第六話:判断
◇――side 変色――
「ただいま」
私は家へと入る。家に外傷は無かった、だからきっと家の中は無事なはず。
「あぁ、変色! 良かった、無事で良かった!」
帰って早々、お母さんに抱き締められた。あぁ、こっちも良かったお母さんが無事で。
「今凄いことになってるのよ、テレビでも大騒ぎ」
「やっぱそうなんだね」
リビングへと向かいながらそうお母さんと会話する。するとテレビの方から悲鳴とか怒号が聞こえてきた。
「ほんとだ……」
玄関からリビングへ移動した私はテレビを見てそう呟く。
ライブ中継しているみたい、街は破壊され、人々が死んでいる様子も映されている。カメラマンは必死に映さないようにしてるみたいだけどね。
「なにか食べる? もうそろそろ昼よ」
「そうだね、パスタ食べたい」
人の死んでる様子を見たあとだとご飯なんて進まないだろうけど、普通にお腹空いたので私はお母さんにパスタを頼んだ。
◇――side 黒白――
「ただいま。ママ、パパ帰ってきたよ」
ボクは変色と別れたあと、そのまま家へと帰っていた。道中ちょっと危なかったこともあったけど無事に家に帰ってこれた。
「ああ、黒白おかえり」
「無事ね、さすがうちの子!」
良かったママもパパも無事みたい。
「今大変なことになってるんだが……」
「身をもって実感したよ」
「そうよね~」
ほんと、ボクもちょっと怖かったよ!
「避難する人もいるようだが、どうする?」
するとパパがそんなことを言ってきた。
「避難はできるだけしたくなかったりするんだよね……」
パパにボクはそう返す。そう、ボクは避難がとても苦手なのである。この外見で性別が男って言うのが避難所で面倒になりそうでさ。
「黒白ならそう言うと思った」
「安心しろ、パパたちよく分からない力を使えるようになったからな」
「パパたちも?」
「ということは黒白もか」
どうやらパパとママも能力を使えるようになったらしい、能力が使えるようになる条件はなんなんだろう?
「うん、ボクも使えるようになったよ、これ」
ボクは二人に自分の能力を見せるため、黒と白のモヤモヤを両手に出す。
「やっぱり……ママは白」
「パパは黒だ」
「……見事に髪色と一致してるね」
パパの能力は黒を出す能力、ママの能力は白を出す能力。そしてボクは黒と白の二つ。
そうこれは髪色と一致してた。
まずパパは黒髪、ママは白髪。そしてボクはその二人の遺伝子を半分ずつ受け取ったのか黒と白の髪、なにか関係あるのかな。
「一度飲み物を買いに外出したときに化け物たちに遭遇したんだが、その時この力で化け物を退治できたんだ」
「その時パパちょっと怪我しちゃってね、そしたら私のこの力でパパのかすり傷を治せたの」
変色の言う通り、この黒と白の能力は闇と光なのかも、効果がそれっぽいし。
でも、なんか違うような気もする。
「だから避難したくないと言うなら良い、ある程度なら自衛ができるからな、ただ本当に危険と判断したらその時はな……」
「うん、分かってるよ。本当に危ない時は避難したくないなんて言ってられないよね」
二人は避難したくないというボクの思いを尊重してしばらくは避難しない選択を取ってくれた。
やっぱりボクにとっては大切な二人だ。二人が生きててよかった。
◇――side 変色――
「お父さん、大丈夫かな……」
「きっと大丈夫よ……きっと」
世界が大変なことになってる今、お父さんは仕事に行ってる。お母さん物凄く不安みたい、勿論私も。
「ねぇ、どこかに避難する?」
私はお母さんにそう聞く。この状況で避難所に避難することは果たして正解なのか、私には分からなかった。
「……そうねぇ。外は危険、だけど家に居ても危険はある、避難所の方が安全かもしれない。けど避難所まで行くことを考えるとね……」
お母さんも悩んでるみたい。それもそうだよね、こんなこと歴史上で一度も無いもん、皆どの行動が正解かはすぐに分からない。
「一先ず、避難するとしてもお父さんが無事に帰ってきてからね」
「まあ……そうだね」
結局結論はお父さんが帰ってきてから決めることになった。
お父さん、どうか無事に帰ってきて。
「ほんと無事で良かった!」
「変色、落ち着けって」
「まあまあ、それだけ心配だったのよ」
あれから数時間後のこと、お父さんが無事家に帰ってきた。いつもより帰ってくる時間が早いから会社の判断なのかも。
そして私はお父さんに抱き着いていた。年頃の女の子なのによくそんなことができるって? まあ私はスキンシップが激しい子なので!
そして三人で話し合った結果、私たちは一先ず家で待機するという選択を取った。今の状況で外に出るのは危険という判断だね。
◇
化け物たちはこの世界『ガイアノ』の世界各地で現れているらしい。戦争を行っていた国々では一時休戦をするところも出てきているとのこと。
そして私たちの国『ニチ』の政府も各地に自衛隊を派遣し始め、民間人の救助、化け物の殺傷を行うと声明を発表した。
「はぁ……ここも酷い有様……」
翌日の早朝。本当に早いよ? まだ太陽は出たばかり、日の出をこの目で見たんだから。
私は家をこっそり抜け出し、街を回っていた。勿論、黒白の姿で。ごめんね黒白、勝手に姿借りちゃって。
私の能力であればあの化け物たちにも変身できる。化け物に変身すれば化け物たちに仲間と思われるのか、街中を歩いていても彼らに襲われることは無かった。
けど、私は気づいたのだ、彼らを倒せるなら倒した方が良いことに。私が化け物たちを倒せば、どこかで救われる命があるかもしれない。私が化け物を倒さずに素通りしたことで、その化け物が人を襲ったらどうしようと、そう思ったのだ。
だからそれから私は化け物たちをできる限り倒して街中を進んでる。始めは一人で戦うのが怖かったりもした、黒白が近くにいるってのは、思ったよりも私の心の支えになってたみたい。
けど今日私はなんとか一人で化け物を倒せた、そうすると少しずつ自信がついてきて、一人で化け物を倒してからまだ短時間しか経っていないのにも関わらず、私は化け物を見つけると自分から積極的に戦闘するようにまでなった。
慣れって怖いね、いや、この場合慣れじゃなくて自信なのかな?
「あ、また暴れてる人がいる……」
それはそうと街中では、異怪物以外の問題も起きている。それが能力を得たことで傲慢になり、他人に迷惑をかけて暴れる人が出てきたことだ。
「どうしてこうなったんだろ」
それは私の口から零れ落ちた言葉。
世界の秩序は一瞬にして崩れた。私はすでに昨日の世界が恋しい。
異怪物は全然減ってない。なんなら増えてる。
つまりこれから世界はますます崩れていくということだろう……だからこそ犯罪が頻発する、更にそこに能力が加わったならば治安はすぐに崩壊する。
この一瞬で崩壊した世界で、私は……。
「うん、そうだね。あの世界が恋しいと思うなら私が」
私は、元の世界……元の『ガイアノ』に戻すために活動しようと思う。
これは私のエゴでもあるけど多くの人が望んでいるであろうこと。大切な人を容易に失ってしまう可能性がある世界なんて皆、望まない。
「待ってて世界、私が元に戻すから!」
私は空に向かって大声でそう告げた。
【あとがき】
序章はこれにて終了!
それはそうと『ガイアノ』、『ニチ』と何か既視感があるような……。




