第十六話:巨人討伐
「やばっ」
「やるではないか」
「そりゃどうもっ!」
巨人と戦い始めてまだ数分、早くも私は体力不足に悩まされていた。
世界がおかしくなるまで運動してなかったつけが回ってきてる。それと斧が地面に当たった時の余波とか、飛んでくる瓦礫にも体力が奪われる。
「動きが遅くなってるぞ?」
「くぅ」
もう避けるので精一杯でまともに攻撃を当てられない。まあ時間稼ぎが目的ではあるんだけどさ。
いや、むしろ避けられてるだけ凄いって自分でも思うわ。
「はぁ、はぁ……」
「変色、大丈夫? きつかったら少し休んでいいよ、少しの時間ならボク一人でも多分大丈夫」
「いや、流石に二人でやらないとすぐやられちゃうよ」
私の息が乱れているのに対し、黒白はまだ涼しそうな顔をしている、疲れてはいるみたいだけど。体力あるねぇ。
「どうした、こんなものか?」
巨人の方は全然余裕そう、うーんまずいね。
「……そろそろ全力を出して終わらせるとするか」
あ、まずい。今まで全力じゃなかったって。
高速思考しなければ!
この状況では何をするのが正解か、対話は無理、かと言って力ずくで押さえつけられるほど私たちは強くない。このままでは殺される。
紺鼠が来るまで時間を稼がないといけない。このままじゃ無理。
何か起死回生の一手が欲しい。黒白との連携で? いや連携関しては今すぐできる改善点などない。個人の力で何か変えられたら。
私の力は変身する能力。私は変身して戦うしかできない。
変身して戦う?……!!
「黒白今から驚くようなことをするけど驚かないでね?」
「? 分かった!」
そうだよ、変身する対象は黒白だけじゃないじゃん。
だからこうして。
「私も巨人になれば良いよね」
「……ほう、私か」
「あー、その手があったね!」
そう、私の能力は変身する能力だ、なぜかずっと黒白の姿で戦ってたけど私も敵と同じ姿になれば身体スペックの差を縮められるはず。
さっきの件で変身は多分だけど本物の劣化版、ってことが分かったから、実際に一対一をするとこっちが負けるだろうけど、今は黒白がいるから全然勝てる可能性がある。
「黒白、援護して!」
「了解!」
そう言って私たちは巨人へ向かって行く。
「面白い!」
どうやら巨人の方は火が付いたようで、さっきより戦う気マシマシだ。
「ふん!」
私は巨人に近づいて殴る、それだけする。というかそれしかできない。あの巨人みたいに斧は持ってないから。斧くれ!
「ふむ、まだ軽いな!」
「うぎゃぁ!」
いってぇ。殴り返された。
いやあのデカい腕の攻撃を受けて痛いだけで済んでるんだからすごいと思うけど。
「や!」
「ナイス黒白! おら!」
巨人の斧の追撃が私を狙っていたが、黒白が斧を持っている巨人の腕を攻撃してくれたお陰で追撃は無くなった。黒白の攻撃によって生じた隙を逃さぬよう、私は巨人にまた拳をぶつける。今度は顔面にクリーンヒット!
「……っ、良いぞ楽しくなってきたではないか!」
流石に自分の何割かの力を受けたからか、巨人はそこそこダメージを負ったようだ。だけどなぜか巨人は更にやる気マシマシになっていた。
戦闘狂って属性面倒くさすぎない?
「っ、ふん!」
巨人は勢いよく斧を振ってきた流石にこの状態でもあんなデカい斧に当たったらまずいだろうと考えた私は巨人の懐へ潜り込み、斧を振るう腕を抑えた。その間にも黒白は攻撃を続けている。なんか黒白、さっきよりも攻撃力上がってる気がする、心なしか与える切り傷の範囲とか深さが大きくなってるように見える。
でもまだ巨人は痛みを感じてる素振りはない、どんな体だよ。
「ふっ、私の全力を受けるがいい」
「あっ、しまっ――うぐっ」
斧を抑えたことで一瞬硬直した私へ巨人の拳が放たれた。全力だとか言ってたし、至近距離でやばい!
そうして今度は私の顔面に巨人の拳がクリーンヒット。
「う゛、いた……」
あまりの痛さに私はその場に蹲ってしまった。
頭もガンガンする。
「……あ、変身が……」
するとどうだろう、私の変身が解けたではないか。
(終わった!)
ここで私は死を覚悟した。
悔いは……あー、ちゃんと服が戻っててよかった。巨人になったから、元に戻ったら服が無いかと思った。どういう仕組みなのかは気になるけど、裸じゃないならもう悔いは無いよ。
そんなことはなくて……やっぱ、ある。千紫万紅としての活動が終わるのは嫌だ。黒白と紺鼠も巻き込んじゃったってことを今ちょっと後悔もしてきてる。
「変色!」
黒白が必死に巨人へ攻撃してくれてる、巨人も少し鬱陶しそうにしてる、けどどうやら先に私を殺すことを決めたようだ、こっちに向かって歩いてくる。
「黒白逃げて!」
黒白のことだから絶対に逃げないことは分かる、けど私はそう言う。
「……お待たせ」
もう巨人が近づいてくるのを見ることしかできない。しかしその時、そんな私の耳にその声が聞こえた。
「っ、なん、だ……?」
「! 紺鼠!」
「良かったぁ……」
そう紺鼠が来てくれたのだ、彼女が能力を使ったからか、巨人は片膝をつく。
私と黒白は紺鼠が来たことで安堵する。黒白なんかはその場にへたり込んじゃってるし。
「ぐっ、こんな……もの!」
「「え?」」
安堵したのも束の間、すぐに恐怖がやってくる。なんと紺鼠の能力が作用してる中、巨人は立ち上がったのだ。
終わった!
「ふーん、強いね、大体私のこれで終わるのに。でも私の友達を傷つけたのは許さないから、もっと行くよ」
「っぐ、あ……なん、だ、この怠さ……」
「あ、倒れた」
「ほっ……」
紺鼠が能力の出力を上げたのか、今度こそ巨人はその場に倒れることとなった。
た、助かったぁ。
というか紺鼠がやばすぎる、あんなに私たちが苦戦したやつをこうも簡単に無力化できるなんて。
「はぁ、私も疲れた……」
「紺鼠ありがとう、助かったよ!」
「ありがとう……」
「……頑張った甲斐があった。でも今思ったけど、変色が私に変身すれば良かったんじゃないの?」
「……」
ふ、ふぅ。じゃあ対話といきましょうか。
「……聞いてる?」
う、うるさい! 誰だって忘れることはあるわ!




