第二十八話:ノータ
「これで僕の知る限りのことは以上だ」
「ありがとね」
「償いとしてはまだ足りないよ」
リーズ、お前良い奴だね。
「……君も、手伝ってくれないか? 人間と手を取り合おう」
するとリーズは今日私たちが会った『アール様の命令です!』みたいなことを言ってたノータの方を向いてそう告げた。
そういえば居たね、普通に忘れてた。
「……私は」
「僕が話してるところを見て分かっただろう、人間は僕たちとそう変わらない」
「私は、それでもアール様側です」
ノータの意見がどうなるかとワクワクしてたら、普通に侵略側に賛成の意見は変わらないようで横転。
「……そうか」
リーズも心なしか悲しそう。
そうだよね、同じ生命で分かりあえないなんて悲しいよね。
「まあ私たちだけで人間の判断はできないか」
でも私たちだけを見て、人間は信用できるって考えるのは危険な考え方だ、だから全然このノータの答えは納得できる。
「実際悪い人もいるし……変なのもいるもんね」
そう言う黒白。
……直近の変なのと言えば
『マイプリンセスぅッ!』
あいつだね。
「侵略側に賛成って言うのはまだ良いとして、人を傷つけるようならここで殺すかなんかしちゃうけど?」
納得できるとはいえ、こちらに害のある行動、人を襲うことなどをするのなら殺す。害のある行動をしないのであれば見逃す。
そのことを一応このノータに伝えておく。
「勘違いしないでもらいたい、未だ私はアール様側ですが、あなたたちと敵対したいわけじゃない。私も平和的に解決できるならそれが良いと思ってる」
お?
「だから、しばらく人間を観察させてもらう。その間、こちらからは人間に危害を加えないと約束しよう。勿論自衛はするが」
おお!
「良いよ! まずは人間を知らないとだからね!」
まさかのこのノータも平和的解決に前向き!
「……一応名乗っておこう、私はクルラ。しばらく人間を観察させてもらおう」
そうしてノータはクルラと名乗った。
クルラはカマキリがヒト型になったような姿をしている。
前だったらこれにキモいとか言ってたんだろうけど、こんな感じのやつをもういっぱい見たからだいぶ慣れてきて、今ではそこまで嫌悪感は湧いていない。
慣れって本当に怖いね。
「よーし、これでまた情報ゲット!……ってあれ、なんか私たち情報集めすぎじゃない?」
こうして新たにリーズから重要な情報を入手した私たち、だけどそこで私は、自分たちが情報を集めすぎていることに気が付いた。
そう、なんか都合が良いなって思った。
「確かに」
「都合が良いに越したことは無い」
「たまたま、運が良いだけじゃない?」
「あー、確かに運が良いだけってのはあるかも、私運良いし」
紫の言う通り、単に運が良いってだけってのもあると思う。そう、不思議と私って昔からずっと運が良いんだよね。
……まあいいか。
「……そういえばリーズはなんで他の人じゃなくてボクたちにこのことを話したの?」
そこで黒白がリーズにそう聞く。
「あ、確かに……なんでなの?」
確かに今回の情報は、私たちが情報を求めて動いた結果得られたものじゃない、リーズの方から来た。
他の人じゃなくて私たちに話したのはなぜなのか。
「あぁ、カウダからあなたたちのことを教えてもらったんだ」
◇
「やっほー、巨人」
「私は巨人などという名ではない、カウダだ」
「知ってる」
はーい、こちらは前戦った巨人のカウダ君でーす。
ちなみに会うのはあれ以来。
どうやらリーズは、この巨人もといカウダから私たちのことを聞いたから来たらしいんだよね。カウダの話を聞いて、私たちなら話を聞いてくれるだろうと判断したんだって。
全く、この巨人は地味にありがたいことをしてくれるね。
「どう? 人間と仲良くできてる?」
「あぁ。お前たちに言われた通り、こちらから攻撃はしてないぞ」
「自衛隊の人たちとも色々話したでしょ? どうだった?」
「そうだな、あまり私に好意的な視線を向けるものは居なかったが、そこも含めて『あまり私たちとの違いを感じられなかった』と言っておこう」
「やっぱりそう思った? 私たち似た者同士なんだよね」
うん、私たちは分かり合える。だけどそうか、好意的な視線は感じられなかった、かぁ……当たり前ではあるんだけど、色々思うところがあるなぁ。
