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第018話 出会って初日で一緒にお風呂♡

アナコンダ・クーパー……ハジャ村出身の熱血少年。魔力はないが国家魔術師になりたい。尻穴の中にニョルモルモを挿れることで魔術を使えるようになる。

ニョルモルモ……ヘビみたいなドピンクの魔物。種族は蛇人族(ニョルーマン)。上官の猪人族(ウリマン)に同胞を食べられた。

チッチ・アルージャン……無表情の国家魔術師。アナコンダの弟子入りを認める。

金髪の子……「ふえぇ~」が口癖。不良中年に襲われたところをアナコンダに助けてもらった。

「い、一体どうなさったんです!?」


 御者は、馬車まで戻ってきた子供を見て驚いた。


「びしょ濡れだし、服は汚れてるし……それに、その小汚ないガキは誰です?」

「この人の悪口を言ったらダメぇ! 助けてもらったんだからぁ!」

「はあ……」


 御者は馬に鞭を打ち、屋敷へ急いだ。

 さて。

 車内には、小さいながらも炉があり、これで冷たくなった体をあたためることができた。

 できることなら服を脱いで乾かしたいところだが、


(こんなかわいい子の前で脱げるわけないぜ)


 アナコンダは照れていた。

 時々、金髪の子をちらりと見やると、ほぼ必ず目があった。

 その割に話しかけるきっかけがつかめず、アナコンダは気まずさのあまり、窓の外をじっと見つめた。

 これはこれで目の保養だった。

 ドジョウ王国の首都は何もかもが光り輝いているのだ。


「きれいでしょぉ……?」


 おずおずと金髪くせっ毛の子が、


「王都は美観法があるから、汚いところがひとつもないんだよぉ」

「確かにきれいだ……けど、きれいすぎないか? なんだか、まぶしいぜ」

「なんにでも宝石を使ってるもんねぇ。例えば、ほら」


 いたるところに設置された神像は、アナコンダがラトン町教会で見たものとは違い、やけにきらきらしている。

 これは上から下まで、


「宝石が使われてるからなんだよぉ」

「宝石が!? あんなもんに!?」

「あんなもんとか言っちゃダメだよぉ。神様の像なんだからねぇ。あ、川だぁ。川もきれいじゃなぁい?」

「おお……」


 澄んでいる、どころではない。

 川面には宝石細工の花が浮かび、川底には金銀が張り巡らされている。


「こんな堂々と贅沢なことして大丈夫か? 泥棒に盗まれちゃうだろ」

「大丈夫ぅ。だって、王都の人はみんな豊かなんだもぉん。お金持ちじゃない人なんて一人もいないんだからぁ。それに、警察も兵士もたくさんいるから、わざわざ王都で盗もうなんて考える泥棒さんはいないと思うよぉ」

