第四話:能力
「ねぇ、特殊な力って長いから能力って呼ばない?」
「能力?」
私たちはまだ校舎の中を歩き回って、生存者を探していた。この学校デカくてまだまだ探してないところあるんだよね。
未だに生存者には会っていないけど、黒白との会話は充実している。
そんな黒白との会話で、私は『特殊な力』の呼び名を『能力』と呼ぼうと提案していた。
特殊な力っていうと長いし……ちょっとダサいから……どうせなら格好いい呼び方が良いよねってことでさ。
「能力……うん、格好よくて良いと思う」
「だよね! じゃあ私の能力は『変身する能力』黒白は『闇と光を操る能力』とかかな?」
「ちょっと厨二っぽいけど、多分そんな感じだと思う!」
実際黒白の能力が闇と光を操る能力なのかは分からないけど、結構いい線いってると思う。
で、能力の話になると。
「問題は能力とは何なのか、そしてどうして突然使えるようになったのか、だね」
「そうなんだよねぇ……」
化物たちが現れたのと同時に現れた能力、この二つは関係性があるように思えるけど…………うーん! 分からない!
「……ねぇ、話変わるけど。体怠くない?」
能力の話から一変して、突然そう言う黒白。
いや、確かに少し怠いような。
「いや、でも気のせいかな?」
「変色も感じてるんでしょ? じゃあ気のせいじゃないんじゃない……?」
気のせいじゃないとしたらこの怠さは何だろう?
「うん?……ってなにこれ!」
廊下を歩き、左右にある教室の中に生存者が居ないか確認しながら、この怠さの正体について考えていた私、しかしその時私はとある教室を見た、そしてその教室内の光景に思わず私はそう声を上げた。
「化物たちが……いっぱい倒れてる」
その教室の中を見ると、様々な化け物たちが床に倒れ伏していた。化け物たちは皆同じ方向に頭を向けて倒れている。
「……あれ人だよね、生きてる?」
その化物たちの頭が向いている方に視線を向けていくと、やがて一人の女の子が目に留まった。
その女の子は、僅かに青みがかった暗い鼠色の長い髪をしていて、机に突っ伏している。学校関係者ではないのか、青色のワンピースを着ている。いやなんで学校関係者じゃない人が?……いや避難してきたのかな。あと生きてる?
「生きてるみたい、寝息が聞こえてくる」
「ほんとだ……こんな状況で良く寝られるね……」
黒白の言う通り耳を澄ませると女の子の寝息が微かに聞こえてきた。ということはこの化け物たちは全部あの子がやったってことかな? そうだとしたら凄すぎるけど。
「とりあえず……起こそうか」
「そうだね」
化け物たちのことも聞きたいし、やっと見つけた生存者だ、少しお喋りしたい。
そうして私たちは女の子に近づいた。
「え、だる……すぎ」
「な、にが」
しかし私たちはそこで、あまりの体の怠さに膝をついた。気を抜くと意識を失いそう。
「そういう、こと……ね」
なるほど、化け物たちが倒れていた理由が分かった。
「あの人に、近づくと、こうなるのかも、ね」
黒白も分かったようだ。
そう、多分これはあの人の能力、効果は近づくと体が怠くなるようなものなんだと思う。そしてあの人は寝ながらそれを発動させてる。なんてやつ。
化け物たちはあの人に近づこうとしてこれで倒れたんだ。
「……ぅく、起き、て……!」
そうとなればあの人を起こしてこれを止めさせないと、私たちもこの化け物たちと同じ末路を辿っちゃう。
「起き、ろぉぉぉ!」
私は頑張って声量を出し、そう呼び掛ける。
「……う、ん?」
起きた!……っておいまた寝ようとするな! 今こっち見たよね!?
「起き、て!」
「……うるさい」
やっと起き上がった!
「あの、あなたの能力、だよね? 使うの止めて貰って、いい?」
起きた彼女に私は能力を使わないように言う、けど。
「能力……?」
彼女は何のことか分かっていない様子だった。そうだった能力とか私たちが決めた呼び名じゃん。
「あれだよ、変な力! 特殊な力!」
黒白も必死に伝える。
「うーん?……あぁ、確かに何か感じる、これを止めれば良いんだね……」
やっと分かったみたい。というか何か感じるって今気づいたの? じゃあ今まで無意識に能力を使ってたってこと!?
