第十二話:始動
「で、本題よ」
「異怪物と能力についてだね」
遅くなったけど、本題。いや、さっきも能力の話してたから既に本題だったかも。まあいいや。
「じゃあまず、異怪物はどこからどうやって来たか」
まず異怪物の出自について。
「みんな急に現れた、って言うよね。まあ実際私も予兆みたいなのは感じなかったし。二人は?」
「ボクのほうも特に予兆のようなものは現れなかったね……そう、急に学校の中に現れた」
「私も同じく」
うーん、やっぱそうかー。
「ならこの話は一旦ここまで、また情報が集まったら話そう。じゃあ次は能力」
これ以上話しても今分かることは無いだろうと考え、私は能力へと話題を転換する。
異怪物と能力は同時に現れた。だからこの二つは無関係ではないはず。
「変色も考えてるだろうけど、異怪物と能力はお互いに関係してそうだね」
「いや、偶然二つのタイミングが重なっただけだったりして」
「流石にそんな偶然は無いと思うけど……まあ考えとしては覚えといて損はないね」
もし、異怪物と能力が一つの共通の原因から生み出されているわけではなく、それぞれに別の原因があるとしたら考えることが増えるから大変だ。お願いだから一つの共通した原因であって!
「まあ普通に二つは関わってて、原因は同じだと考える方が現実的だよね」
「そうであって欲しいっていう願望もある」
「……」
「……」
「これは困った」
やっぱ情報が少ない、議論することができない!
「しばらくは情報集め、かな」
「SNSで集める?」
「そうだね、それ以外にも何か使えるものは全て使って情報を集めよう」
情報が少ないのでしばらくは情報集め、ということになり。大して話が進まないままこの日は解散。
◇
「うーん、異怪物たちってどこから現れてるんだろう、結構頑張って減らしたはずなのに翌日にはいっぱいいる」
翌日、学校へ向かっている私は異怪物を倒しながらそんなことを呟いていた。いや、本当にこいつらどこから来てるの?
「そこ!……右から来るのも分かってるよ!」
黒白の姿と能力を借りて、私は動き回る。毎日異怪物たちを倒しているからか、私は今では危なげなく異怪物を倒せるようになってきていた。
異怪物が出てきてから一週間ぐらいの間は何度死ぬと思ったことか。慣れとか成長って恐ろしいね。
「はい、チェックメイト!」
言ってみたかった言葉を告げて、私は黒い刃を異怪物へ向けて放つ。
「ギィィ……!」
「……う、ん?」
黒い刃は異怪物に直撃した。それによって異怪物は絶命した。
だけど。
「今、一瞬怖がってた?」
黒い刃が直撃する瞬間、私には異怪物が怖がっていたように見えた。
「今まで倒した異怪物は皆なんの感情も無い感じで襲ってきた、怖がる様子も見せなかったはず」
そう、今まで全ての異怪物たちは感情を持たない、まるで自我が無いような感じで私たちを襲ってきた。なのにさっき私が見た異怪物は一瞬黒い刃を怖がっていた気がした。
これは私の気のせいなのか、それとも感情を持つ特別な個体だったのか。
「いや、前提が違うかな? 元々感情を持ってたとか?」
うーん、分からない!
「……二人に話してみよう」
こういう時は他の人の意見を求めた方が良いよね。
ということで早く学校に行こう!
