第十三話:自衛隊との会合
「ねぇ、君たちはどこから来たの?」
「ギャー!」
「うーん、駄目だね」
「ギャッ」
「中々対話ができる異怪物は見つからないね」
「まあそう簡単には見つからないよね、むしろ対話できる異怪物が存在しない可能性の方が高いだろうし」
今私たちは対話できる異怪物を探して街中を歩き回っていた。
異怪物を見つけたら無力化して問いかける、そして対話ができるかを確認し、できなければその場で殺す。
そうして探し回ってもう一時間近く経っている。
「けど、感情がある異怪物は結構見つかるね」
「ね、今まで見たことも無かったのに。もしかしてこれから増えてくとか?」
「そうだとしたら知能持ちも増えそう、厄介だね……」
「けどその分異怪物との対話が実現する可能性が高まるはず、ポジティブに捉えていこ。これから増えてくるとは限らないけど」
まあ、知能高い異怪物が増えたら危険が高まる、つまり人の命がもっと危険に晒されるってことだからあまりポジティブにはなれないことなんだけどね……。
「……ん? あれって……」
「え、なに?……あ」
突然立ち止まった黒白、私は気になり彼のその視線の先を見た、するとそこには。
「自衛隊じゃん」
なんとニチ国から派遣された自衛隊らしき人がいた。自衛隊の人はとある家の前に立っている。
多分家の中にいる誰かを仲間と一緒に助けに来て、仲間が何かしてるうちの見張りをしている、という感じかな?
「何かしてるみたい、手伝う?」
「手伝いたいのは山々だけど、なんか言われそうじゃない?」
「分かる」
本当は今すぐ自衛隊の手伝いに行きたい、けどこんな状況で女子三人(?)で外を出歩いてるなんて知られたら何か言われるどころか強制的に家に戻されるまであるかもしれない。
しかし、本当にそれで手伝うのを止めて良いのでしょうか?
「手伝えそうだったら手伝う、できそうなことが無かったらそのまま去ろう。千紫万紅として見て見ぬふりはできないよね!」
「うん、変色ならそう言うと信じてた」
「えぇ、絡まれたくない、余計なことを言われて疲れたくない。何よりだるい」
「何か言われる、で動かないなんてダサいこと、千紫万紅はしないよ!」
「……ちっ」
なんだかんだ言うけど紺鼠も手伝ってくれるみたい、もう素直じゃないんだから~。
「すみませーん! 何か手伝えることってありますかー!」
二人と話して、手伝いに行くことが決まったため、私はそう大声を上げて自衛隊の人に近づいていった。黒白と紺鼠もちゃんとついてきてくれてる。
「ん?……な!? 君たち、外は危険だ! 今すぐ家か、避難所へ戻りなさい!」
あちゃー、早速言われちゃったね。
「いえ、ご心配なく! あの何か手伝えることh――「過信するな! 今までも能力を手に入れた大勢の者が、そうやって自分のことを過信して死んでいったぞ!」――っ……すぅー、はい……」
正論過ぎる。
これは手伝えなそうかな? いや、あともう一回!
「何か私たちに手伝えることはありませんか!」
「ない!」
「そうですか! じゃあ帰りますね!」
「ああ、気を付けて帰りなさい! 辺りの異怪物は私たちが殺した、しばらくは安全なはずだ!」
「ありがとうございまぁーす!」
はい、帰ろう。
「え」
「え?」
「どうしたの? 二人とも帰るよ」
「あ、うん」
「まあいいか」
◇
「まあ帰りませんけどね!」
「流石にね」
「あれで本当に帰ったら私とお昼寝コースだったよ、残念だね」
「そりゃ良かった、私は一人で寝るタイプだから」
当たり前なことに自衛隊の人たちに言われたからって私たちは帰りませんよ。あの場ではそう言った方が良かったから言っただけ。
「いやー、でも手伝えなかったかぁー」
「まあ自衛隊の人からしたらボクたちも守るべき人だからね、仕方はないかも」
「……守るべきなら一緒にいた方が安全だとは思わなかったのかな」
「多分、それどころじゃなかったんじゃない? それに辺りの異怪物は殺したって言ってたから比較的安全に帰れると思ったとか」
「まあそうなのかもね~」
真意は分からないけどね。
■
「行ったな」
先程変色と会話をしていた自衛隊員の男は、変色たちが帰路についたことを確認し、安堵したようにそう呟いた。
「大丈夫か? 今声が聞こえたが」
「ああ、大丈夫だ」
先程の変色とのやり取りを聞き付けた一人の隊員が、今現在男が見張りとして立っている家の中から現れ、男に問いかけるが、男はそれに対して問題ないと返した。
「それよりも、どうだ、見つかったか?」
「何度か姿は捉えている、しかしすばしっこくてな、それに頭も良い。そのせいでなかなか殺せていない」
「そうか、怪我人は?」
「現時点で隊員の一人が負傷、恐らく肋骨が折れている。だが家主には傷は無い」
「そうか」
自衛隊員の男はついでにと仲間の隊員に家の中の今の状況を聞く、男自身も隊員として、仲間や救助者の状況などは知っておかねばならない。
現在自衛隊のこの班は、家主からの救援信号を受け、家の中に侵入した異怪物の掃討作戦を行っていた最中であった。
男が変色たちをそばに置かずに帰した理由はこれである。一番の危険は自衛隊の近くであったわけだ。
「姿を現したぞ! 追え!」
するとその時、異怪物が籠っている家内から他の隊員の声が響いた。
「……おっと再び奴が姿を現したみt――ブフォッ……」
家内にいる他の仲間の言葉を聞き、隊員はすぐさま家の中へと戻ろうとしたが、その時隊員の顔面に疾風のごとく現れた物体が直撃したことで、彼はその場に倒れることとなった。
「な!?」
その様子を見ていた男は驚きに声を上げる。
「ジャー」
「こいつか……」
男はすぐさま仲間を気絶させた物体の正体を見る。
その物体は全身が黒い毛のようなもので覆われている猿のような生き物。
鋭く尖った爪や頭に付いている一本の歪な角を見るに地球の生命体ではない。そう、黒白が対峙したあの猿の異怪物である。
男はすぐにこの猿の異怪物が目標の異怪物であると確信した。
「大丈夫か!」
そこで猿の異怪物を追うように家の中から出てきた自衛隊員たち。
彼らは猿の異怪物へ銃を向ける。
「ジャー」
「っ、待て!」
状況が不利だと判断したのだろう、猿の異怪物はその場から逃走を始めた。
勿論自衛隊が只で逃がそうとするわけもなく。彼らは手元の銃を発砲する。
だがその全ては猿の異怪物の体を掠める程度に終わった。
「チッ、逃がしたか……」
あっという間に遥か遠くへ逃げた猿の異怪物。家の中から追い出すことには成功したが、掃討作戦は失敗である。
自衛隊員たちは猿の異怪物を仕留めきれなかったことを悔やむ、しかしすぐ後には切り替え、気絶した隊員や、家主の安全の確認の行動に移ったのであった。