「うぅん……こんな、感じ?」
彼女がそう言うのと同時に、先程まであった怠さが九割ほど無くなった。
「おお、体が動く!」
体が動くことを実感し私は思わずはしゃぐ。
「でも心なしかまだ怠いような」
「あ、分かる」
黒白はまだ怠いって言うけど実は私もまだ少し怠さがあるんだよね、一割ぐらい。
「私はもう知らない」
全ての元凶の女の子を見るけど、彼女はもう能力を使っていない様子だった。
「……うーん余韻的なものがあるってことかな?」
能力の得体が知れなさすぎるから、効果がしばらく続くっていう能力があってもおかしくはない。
「ヴ、ヴゥ……」
「ァァ、ァ……」
「あ、私たちが動けるようになったてことはこの化け物たちも動けるようになったってことじゃん!」
「じゃあ、殺そう」
「君容赦ないね……」
怠さの元凶である女の子は感情が無いのかってぐらい容赦なく殺そうとする。
でも、今のところ殺す以外選択肢は無いけどね。
「全部死んだ」
「多すぎて結構時間が掛かったね」
「今更気づいたけど化け物たちの血の色って青なんだね」
数分かけて、私たちは化け物を全て殺し、それぞれ殺した感想を呟いていた。まあ殺したのは私と黒白なんだけどね、元凶ちゃんは能力があれだから。
化け物を殺した感想、うん今日いっぱい殺してきたけど勿論あんまり良い気分じゃなかったよ。
「そういえば君に対して自己紹介をしてなかったね、私は七光変色、好きに呼んでね!」
「僕は二恵黒白、黒白って呼んで!」
「……私は……君銅陀紺鼠。この苗字長くて嫌い」
私たちは元凶ちゃんこと紺鼠ちゃんに自己紹介をした、すると彼女も私たちに自己紹介を返してくれた。
紺鼠ちゃんは背が低い、160cmも無さそうだ。あと今度は女の子っぽいね、小さいけど胸はある。
「どこ見てるの」
「あ、いや……な、なんでもないよ~……あはは」
やばい、胸を見てたのバレてた! もしかして変態って思われた?
「まあ、いいけど……」
許された!
「眠そうだね……そういえばなんでここで寝てたの?」
さっきから眠そうに話している彼女を見たのか、黒白が彼女にそう聞く。
「眠たかったから」
それに対してただ一言、それだけ返す紺鼠ちゃん。いやいや。
「今、眠たいで寝れる状況じゃないでしょ!」
こんな世紀末みたいな状況の学校で寝るか!
「コホン……で、紺鼠ちゃん、家はどうしたの? 学校に避難してきたんだよね?」
とりあえずこのまま同じ話を続けても埒が明かないから、私は彼女に気になっていたことを聞く。
見た目からして彼女が中学生ぐらいだと私は思った、ワンピースを着てるからこの高校の生徒じゃないだろうし。だから私はどうしてこの学校に来たのかを聞いたのだけど。
「避難じゃない。この高校に通うために居る、今日初めての高校」
「……は?」
「え?」
……ちょっと待って、誰がワンピースで高校に通うんだよ。というか同い年!?
あ、ちなみに黒白も同い年みたいだよ、色々話してお互い気づいた。
「紺鼠ちゃ……紺鼠、ワンピースで高校通うのは流石に無くない?」
ちょっと紺鼠さん! この学校、男女どっちも男子制服と女子制服を自由に選べたり、色々自由な所はあるけど流石に私服登校は許されてないよ!?
あ、そうそう、同い年なら私は呼び捨て主義なんだよね、いやそんなことどうでもよくて!
「制服、めんどくさかったから」
「それで許されるんだ」
「いや許されないと思うけどね……」
めんどくさいで着てこないなんて、なんて娘だ。
「ま、まあ一先ず紺鼠の話はここまでにして、また生存者を探しに行こう!」
多分これ以上話してるとまた理解できない話が出てくるからね。紺鼠が見つかったならまだ生存者は見つかるはず!
「そうだね……」
「歩くの? めんどくさい……歩きたくない」
「いーや、歩いてもらうからね」
「やーだ」
紺鼠ってもしかして、だいぶめんどくさがり屋?




