第五話:帰宅
「そろそろ一周だね」
「ね、結局生きてる人は紺鼠以外見つからなかったね……」
「もっと速度落として」
「いや十分落としてるんだけど」
紺鼠を見つけてからもう数十分は校舎内を歩き回ってる。もうそろそろ一周だ。紺鼠にはなんとか歩いて貰った、だけど歩く速度が遅い……。
「……体育館はもう見た?」
「ああーそういえばまだ見てないや」
「最後にそこを見ようか」
紺鼠の質問で私たちは体育館を見ていないことに気づいた。ここ一周したら見よう。
◇
「ねぇ体育館から声聞こえない?」
「確かに……もしかして生きてる人が?」
「疲れた」
あの後校舎の中を一周したけど結局生きてる人には会えなかった。
だから最後に体育館へと来たわけなのだけど。
扉閉まってるし、中から少し声が聞こえる気がするんだよね。やっぱ皆体育館に避難していたのかな。
「扉開けてみよ」
「うん」
とりあえず扉を開けて中を確認しないとね!
「おお……見たところ数十人いる」
「ちゃんと生きてる人だ!」
「ふーん」
私はいざ扉を開けた、すると中にはざっと数十人の人がいた。こんなに生きてる人がいたなんて。
「おお、生き残りか!」
扉を閉めて体育館内に入っていくと一人の男性がこちらへと向かってきた。見たところこの学校の教師っぽい。
「はーい、生き残りです!」
「そうか、ここまでよく頑張ったな。もう大丈夫だ、ここは安全だ」
今は、だろうけどね。
「学校の生き残りはこれで全員ですか?」
「全員かは分からない、生徒を見つけ次第俺たちは避難誘導をした、だからここ以外にはいないと思うが……」
「なら多分大丈夫です、私たちが校舎の中を一周して確認したので」
「そうなのか!? なんて無茶を……いやしかし、ありがとう」
校舎内を周っておいて良かったー!
「今ここは避難所のようになっている、君たちはどうする?」
「どうするとは?」
「君たちは校舎を一周して無事だったんだろう? なら自力で家へと帰ることもできると思ってな、だからここに留まるのか、自宅へと帰るのか好きに選んでくれていい」
なるほど。なんというかちょっと無責任な発言だね。いやまあ変に『子供だから大人しくしてろ』って言われても困るけどさ。
「……二人ともどうする?」
家に帰るか体育館で過ごすか、私は二人の意見を聞いてみることにした。
「ここだと気持ちよく寝れないから私は帰る」
紺鼠は即答と。理由がなんかおかしい気がするけど。
「ボクも……両親が心配だから帰りたい、かな」
黒白も帰りたいと。
そうだね私も両親が心配だ、帰れるなら帰ってしまおうか。
「じゃあ、帰ろう!」
◇
「紺鼠一人で大丈夫かな?」
「あの能力だし、大丈夫だと思うよ、あの状況で寝てたし……」
「それもそうだね」
あれから学校を出て、私たちはそれぞれ自宅へと向かっていた。今私と一緒に歩いているのは黒白。
紺鼠はそもそも家の方角が違ったから学校出てからすぐに分かれた。一人で大丈夫なのかと不安はあったけど黒白の言う通り、紺鼠の能力は強力だから彼女はなんだかんだで傷すら負わず帰りそうな気もする。
「それにしても」
「うん、多いね」
学校の中から出て思ったけど、普通に化け物がうじゃうじゃいる。学校の中よりも遥かに多くいるよ。
「えい」
「や」
そんな状況ではあるけど、能力の扱いにも慣れてきたお陰で私たちはずっと無傷なままだった。淡々と化け物たちを処理していく。勿論私は黒白の姿でだけど。学校の中では戦う時だけ変身してたけど、外は化け物が多いから、私は常時黒白だ。
というか私たちもだいぶ慣れたものだよ、今では落ち着いて化け物に対応できてる。慣れって怖い。
「どこ?」
「ボクこっち」
「あ、そうなんだ、じゃあ私はこっちだからここでお別れだね」
十字路で、私は黒白にどの方向に進むのか聞いた、すると彼は私とは違う右方向に進むことがわかった。私は左方向だからここでお別れだ。
「送ろっか?」
「いや大丈夫だよ、黒白も両親が心配でしょ早く家に戻って」
心配して私を家まで送ろうとする黒白、だけど私はそれを断る。よっぽどのことが無い限り私は大丈夫だと思うからね。
「わかった、ありがと!……変色、気を付けてね」
「黒白もね!」
そうして私たちはここで別れた。この状況だから黒白と会うことは少ないだろうけど、なぜだかまたすぐに会えるような気がする。
それに黒白と連絡先は交換してるからね! 勿論紺鼠も!
◇――side 紺鼠――
今日は色々あった、変な生き物、私に近づいたら倒れる変な生き物、それと今日友達?になった二人。
「グゥ……」
「ェェェ」
今も、私の周りで変な生き物が倒れてる、この能力って言うやつ、良いや。あの二人みたいに動き回らなくても勝手に倒れてくれるし。
眠たい……。
「学校も終わったし、早くムゥの元で寝よう」
ムゥ、私の愛犬。いつも私が寝るとき優しく包んでくれる。彼の毛はふわふわで気持ちがいいからよく眠れる。
「帰ってきた」
やっと私の屋敷が見えた、朝は車で無理やり高校に送らされたから帰りも迎えを呼びたかったけど、電話に出なかったから仕方なく私は歩いて帰ってた。
「壁が壊れてる」
屋敷についたけど一部の壁が壊れてた。まあ中にはムンムンがいるし大丈夫でしょ。
「ただいまー」
誰も返事しない。
「お嬢様ですか!?」
あ、返事来た。奥からドタバタと走ってくる音が聞こえる。
「うん、そうだよー。ムンムン」
「お嬢様ご無事で、本当に良かった……!」
私の前に現れたのはさっき言ったムンムン、私の執事。名前は私が付けた、本名は覚えてない。
「そっちこそ無事でなにより、だね。私は疲れたの、ムゥとしばらく寝るね」
「お嬢様、それが……」
「なに?」
「その、ムゥ様が……亡くなられました」




