は?」

「青レンガ倉庫」

「横浜だっけ?」

「はい。何でコイツだけまた神奈川なんですかね?」

「……さぁ。ただ、こちらにとっては好都合だ。愛からの連絡は?」

「さっきもう少しって言ってたんで―」


彼女の言葉を遮るように、スマホの着信音が部屋に響く。


「もしもし」

「愛里寿さん、もしもーし」

「どうだった?」

「うん、多分犯行現場見つけました。でも」

「でも?」

「もう警察の方々が先に来てしまっていたので、そこまで近寄れないです」


愛は姿は消せても、プロペラの音は消せない。


「分かったわ。遠くからでもいいから現場を撮影してきて。終わったら戻ってきていいわ」

「了解です!」


通話を切った彼女は呟く。


「なんか、愛ちゃん、テンション高かったわ」

「明日人型のボディが届くから、今日からワクワクしてるんだろ?」

「あー、なるほどぉ」


合点がいったのか、彼女は手をポンと叩いた。


「それより、今回の神奈川の被害者はどんな奴だ?」

「ヒットコインって知ってる?」

「ああ、こっちの仮想通貨だろ?」

「あれができた当初にかなり買い占めて、お金持ちになった成金ね。資産は17億円」

「17億か。前回は3億の宝くじだったな」


神はソファーから対面に座っていた彼女の方に回り、ノートPCを覗き込む。

画面には二人の共通点が、ある程度書き出されていた。


「二人とも数日前から脅迫を受けてるな」

「ええ。警察には二人とも連絡をしているけど、これと言って用心していたとかは無いわね。家に引き篭もるとか、ボディガードを雇うとか」

「ボディーガードなんてこの国で雇えるのか?」

「自称用心棒なら腐るほどいるわ。体のデカい外人とか2、3人連れてたら、それだけで怖いでしょ?」

「多分そいつら、俺ならワンパンで終わるぞ」


別に神はイキったわけではない。

異世界人は平均して、人間の約三倍の身体能力がある。

そして彼は異世界人と人間の血が混ざった家系の出で、平均的な人間の約四倍から五倍の身体能力があった。

そのために出てきた言葉だった。

ただ彼女は内心、そう言うことじゃないんだけどなぁ、と思った。


「……じゃああなたがボディーガードやったら?」

「いや、俺はDeletar(デリーター)で忙しいだろ?ズズ」


彼を見る目を細める愛里寿。


「わざとやってます?」

「何が?」


彼が天然なのかボケてるのか、出会って一年以上経つが、未だ彼女はつかめないでいる。


「まぁいいですけど。あと共通してる点は被害者の逃走を、ある程度許してる感じでしょうか?」

「……狩りか」


神はぼそっと呟く。

ちょうどその時スマホの通知音がなった。

確認した彼女は、彼にスマホを見せる。


「ここが犯行現場です」

「ここは?」

「愛ちゃん(いわ)く廃墟で心霊スポットです」

「外からの画像しかないのか?」

「うーんと、あ、一応中の画像もありますね」

「今回は警察も早いな」


画像に写っている警察官を見て神は言った。


「そうですね。前回の廃工場の発見は二日後とかだったので。でもここらへん住宅街なので、大きな物音とかで通報があったのかも。あ、この画像の床部分、血だまりがありますね」

「……深夜に周りの住民が通報。来たら血痕を発見。その後発見された遺体のDNAと照合一致。関連付けて捜査ってとこか?ズズズ」


神は紅茶を飲み切った。


「ん、被害者の情報が更新されました

ね」


二人が見ていた画面左側、被害者という項目にNewのマークがついていた。

彼女はそれをクリックする。

すると今回の異世界絡みだと思える、被害者の名前がずらりと出てきた。

そのうち横浜の被害者にNewのマークが付いていた。

そこを開くと、男性に関連する情報がこれまたずらりと表示された。

そして今までに確認した文面は、全て黒い文字で表示されているが、新しく更新された文面は赤色で表示されている。


「今回の横浜の被害者は胸部も潰れていたみたいですね」

「……前回の被害者の腕。二人の頭。コイツの能力がだんだん分かってきたな」

「うーん、まぁ確かに。潰す感じですもんね。うんうん。それより、なんで胸を潰したんでしょうか?」

「……さっき廃墟に血だまりがあったな?」

「はい」

「じゃあ逃して捕まえた時だろう。そこで生きながらに胸を潰された。それで血を吐いた」


神の推理を聞いた彼女は、自分のDが陥没するのを想像して身震いした。


「何してんだ?」

「いえ、私の大事な武器なので」

「は?」

「そう言えば、今回の件を受けて、私達以外のチームも対処に動き出したみたいです」

「まぁ、そりょそうだろ。俺たちの見立てじゃ異世界人(こっち)関連で26人死んでる。むしろ先週の時点で増員しとくべきだろ。俺は増員した方がいいって言ったぞ!」


先週組織のリーダーに突っぱねられたのを

思い出し、少しヒートアップする神。


「まぁまぁ落ち着いて。神さんみたいに、この世界に戸籍の無い人を大量にこっちに送ったら、バレるリスクがありますから」

「でも結局送ってきたろ」


むすっとする神。


「ふふ。じゃあもういっそのことバラして、警察とかと協力するとかどうですか?」


その言葉に彼は眉間に皺を寄せ、一旦間を取ったあと言う。


「本気で言ってんのか?」


その言葉にニヤついた彼女は答える。


「いいえー。私達のようなRitual(リチュアル)を持った存在が公になれば、こっちの世界の悪い人たちとも戦わなければならなくなる。利用するような人たちとかね。そうなったら私、ストレスで禿げます」

「……それはそれで見てみたいな」

「え、死にたいって言いました?」


彼女の笑顔が怖いと思った神は、咳払い一つPCの画面に目をやった。


「相変わらず()()()の情報網はすごいよな」


しみじみとした感じで言う。するとそれを聞いた彼女は、ポチポチとページをクリックしだす。


「そうですよね。ここの情報のほとんどが、世間一般には発信されていませんから。電子世界に書き込まれた情報なら全て盗み見れる。私のも見られてるのかな?」


今まで見ていたPCのアプリは、マリクと言うチームのメンバーが、独自に開発したものだった。

マリクは事件に関係する情報を、警察のデータサーバーやメールなどから独自に集め、このアプリ内で共有するのが、最近の主な仕事になっている。


「あいつは事件以外ではこの能力を使わないさ。それより、マリクに連絡しといてくれ」


彼女は小首をかしげる。


「なんてですか?」

「今後一週間の、警察への通報記録を全て確認してくれって」

「分かりました」

「今度狩られるのはお前の方だ」


そうポツリと呟いた神は、ストレートティーのおかわりを要求した。

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