「あーなるほど……」


 言われてみれば確かに、大泥棒のネオンも町で盗みを働いていた。

 田舎者のアナコンダには、まったく見慣れない光景に、まったく見知らぬ常識の山だった。

 気を取り直して、今度はアナコンダが自分の出身地自慢を聞かせてやろうと思ったが、


「……ハジャ村ぁ……? 聞いたこともないよぉ」


 僻地すぎて名前すら知られていなかったので、やめた。

 こんな調子で驚きの連続だったが、やがて馬車が豪邸の敷地内へ入った時には、


「すげえ家だな。ここ、王様が住んでるのか?」


 と盛大な勘違いをした。

 対面に座る子供は困ったような顔をして、


「うちだよぉ~」

「お前、王様なのか!?」

「まさかぁ~。王宮はもっとすごいところだよぉ」

「マジかよ。すげえな、王都……!」


 それにしても、このような豪邸に住めるのは、どういう人物なのか。


「お前の親の顔が見てみたいぜ」


 その願望はすぐに叶った。

 馬車の音を聞きつけたようで、この家に住む貴族の夫人が飛び出てきたのだ。


「サオ! 一体どこへ行っていたのだ!?」


 アナコンダはその顔を見て驚いた。


「師匠じゃん!」

「なっ……アナコンダ!?」


 無表情で、右頬に火傷痕のある、見慣れた顔。

 まごうことなくチッチ・アルージャンその人だった。

 彼女は両手をかたく握りしめ、


「馬鹿野郎ー!!!」

「うわあ」

「勝手な行動をするな! 国家魔術師を目指す者としての自覚がないのか!? 上司の命令を聞けない者が戦場で生き残れると思うな!」

「やめっ……痛い。痛いって。ごめんなさいごめんなさい」


 どれだけ謝っても、強めの暴力は止まらない。

 サオと呼ばれた子が割って入ったものの、力が弱くて、すぐに押し出された。

 チッチがこれだけ怒るのも無理はない。

 彼女はアナコンダが消えたことを知ると、すぐに馬車を最寄りの警察署まで走らせた。

 が、迷子は一人もいなかった。

 その上、朝っぱらから余計な仕事を押しつけられて不快感をあらわにする警察官が、


「10歳で魔物を倒したり、あの大泥棒を捕まえるなんて、信じられませんね」


 実在するなら常識では考えられないほどの逸材だ。


「実在する! 私の弟子なのだ!」

「はあ……じゃあ、まあ、仮に天才少年が実在するとしまして、それほどの天才が迷子になるのは、おかしくないですか?」

「魔力はあるが、頭の中は空っぽなやつなんだ!」

「ふうん……?」


 いずれにせよ、警察はアナコンダの居場所に心当たりがなかった。

 チッチに、一度帰宅するよう提案した。


「もしかしたら、もう家に帰ってるかもしれませんよ」


 そんなわけない……と舌打ちしたチッチだったが、


「本当に帰って来るとはな!」


 恥ずかしいやら情けないやらで、殴り散らかすしかなかった。

 とうとうアナコンダの顔がパンパンにふくれあがった時、


「その人は命の恩人なのぉ~!」


 我が子の必死の弁護によって、チッチは拳を下ろした。


「いったい何があったのだ?」

「えっと、まず港の近くを歩いてたらぁ……ハクシュッ」

「……体が冷えたのか?」

「うん」

「風呂へ入れ。体を温めろ。話はそれから聞く」


 チッチは二人の子供を風呂場の前まで連行すると、


「ほら。さっさと脱げ」


 と命じた。

 ところが、子供たちはとまどう。

 アナコンダは気をきかせ、


「俺は後でいいぜ。熱血だからな。お前、先に入れよ」


 ゆずったのだが、これにチッチが首をかしげる。


「何を遠慮しているのだ? 一緒に入ればいいだろう」

「いいのか!?」

「何の問題がある? 男同士で恥ずかしがることなどないだろうに」

「お……なにー!?」


 アナコンダがチッチの〝息子〟にせまり、


「お、お前、男だったのかー!?」

「う……うん……」

「じゃあ問題ないな」

「えぇ?」

「脱げよ。おら」

「きゃああぁぁぁああぁ」


 アナコンダはサオの服をひんむいた。

 サオは目に涙を浮かべ、胸やら股間やらを手で覆い隠そうとする。

 チッチは溜め息をつく。


「お前が勘違いするのも無理はない。たった一人の息子だが、この通り、軟弱なのだ。まったく。先が思いやられる」

「いや……結構立派な男だぜ……俺より大きいんだもん」


 チッチは無言で脱衣所を出て行った。

 同時に、サオは逃げるように浴室へ。

 アナコンダが服を脱いだのは、それからだ。

 タンクトップは雑に脱ぎ捨て、ズボンを慎重に下ろす。

 そしてポケットの中のニョルモルモと目を合わせ、


「意外な展開やな」

「俺、全然気づかなかった」

