第二十三話:新メンバー
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「アール様、戻りました」
「……ご苦労」
紫から逃げたドリーノ、彼は今異怪物の王、アールと対面していた。
「状況はどうだ?」
「はい、現在ガイアノ空気中のアクリエアラが増幅しています。直に皆正気に戻り、侵略の命通りに動くでしょう」
「そうか、ならばこのまま更に兵を送り、いち早くアクリエアラ濃度を高めろ」
「……はい」
ドリーノは現在ガイアノにいる異怪物たちの様子や、状況をアールへ伝えた。
それを聞いたアールは、すぐにドリーノへ命令を下し、下がらせようとする。
「……その、アール様」
この場から去り、命を執行しようとしたドリーノ。しかし彼は一度そこで立ち止まり、振り返ってアールへそう言葉を発した。
「……なんだ」
「……その、ガイアノの人間は奴らのような生物ではなさそうです。今更になりますが、侵略を止めにしませんか? 試しに友好関係を――」
「ならん!」
「っ」
ドリーノは紫との対話で人間というものの存在の理解を深めていた。
そこで何かを感じたのだろう。だからこうしてアールへ侵略の中止を提案した。
しかし、アールはそれを一蹴する。
「奴らも始めはそうであった、友好的に思わせてきた。そしてこちらが油断した隙に……くっ!」
「アール様……」
「信用なんて、できないのだ……もう二度とあのようなことはあってはならぬ」
「……わかりました。では、私はこれで」
アールに提案は無駄だと感じたのだろう、ドリーノはそうして、悲哀を漂わせてその場から去った。
(あぁ、もう何が正しいのかわかりませんね)
元々侵略には乗り気でなかったドリーノ、彼は今回紫との対話で人間の一部を知った。
故に彼は葛藤する。
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◇――side 変色――
「はぁ……じゃあ帰ろっか」
「え、もう帰るの?」
「うん、紫からいっぱい情報貰ったからね……"一応"感謝しておくよ」
「えー、"ありがとう"すら言えないのー?」
「ありがとう!」
いやー本当に助かった、本当に本当に。
この情報は自衛隊のみんなに伝えておこう。多分国の方に伝わるでしょ。
いやー本当に本当にこのメスガキは!
◇
「で、なんであんたは私たちと居るわけ?」
あれから私たちは電車に乗って地元へと帰ってきた、のだけどなぜか紫が一緒に居る。
「言ってなかった? わたしも地元がこっちなんだけど?」
「そんなの聞いてないよ?」
初耳、まさか紫の地元が私たちと同じところだったなんて。
「だよね! 言ってないもん!」
「だる」
それはそうと、もうこいつと会話したくないです。助けて。
「はぁ……まだ昼だから、一旦学校に寄る?」
気持ちを切り替え、私は黒白と紺鼠にそう聞く。
割と学校での活動って楽しいんだよね。なんか部活動みたいでさ。
「いいんじゃない?」
「帰る」
「意見分かれたね」
紺鼠は帰りたい、と。
「うーん、じゃあ今日は解散にしようか」
少し悩んだ後、私は解散を提案する。
私も今日は疲れたし、主に紫でだけど。
「私の意見が通った!」
「いや、私は二人のことをちゃんと尊重してるけど?」
「え、今まで無理やりが多かった」
「そんなことは……ないよ」
うん、私は黒白と紺鼠の二人を平等に扱って、尊重してきた。うん大丈夫。
「黒白もいい?」
「うん」
「おっけーじゃあ今日は解散! ほら、紫も用が無いなら帰りな!」
「……もちろん! そうさせてもらうね!」
ということで今日は解散。
その後私は避難所へ戻り、自衛隊の人たちに今回の情報を話したり、雑談をしたりして一日を終えた。
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「総理、また例の『千紫万紅』という高校生らの活動グループから情報が入りました」
ここは、ニチ国総理官邸、総理執務室。
「またか。確かに前回の情報は納得できるものだった、しかしその千紫万紅という者たちは本当に信用できるのか? ふざけてデマの情報を渡してるわけじゃないだろうな? あまりにも情報を得る速度が速すぎる」
この場にはニチ国首相と、その補佐官の一人が居合わせていた。
「私は信用できると思っております、前回の情報にあった巨人についても自衛隊が存在を確認し、対話もできたそうです。そしてその巨人が話す情報と千紫万紅が告げていた内容は一致していました。巨人の方も、嘘をついている素振りは見られなかったそうです」
「なんだ、それを先に言ってくれ」
「すみません、伝達順序を間違えました、以後気を付けます」
「よろしい、では早速その今回の情報とやらを聞こうか」
(ただ、異怪物の告げる情報が真実なのかは定かじゃないがな)
現在二人が話している内容は、千紫万紅についてである。
変色が自衛隊に告げた内容はすぐに国へ伝わり、こうしてニチ国の首相へ届いている。
始めは高校生がお遊びでデマを流している可能性を考えていた首相であったが、今回補佐官から告げられた内容によって、彼は千紫万紅を少し信用し始めるのであった。
「はい、まず――」
首相に促されたため、早速補佐官は千紫万紅からの情報を彼へと告げた。
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「で、なんでなんであんたはここに居るわけ?」
あれ? 昨日も同じこと言ったような?
「なにって、わたしが特別に、あなたたちの活動を手伝ってあげようと思ってね!」
ここは西野原高校の校門前。そしてなぜかこの場所に紫がいた、だから私はさっきああ言ったわけなんだけど。
「紫の助けなんていらなーい!」
帰れ! お前なんていなくても問題ないわ!
「いや、人が増えるのは良いと思うけど。紫も根は良い人そうだし、何よりもボクたちよりも情報取集が上手だったじゃん」
「くっ……!」
黒白の言う通り過ぎて辛い。
「いや、ここは高校だよ? 無関係者が立ち入りするなん――「あ、わたしここの生徒、高一だから安心して!」――いやァァァー!」
こいつと同じ高校? これから一緒にこの学校で過ごすの!?
死ぬ!
「……ふ、ふん。なら良いよ。千紫万紅に入れてあげる。丁度紫も名前が色だし」
「やったね!」
あぁ……許可しちまったぜ。
けど、本当に黒白の言う通りだから、紫が一緒に活動してくれるのは千紫万紅にとっては良いことなんだよね……だよね?
そう、私が我慢すれば良いだけ。全く、リーダーは辛いよ。
「じゃあいつもの会議室に……うん? 誰かいる?」
新メンバーも増えたし、そろそろいつもの会議室に行こう、そんなことを思って、私は三人に会議室へ行こうと言ったわけなんだけど。そこで私は校舎の入り口付近に誰かがいることに気が付いた。
その誰かは女性で、この高校の制服を着ている。つまり彼女はこの高校の生徒。
彼女の容姿は、黒に近い緑っぽい色の長い髪に緑色の瞳、そしてめっちゃスタイルが良い。多分あれ身長高いわ。
「お前ら、ここの生徒だな。学校に来るなら、制服を着ろ!!」
そして出会って早々なのに私たちは彼女に大声でそう言われた。
もう、変なやつしかいない!
いや、あの人が言ってることは正論なんだけどさ。