◇
「ということがあったんだよ」
そうして今、私は今日学校に来る前に起きたことを、黒白と紺鼠の二人に話していた。
「ふーん」
「なるほど……実を言うとボクも気になることがあってさ」
話した結果、紺鼠は薄い反応。黒白は何か気になることがあると言った。
「気になること?」
「うん、ボクも昨日の帰りに異怪物と戦ったんだけど、その時やけに知能の高い異怪物が居たんだよね」
■
黒白の前日の学校帰り。
「もう何体目か分からないや」
黒白はそう呟いて辺りを見渡す。辺りには黒白の攻撃によって絶命した異怪物たちが散らばっていた。
「倒しても倒しても現れる……ほんとどこから来てるんだろ」
変色と同じような独り言を呟いている際に、異怪物が彼を正面から襲う。しかし彼はそれを一瞥すると、即座に異怪物に向けて黒い刃を飛ばし、対処する。
「弱いから良いけど、これ以上強かったら、それこそ高い知能とか持ってたら大変だね」
黒白の背後から飛びかかる異怪物。足音で気づいていた黒白はそれへまたもや黒い刃を飛ばして対処する。
「……相変わらずグロい……そして慣れてきてるのが怖い」
胴体が真っ二つになった異怪物を見て、黒白はそんな感想を抱く。
「まただ」
すると正面にはまた異怪物が一匹現れた。見た目はガイアノ生命体の中では猿が近いであろう姿、全身は黒い毛のようなもので覆われており、頭には歪な角が一本付いている。
「ジャー!」
そんな鳴き声と共に、猿の異怪物は迫ってくる。しかしその速度は今まで黒白が殺した異怪物の中でも類を見ない速度であった。
「速い!」
黒白は即座に黒い刃を飛ばす、しかし躱される。
「っ防御!」
いつもみたいに正面から攻撃を仕掛ける、そう思い、黒白は前方に黒を張る。
「え?」
しかしその考えは間違いであった。
猿の異怪物は即座に方向転換し、その先にある壁を蹴り回り込む形で黒白へと迫った。
(頭が良い!?)
猿の異怪物の頭の良さに、驚く黒白。しかし悠長にしている時間など無い、彼には猿の異怪物の蹴りが迫ってきている。
「う、んぅ!」
ギリギリで体を捻り、黒白は何とか躱すことに成功した。
「せいや!」
黒白はすぐさま猿の異怪物へ黒い刃を放つ、しかしその刃は猿の異怪物の足を掠めるだけであり、致命傷にはならず。
「っ! あぶな!」
再び動き出した猿の異怪物は黒白へ突進、爪での攻撃を行う、しかし黒白が咄嗟に動いたため、こちらも彼の腕に擦り傷を負わせるだけに留まった。
「ここまで手こずったのは初めてだよ」
「ジャー」
黒白にとってここまでの難敵は初めて、猿の異怪物も彼の言葉に同意するように鳴き声を上げる。
「あ、待て!」
「ジャー」
猿の異怪物をどう倒すか考えていた黒白であったが、彼は猿の異怪物が逃げ出したことでその思考を止めた。
「っ、逃がした……」
追いかけようとした黒白、しかし猿の異怪物の足は速く、彼はすぐに振り切られたのであった。
■
「ということがあったんだよね」
「よく生きてられたね」
私は黒白から知能の高い異怪物とやらの話を聞いた。そんな異怪物私は見たこと無いし、聞くからに強敵だって分かる。よく生きてたよ黒白、マジで良かった。
「ボクも流石に、ちょっと命の危機を感じたよ」
でしょうね。
「多分私だったら命の危機を感じる前に死んでる」
「私だったら勝てたかも」
「あー、確かに紺鼠だったら行けてたかもね」
確かに紺鼠の能力なら近づいた瞬間に動けなくなるだろうから余裕だったかもね。いや、紺鼠の能力強すぎない?
「まあ、それは良いとして、知能の高い異怪物ね。今日私が出会った感情を持つ異怪物と何か関係があったり、どこか特別なところがあったりするのかな?」
昨日今日と知能が高い異怪物、感情を持つ異怪物が出てきた、もしかしたらこれからそういう異怪物が増える予兆とかだったり?
「知能が高いなら対話とかできそう?」
「言語の問題がありそう」
「対話かー、あり」
紺鼠が提案した異怪物との対話。もしこれができればどこから来たのかとかが分かるはず。故に私は対話作戦結構ありだと思ってる。黒白の言う通り意思疎通ができるかは分からないけど。
正直希望は薄いと思うけど、やってみないと分からない。
「うん……しばらく異怪物との対話を目指してみるのは良いかもね、どこから来たのかとかが分かるだろうし。二人はどう?」
「良いと思う」
「頭のいい個体、そして対話できる個体がそもそもどれぐらい居るのかが問題だけどね」
そうだよねぇ、今までそんな異怪物いなかったからね。
「……じゃあしばらくは異怪物との対話の実現を目指そー!」
「「おー!」」
こうして千紫万紅の活動は本格的に始まったのであった。




