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紅万紫千  作者: ぬい葉
第二章:結束

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第二十五話:それぞれの問題

 ◇――side 紫――



「おとうさん……おかあさん……」


 わたしの父と母はわたしが八歳の時に亡くなった。

 交通事故、わたしはたまたま助かったけど二人は即死だったらしい。


「う……うぅ」


 あの数十日間のことは今でも鮮明に覚えてる。


 燃える車、動かないわたし。入院生活、親の死を知った瞬間。

 色んな人のお陰で建てることができた両親のお墓に、墓参りに行って泣いた日。


 わたしの祖父母は、父方母方共に既に亡くなっていて、知人や親戚はわたしを養えないと言った。だからわたしは児童養護施設に入れられ、これまでそこで過ごしてきた。



    ◇



「紫お姉ちゃん、おかえり!」


「お、勇太(ゆうた)、ただいま。悪さしてないよね?」


「も、もちろんだよ!」


「えー? ほんと~?」


「ほんとだってば!」


「ふふ、ごめんごめん」


 わたしは今、児童養護施設で共に生活している九歳の勇太に帰りを迎えられていた。と言っても、ここは避難所。

 そりゃそうだ、こんな状況で避難しないほうがおかしい。ちなみに変色とは違う場所。


 わたしは児童養護施設で過ごしてる子たちには優しく接せていると思っている。まぁわたしが児童養護施設で生活し始めたばかりの頃は、今の初対面の人に対する態度と同じ感じだったけど。


 あの頃は両親も知り合いもいないところでの生活が不安で仕方が無かったなぁ、だから私は棘のある言葉で人を遠ざけようとしてた訳なんだけど。


「紫ー! 勇太ー!」


「あ、呼ばれてる。勇太行こうか」


「うん!」


 なんでか分からないけど、久しぶりに嫌な過去を思い出しちゃった。


 今は割と幸せなんだから過去を考えるんじゃなくて、この幸せを守ることを考えないと。



    ◇



 ◇――side 紺鼠――



「ただいま、ムゥ……」


 変色たちと別れて、私は屋敷へ帰ってきた。

 そしていつものように、自室にあるムゥの仏壇に挨拶する。


「ムゥ……疲れた」


 前までは私がこう言ったら寄り添ってくれた、そして一緒に寝てくれた。それなのに、もういない。


「仇は、討つから……あ、でも変色は争いをしたくないって、言ってたっけ?」


 私はムゥの仇を討ちたい、だからこの惨状を引き起こした原因であるアールを殺したい。

 けど変色は平和的に解決することを目指してる。私も勿論、平和的に解決できればそれが良いと思ってる。


 ムゥの仇は討ちたい、アールを殺さないと満足しない。けど変色も大切、あまり悲しませたくない。


「ムゥ……どうすればいいと思う?」


 試しにムゥに聞いてみる。


 ……なんとなく、『寝たら良い』って言われた気がした。


「そうだね、こういう時はそれが一番。じゃ、おやすみ」


 そうして私はそそくさとベッドに入り、そのまま眠った。


 ……新しい抱き枕欲しい。



    ◇



 ◇――side 黒白――



「水はどう?……」


「まだ大丈夫。だけどそろそろ避難かな~?」


「そっかぁ」


 水道が止まってから我が家は、家に用意してあった保存水で生活をしていた。


 だけど、そろそろ水が無くなるようで、お母さんの口から避難という言葉が出てきた。


「ただ、この問題を解決するために国や市が動いてるらしいし、避難しなくて良くなる可能性もあるね」


「そうなってくれると良いんだけどなぁ」


 そう、今全国各地で起きている水道問題や停電などをなんとかしようと、国や市が、水道工事だったり停電からの復旧工事を試みてくれているところがあるらしく、それで既に復旧したところもあると話題になっている。

 だからボクたちが住んでいるところも早いうちに水道の問題が解決する可能性はある。


 それにニチ国は、ボクたち経由で対話できる異怪物を知ったからか、異怪物をなるべく捕獲する方に切り替えたそうで、変色が言ってた対話への実現が少し近づいてるようにも思える。他の国にも情報は伝わってるらしいし。

 でも、今のところ異怪物に恨みがある人が多くて、政府のその考えに反対する意見の方が多い。やっぱりそんなに簡単にはいかないよね。


 けど、状況は良い方に行ってる。

 全国各地が前代未聞の状況で対応に追われているのに、一ヶ月ほどでここまで進展するなんて。ボクたちの情報があったとはいえ、国は相当頑張ってると思う。


 というかもう一か月!?



    ■



 ガイアノ各国は、大量の死者を出しながら異怪物の対処をしていた。

 しかし異怪物についての理解を深める国や、能力の研究を行う国などが現れ始め、少しずつだが人類は立て直してきていた。


 また、世界中の研究により明かされていく真実が、次々と『千紫万紅』の株を上げていくことになり、既に一部では、噂から彼女らを英雄視するところも出始めただとか。



「総理、『千紫万紅』については如何いたしますか?」


「うーむ……どうすれば良いんだ……?」


(相手は高校生だからなぁ……国の新しい調査部隊に任命、なんてことはできないよなぁ)


 そのためニチ国は彼女らの扱いに難儀し始めていたのであった。

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