「して、何の用だ? リーズ様を連れているようだが」
「いや、リーズが君から私たちのことを聞いたって言ってたから。一応お礼しとこうかなって」
こちらもノータの事情を知れたからね。
「私はただ、リーズ様に『話を聞いてくれそうな人間はいないか』と聞かれたからお前たちの話をしただけだ、礼はいらん」
「僕からも、ありがとう、カウダ」
「……リーズ様のお役に立てたようで何よりです」
流石に王子の礼は素直に受け取るらしい。
「……で、本当はもう一つ用があるんだよね、というかそっちが本命」
はい、ここまでは"ついで"ね。実は本命の用件がある。
「そうか、なんだ?」
「単刀直入に言うね。ガイアノ侵略を止めるの手伝って」
はい、これが本命。
今回私たちがこの場所へ来たのは、カウダにガイアノ侵略を止める協力をしてもらうためだ。
リーズが言うには、カウダは割とノータの中でも力を持つ者らしい。だから、そのカウダがこちらに協力してくれたら、他のノータも侵略をやめるという選択をするかもしれない、そう思ってのこと。
「うーむ……」
「……不満?」
おや? カウダ君の反応が煮え切らない。カウダのことだから、てっきりすぐに協力をしてくれるものだと思ってたけど。
「不満……そうだな。私は争いが好きだ、それに私としてもアール様には色々恩がある、故にあまり反逆のようなことはしたくないと思っている」
あぁ、争いが好きなのは分かるけど……恩があると来たか。
「へぇ……え、だめ?」
「カウダ、今の父上のままで良いのか? あれはもはや昔の父上と別人だ」
「……私も最近のアール様には思うところがあります。しかしですね……」
ふむ、結構葛藤してるみたい、あと一押しかな? 割と昔のアールは慕われてたんだね。
「というかこの前、『敗者だから従う』みたいなこと言ってなかったっけ?」
「それとこれとでは話は別だ。だが、そうだな……もう一度お前たちが私に勝ったら良いだろう」
え、またお前と戦えって言うの? あの戦いをもう一回やるの?
「それとこちらから私と戦う者を選ばさせてもらう」
「あ、お前紺鼠を抜く気だね?」
「そうだ、あれはもはや戦いではない。私が選ぶのは七色のお前と、白黒のお前の二人だ」
「ボクと変色だけ?」
おい、まじであの日の戦いじゃんか。
えー、絶対怪我して痛いだろうから嫌なんだけど。無駄な争いは止めようよ!
「そうだ、文句を言うでない。この侵略を止めるとなると、必ず戦闘が起きる。私程度、お前たち二人で倒せなければ、侵略を止めるなど夢物語だぞ?」
「私たちには言葉があるじゃん、それで――」
「それが夢物語だと言っているのだ。第一、言葉で解決していたら紛争など起こらぬ。このガイアノでも争いは起きているだろう?」
「それは……」
それは、そうだ。カウダの言う通りだった。
ガイアノでも、ノータが侵略を始めるまで戦争をしていた国があった。
言葉で解決は、夢物語。その通りかな……。
思えば私は割と夢物語を語ってる節がある気がする。
「……だからこそ、最低限の力は必要だ。言葉で、解決したいのだろう?」
「!」
カウダ……お前!
「武力行使している相手を対話へと持っていくには、こちらも拮抗するだけの最低限の力が必要。それが道理かぁ」
……黒白の言った通り、悲しいがそれが道理、当然のことなのだろう。対話には力が必要。
え? 後方腕組で国の自衛隊さんたちに戦闘を任せればいい? いや、流石にそんなことしてられない、能力があるんだしできることはしたい。
……誰かが言ってたっけ? 『力のない正義は無力』みたいなこと。いつか、力、武力が無いと対話ができない、なんてことが無い世界にしたいな。
これもまた夢物語だろうか? でも、挑戦する価値はあると思う。
「……分かった、私と黒白でお前を倒す、今からやろ」
「良いだろう」
うん、やってやるわ!
これは試練! 夢物語を現実に変えるためのね!
「黒白、準備は良い?」
「うん!」
黒白もやる気に満ち溢れている。よーし、行くぞー! カウダになんてパパッと勝っちゃおう!
「その意気だ、来い!」
「二人ともがんばれー」
「負けたら承知しないよ~!」
「二人とも、応援してる」
そうして、流れるように突然と戦闘は始まり。紺鼠、紫、リーズの声援を受けながら、私たちはカウダへと向かって駆け出した。




