第二十七話:真相
ガスノータは遥か昔から他種族を受け入れてきており、様々な種族が共存して過ごしている惑星だ。
そう、他種族を受け入れていた。
あの事件が起こるまでは――
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「まず僕の父は、ガイアノ侵略を始めた僕たち『ノータ』の王。アールという」
「ノータ?」
なんかもう色々突っ込み入れたい。
「あぁ、あなたたち人間は僕たちのことを『異怪物』って言うんだったね。でも、僕たちは生物名をノータと名乗っているから、そう呼んでくれると嬉しい」
「侵略してきたやつが何を言ってるの?」
「紫、喧嘩腰にならないで」
「……いや、良いんだ。僕たちが悪いんだから。それにそちらからすると突然やって来て自分たちを襲う姿形が違う生き物。まさに『異怪物』って感じだからね」
「……今はその話を置いておこう。で、じゃあリーズはノータの王子様ってこと?」
「そういうことになるね、といっても僕は末っ子だけど」
なんと、目の前の猿は異怪物もといノータの王の子供だった!
だからあのノータは跪いていたわけなんだね……。
今後『異怪物』と『ノータ』どっちで呼ぼうかな。
正直異怪物呼びに慣れちゃった。けどノータって呼んで欲しいと言うなら、そう呼ぶように心がけはしておこう。折角友好的に接してくれてるんだし。
「でも、なんで王様の子供が侵略に来てるの?」
「そこも説明する。だけどまずは僕たちノータとガスノータについて話すよ」
お願いします。
「よろしく」
「わかりやすくね~」
「うん。ガスノータは様々な種族のノータが共存して過ごしている。あ、『ノータ』はガスノータに住んでいる住民の生物名でね、ノータは一種族だけじゃないんだ」
「ふーん」
ガスノータでのノータは、ガイアノで言う、ガイアノに住む生物のことをガイアノ生命体って呼ぶのと同じ感じ、ってことかな?
「ガスノータは広大な惑星だ。だから他の惑星からの移民もよく受け入れていたんだ、"今までは"ね」
なんですと?
「今まで、ということは今は違うの?」
黒白がそう聞く。
「うんそうなんだ」
「……なんで?」
異怪物、ノータが今まで他惑星の移民の受け入れをしていたってことは驚き。ということは、ノータは本当に私たち人間が持っているような温情があるわけだ。
でもそれは"今まで"の話で今は違う、と。
ならそこの理由がガイアノ侵略に関わってるのかな?
「ある時、小さい惑星の知的生命体から、移民の受け入れをお願いされたんだ。歴代の王がやってきたように、僕の父もその移民を受け入れることにした。だけど……」
「そこでなにか問題があったわけね」
私はリーズの言葉に続くようにそう言う。
「うん、そうなんだ。その種族はどうやらガスノータの乗っ取りを計画していたみたいでね。その計画に巻き込まれて僕の母、セーラは命を落とした」
なるほど。
「僕の父は悲しんだ、そして憎しみを抱いた。だから父はすぐさま兵を率いて、その種族を滅ぼした。ここまでは報復をしただけで、母や数百のノータが亡くなった以外は問題無かった。だけどそこから父は荒れた」
そりゃ最愛の人が亡くなったら、荒れるよね。それを分かっていてなぜガイアノ侵略をしたのか。
「僕たち子供にも当たるようになり、ひたすらに強さも求めてきた。多分自身の妻を守れなかった悔やみから来たんだろうね。そしてもう新たな生物の移民を受け入れないと宣言もした」
ほうほう。
「でも、これだけだったら。ガイアノ侵略の理由にはならないよね?」
受け入れないってだけで、積極的に他種族を滅ぼすわけじゃないもんね。
「うん、これだけだったらね」
つまりガイアノ侵略の理由は他にあると。
「ここからはなぜ父がガイアノ侵略を行ったかの理由を話す、良い?」
「うん」
というか、それを一番聞きたい。
「まず、理由の一つ目が、『ガスノータの土地が無くなってきた』から。ガスノータは移民を受け入れ続けてきた、それにガスノータの人口も年々増え続けていたんだ。他の惑星も移民を頼むぐらいだから、その惑星には民を送れない。となると新しく住める惑星を探す必要があったんだ」
ふむふむ。
「そうして、理由二つ目。予言だった」
「予言?」
「そう、ガスノータには有名な占い師が居てね、ある日その占い師が顔を青くしながらこう言ったんだ。『世界を破滅に追い込む恐ろしい災厄が訪れる』ってね」
「災厄?」
『世界を破滅に追い込む恐ろしい災厄』……それはまた別で気になる。
「そう、詳しいことは分からないけどそう言ったんだ。けど残念なことに彼女の占いはほぼ確実に当たる、だから父はその『災厄』に備える為に、新たな資源を求めた。『ノータが住める土地の確保』と『災厄に備えた新たな資源の確保』、この二つから父は新しい惑星を探すことにした」
なるほど。
「そうして見つけたのが『ガイアノ』ってわけね」
「うん、ガイアノはノータに必要なアクリエアラが空気中に存在してなかったけど、ノータが関わることで空気中にアクリエアラを馴染ませることができると分かった。それに何より資源が豊富だった。だから父はガイアノを狙った」
なるほどなるほど。
あ、だけど。
「人間との協力は選択肢に無かったんだね?」
私はそこで少し気になったことをリーズに聞く。まあ大方、裏切りを恐れたんだろうけど。
「うん、父はまた裏切られることを恐れた。それに、大部分のノータも侵略に賛成だったんだ、彼らもあの出来事のように、裏切られるのを恐れたから」
あー、だから話を聞かないノータが多かったわけか、他種族による裏切りを恐れたのはアールだけではなかったと。
「はー、納得しないけど納得だわ」
"侵略を行った理由"には納得できた、けど。
「うん、侵略を始めた理由には納得いくけど。ガイアノが侵略されるのは納得いかないよね」
「納得いかない」
「異怪物は考えが浅いねー?」
そう、第一過去にノータを裏切って乗っ取り計画をしたのは私たちガイアノの生き物じゃないんだから、関係ない私たちを巻き込まないで貰っていいかな? って感じ。
「……本当にすまない」
「……」
「……」
その時、私たちの間にとても気まずい空気が流れた。謝って済む話じゃないんだよねぇ。
「……はぁ、許さないけど。この争いを止めるのに協力してくれるなら、今は良いよ」
「あぁ勿論だ、協力する。だからこうして僕はここであなたたちにこの話をしている」
いや、そうなんだけどさ。
「はぁ、もしかしてあなたは元から侵略反対だった感じ?」
「うん、僕は反対だったよ。大切な人を失った悲しみは覚えてるからね」
「ふーん」
やっぱノータとは仲良くできてたよねぇ……はぁ。
「あ、じゃあなんで王の子供のあなたがここに居るわけ?」
「それは……父に追い出されたというか……」
あ、追放系?
「その、僕は弱いんだ。兄や姉はみんな父の期待通りに強くなってる、だけど僕はその期待に応えられなくて……そのうえガイアノ侵略によく口出ししてたから……ね」
あー、そりゃそうなるか。
「……とりあえずリーズが悪い奴ではないのは分かったよ」
まだ色々思うところはあるけど、ここでリーズに言っても仕方が無い。
……だけどこれ、争いを止めるの相当大変そうだなぁ。




