第二十話:メスガキ
「二人とも捕まえるよ、あのクソ生意気な――コホン。能力の出自とか、千紫万紅として絶対に入手しないとだからね!」
「本音出てる」
「黙らっしゃい!」
とにかく、あの狼擬き絶対捕まえてやるんだから。
「というか、逃げる気なくない?」
そこで私は気づいた、狼がゆっくりと歩いて逃げていることに。いや、あれは逃げてると言うのか?
「やる気あんの?」
「もちろん!」
あれでもやる気はあるらしい、なんだあいつ。
「よし二人とも行くよ!」
「お、おー!」
「走りたくないんだけど」
だめだ、統率が取れてない! 主に一名が!
「行くよ!」
「わ、わかったよ」
よし。いざ尋常に勝負!
「ってあれ?」
「な、なに?」
「足が動かない、私は疲れたみたい」
「それ私もだから!」
いざ狼を追いかけようとした私、だけど足が思うように動かず、私はその場に倒れた。どうやら黒白と紺鼠も同じ目に合ってる。
「これ、紺鼠の仕業?」
「私は関係ない」
「じゃあなに?」
こんなことをできるのは紺鼠ぐらい、だから私はすぐさま紺鼠を疑った、だけどどうやら違うみたい。彼女自身も倒れてるし、怠さも無いから納得ではある。
じゃあなんなの? そんな思いを抱いていると狼が近づいてきた。
「はぁ~、お姉さんたち無様だねぇ!」
「まさか、お前がやったの?」
「もちろん!」
腹立つ~!
「うわ、なんか目眩してきた、これもお前の仕業?」
「もちろん!」
もちろん! じゃねぇよ!
おっと、ちょっと口が悪いですわね。
「ねぇねぇ、今どんな気持ち~? 悔しいよね?」
「今なら良く寝れそう」
「ボクはあんまり気分は良くないかな」
「二人とも正直に答えるんだね」
「虹色頭ちゃんは?」
「だからお姉さんか、虹色頭のどっちかにしろって!」
「またそこ?」
呼び方は統一しようね。
「はぁ、あんたらと話してると調子狂うわ」
「同じく」
あら気が合いますね。
あと、あんたらか、お姉さんか、虹色頭……etc.
「というか、いい加減気持ち悪いからやめてくれない?」
目眩が気持ち悪すぎる。
こいつ話して分かったけど、多分性格悪いだけで悪い奴じゃない。悪い奴だったらこの時点で傷を負わされてるだろうし。
だからお願いすればやめてくれる、と勝手に信じてる。
「……はぁ、しょうがない。満足したしやめてあげるよ、感謝することね、虹色頭ちゃん?」
はい、こいつはツンデレってやつです。あ、ちょっとずつ楽になってきた。
「ありがと。でも良いの? 追いかけっこはまだ続いてるよね?」
「言ったでしょ、満足したって。情報も教えてあげる」
まじ? 流石に都合良すぎない?
「本当? 狼さん異怪物じゃないの? 人間たちの有利になるようなことをそんなに簡単に言っても良いの?」
黒白も疑っているみたい。だよね、異怪物であるこの狼がそうやすやすと情報を渡すものだろうか。
「もしかしてまた罠?」
「違うけど? まず前提が違う。やっぱ頭はよわよわなんだね」
「はい、殺す」
「生き地獄を味わいたい?」
「はいはい、争わないで」
「冗談に決まってるって、ね? 狼」
「もちろん」
黒白大丈夫、これはじゃれてるだけ。まあ後であの狼の頭を地面に擦り付けるけど。
「で、そんなことはどうでもよくて。前提が違うってどういうこと?」
私がそう聞くと。
「ふふっ、じゃあわたしの正体を見せて上げる」
狼はそう言って、なんかもぞもぞし始めた。体が凹んだりふにゃふにゃして、なんていうんだろう……狼の体内で何かが動いてる感じ?
「「「え」」」
黙って眺めていた私たちは次の瞬間、狼の身に起こったことに驚き、困惑の声を上げた。
「お前、人かよー!」
そう、狼の中から人が出てきたのであった。つまりあれは着ぐるみだったわけ。
出てきたのは、少女、多分黒白とあんまり変わらない身長。容姿は紫色の髪で、ツインテール。そして左目の瞳が赤色、右目が紫色のオッドアイ。
なんて派手なんだ……あ、私の髪色見る?
「あははっ! 驚いた?」
「そりゃ、ねぇ」
でもよく思い返してみれば、声が女の子っぽくて、なんか籠ってる感じはあった。散々言ってきたけど、こっちを傷つける気配もなく、情報を話すという賭けも提案してきた。狼の外見も二足歩行がおかしかっただけで、ガイアノの狼の外見と全く同じだったし。
……気づけるタイミング結構あったね。
異怪物がそんなにこちらに都合の良いことをするのか? って思ったけど人間なら納得だ。
「はぁ。で、あなたの名前は?」
「ふふっ、わたしは紫!」
「へぇ、私は変色、こっちは黒白でこっちは紺鼠ね」
「なんか急に打ち解けてる」
人間だってわかったからね。異怪物よりは警戒しない。
「じゃあさっそく持ってる情報を教えてもらうよ、紫」
「いいよー、まあ私に三人がかりで負ける人たちに教えても仕方が無い気はするけどね!」
「不意打ちじゃなければ勝ててたわ!」
「みんなそういうよね~」
このメスガキ!