「わしもや。まあ、言われてみれば似てるわな、あの二人」


 金色のくせっ毛。

 ふさふさの長いまつ毛。

 碧眼。

 部分部分は確かに似ているが、チッチは厳格そうな顔つきであるのに対し、息子のサオは全体的にふわふわしている。

 一目で親子と見抜けないのも仕方なかった。

 だが、そんなことはどうでもいいくらい、アナコンダはがっかりしている。


「男だったなんてなー」


 女の子と間違えてしまうほど、サオはかわいい。

 しかし、その股には〝男〟がぶら下がっている。


「女の子の前だから緊張してたのに」

「いつも通りやったで。全然いつも通り」

「俺、変なこと言ってなかったか?」

「いっつも変なこと言うてるやん。文脈を無視して、熱血だーとか。自覚ないんか?」

「ニョルモルモ。恋ばなってわかるか?」

「やかましわ。いや、な。わしには猿人族(ヒューマン)の男女の見分けはようつかんねん。髪の毛の長さで見分ければええんか?」

「いや、それは人によるな。女の子っぽいっていうのは、なんて言うか、こう、柔らかそうで、いい匂いがする……って感じだよ」

「ふーん」

「で、どうする?」


 ニョルモルモを脱衣所に放置するのはリスクがあった。


「誰かが服を洗いに来るかもしれないしさ。初めて来た家で安全な隠れ場所なんて見つけられっこないだろ?」


 実際このあと入浴中に、メイドが濡れた服を持ち去り、代わりの服を用意してくれた。

 アナコンダの読みは的中することになる。

 となると、


「……そんなら……」

「しょうがないよな?」

「なんでちょっと嬉しそうやねん! くそっ。ええわ。もう勝手にせい!」

「おう!」


 アナコンダはニョルモルモを尻穴へぶちこんでから浴室へ。

 扉を開けた途端、熱気が舞い上がった。

 濃霧のような湯気が晴れると、浴槽の中にサオの姿が見えた。

 頭まで湯につかったのだろう、ほどいた髪の毛がしっとり濡れて、汗ばんだ肌にへばりついている。


(これはまずい)


 アナコンダは浴槽の中へ飛び込む。

 どぼーん、と湯が飛び散る。

 ただの湯ではなく、シャワージェルが投入されており、泡風呂になっている。

 おかげで、


(やましい状態になってもバレないぜ)


 計算外だったのは、師匠にボコボコにされた傷口に、泡が、


「染みるー!」

「大丈夫ぅ……?」

「熱血だ!」

「大丈夫ってことぉ?」

「サオは……大丈夫か。お前はボコられなかったもんな。あの厳しい師匠もさすがに我が子には甘いのか」


 すると、サオは悲しげに微笑し、


「ぼくはあきらめられてるだけだよぉ」


 サオは貴族の父と国家魔術師の母の間に生まれ、きゃしゃな体つきと穏和な性格は父から、魔術の才能は母から受け継いだ。

 ただし、魔術は使えるものの、まったくもってプロレベルではない。

 そもそも、母と同等の、もしくは母を超える才能を生まれ持ったとしても、


「国家魔術師になろうと思わないよぉ」

「なんでだ? かっこいいじゃんか」

「だって危険だもぉん。いつ死ぬかもわからないんだしぃ。それに、全然かわいくないじゃぁん!」

「……かわいく……ない?」

「ぼくは、かわいいお仕事したいんだぁ」

「かわいい……お仕事? にんじん畑でもたがやすとか?」

「全然ちがうよぉ!」


 サオが言うかわいい仕事とは、例えば、ぬいぐるみ職人やアクセサリー職人、絵本作家、花屋、他には服飾関係など。

 親の意向とはまったく異なる。

 最初こそ国家魔術師になれるよう厳しくしつけていたチッチも、やがては、


「お前のような軟弱者が国家魔術師になれるわけがない」


 とサオを見限った。


「だから、冷たくされても平気ぃ。ぼくはぼくのなりたい自分になるからぁ。きみは国家魔術師を目指すんでしょぉ? すごいなぁ~。だって、ママが弟子入りを認めたのは初めてなんだよぉ。すごく強いし、絶対なれるよぉ~」

「サオ!」

「な、なにぃ?」

「俺はアナコンダ!」

「だ、だからぁ……?」

「アナコンダって呼んでくれよ!」


 右手を差し出すアナコンダ。

 意図を察したサオが、嬉しげに微笑。


「……うん。アナコンダくん……よろしくねぇ」

「おう!」


 二人の手が結ばれた時。

 ついつい、うっかりだった。

 王都で初めて友達ができて、テンションが高くなった結果、アナコンダは勢いに任せて立ち上がってしまった。

 湯の中から現れたのは、


「あ……かわいいサイズぅ♡」


○o。.(○´∀`人´∀`○).。o○

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