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問いかけ

ヒロアカが終わるのショックすぎて勉強が進まない

「面白かったですね!特に最後のシーンの迫力!」


「わかる。やっぱ話題になるだけあるよな!」


映画の帰り、四人は霊が出ると噂の西地区に来ていた。噂とは裏腹に、特に異変はなく、のどかな雰囲気に包まれている。


「歩…喉が、喉が渇いた…」


「ポップコーンドカ食いするからだろ…」


沖田はふらふらと歩き、電柱にぶつかりそうになりながら進んでいく。その姿に呆れた駆動が提案した。


「なあ、喉乾いたしジャン負けで飲みもん奢りにしねぇか?」


「いいぞ、絶対に勝つ」


「僕も負けませんよ〜!」


三人が一斉に構え、思考する。

じゃんけんで最も勝ちやすい手はパー。これは、人間が出しやすいグーに勝つためである。それに比べて、チョキは他の手より出にくい。


だが、今はそんな事どうでも良い。

三者三様に、ただ金を出したくないという思いが心を尖らせる。


——じゃーんけーん!


ポン!


駆動はチョキ、葛葉はパー、木戸はグー。

見事に三すくみ。


「あいこで——」


ショッ!


(俺は最近ついてない。体が傷だらけになるわ、コーラ代で金が吹き飛ぶわ、つくづくついてない。色のなかった人生が色付いていくのは心地いいが、その色が濃すぎては疲れる)


「なんで俺なんだよ!」


言い出しっぺの法則通り、買い出しは駆動に決定した。一人で走って自販機に買いに行く彼の背は、逞しくあったが、負のオーラが滲み出ていた。


「やっとついた…」


数分走り、自販機についた。メモを確認し、息を切らしながらボタンに手を伸ばす。


「沖田はコーラで、葛葉はメロンソーダ。木戸は──」


「おつかいか?少年」


不意に、頭上から声が降ってきた。見上げると、自販機の上に男が座っている。和服にブーツを合わせ、腰には錆びた刀が、時代に取り残されたようにぶら下がっている。


「はー…霊ってやつはなんでこうも鉄の塊が好きなんだか…なんか用か?」


「…用はない。ただ、気になってな」


沖田と出会った時のように空気が凍り、冷たい風が肌を撫でる。やけに息苦しく、足が重たい。さっき買ったばかりのコーラが徐々に熱を帯びていくのを感じる。


「おーい駆動」


「遅すぎですよ!」


「早くコーラを…!」


待ちかねた三人は駆動の元まで来ていた。それだけ男と会ってから、時間が過ぎていたのだ。


「すまねぇ。ほらよ」


駆動は沖田に向けてコーラを投げ渡した。

あと少しで手に届くというその瞬間、渇いた音が鳴り響く。缶には弾痕のような穴が空き、地べたを転がり、焦げた金属とコーラの匂いが広がる。


「お前、新選組だろ?その羽織、覚えがあんだよ。いや〜懐かしい」


男は軽やかに地面へ降り立ち、拳銃の弾を込め直している。光に照らされ、その黒鉄のボディが存在感を放つ。


「お前…そうか」


その男を見た瞬間、沖田の表情が変わった。

いつもの飄々とした色が消え、底の見えない冷たさが宿る。相手への殺意をむき出しにし、一呼吸してから口を開く。


「その見た目、西洋かぶれの志士。坂本龍馬だな」


「ご名答。やっぱ俺って有名人?」


興奮する木戸と、ぽかんとする葛葉。

木戸は早く聞いてくれと言わんばかりに葛葉を見つめている。


「木戸、解説よろしく」


「はい!坂本龍馬は土佐藩出身の志士で、薩長同盟や大政奉還などに尽力した日本の英雄の一人です」


「わかるか?駆動」


「さっぱり…」


視線が、再び二人の剣士へと戻る。沖田と龍馬。かつて同じ国を想い、だが決して交わらなかった男たち。


「有名も何も、我ら新選組は罪人のお前を探し回った。それになかなかの強者と聞いていたからな、一度戦ってみたかったものだ」


「良かったじゃねえか。その願いが、今叶うんだからな!」


龍馬は沖田目掛けて引き金を引いた。火花が飛び散り、真っ直ぐと飛んでいく。沖田はそれを直感のみでかわし、駆動に取り憑いて切り掛かった。龍馬はわかっていたかのように刀を引き抜いて応戦する。


「変わらん物も美しいが、いつまでも刀に頼るから新政府軍に負けんだよ。時代は今も昔も鉄砲だ!」


「グーチョキパーより日本刀。拙者はこっちの方が性に合っておる!」


刃が触れ合うたび、重音が響き渡り、ぶつかる衝撃で草木が揺れる。少しでも動きを間違えれば死に直結する。


「てめぇ!俺の体で好き勝手してんじゃねえ」


「うるさい!こんなやつ前にして落ち着いておれるか」


刀を振る沖田の胸が、わずかに上下する。強がっているが、呼吸がいつもより浅い。

「……そろそろ代われ。無理してるのバレてるぞ」


「ああ……頼む」


折半している肉体の主導権を駆動に譲るとき、沖田は一瞬、胸に手を当てる仕草を見せた。


龍馬は駆動目掛けて刀を振り続ける。駆動はその攻撃をいなしている。刀を握ったのはつい最近だが、その身には沖田の経験が染まり始めており、少しの間なら動きを再現できている。


(なかなかの身体能力と反応速度。そこに沖田の技術が加わることで、互角とはいかずとも俺とやり合えている)


龍馬の動きが加速しだす。

素早くなる剣撃だが、それでも刀だけなら対応できる。しかし、そこに銃も混ぜられると、リズムが崩れ、少しでも気を抜くと被弾する。


「良いねぇ、これも捌ききるか。このまま磨けば桂にも届くかもな」


「誰だよそいつ!」


両者一歩も引かない攻防戦。切る、かわす、撃つ、全ての動きが洗練されており、美しささえ感じる。


「…少年。君はなぜ戦う?」


「人を助けて、明るい未来にするためだ」


「良い志だ。だが、それを守れた男はほとんどおらん。力がなければ、志半ばで倒れるぞ。そうなったらどうする?」


「仲間に託す。それだけだ」


「…お前と戦えて良かった」


発射された弾が駆動の体に喰い込んだ。刀で切りつけられる痛みとは一味違う、熱された割り箸が突き刺さったような感覚だ。


(くそ…体力の限界でボロが出たか…)


被弾した箇所から、真っ赤でドロドロとしたものが溢れ出る。駆動はどうにか痛みを堪えているが、立っているのもやっとだろう。


「あいにく時間がなくてな、これでお終いだ。またどこかで会おう駆動歩、沖田総司…今より強くなれ、そして俺を止めに来い」


「待て……」


龍馬は住宅の屋根を飛び越え、どこかへ消えてしまった。駆動は疲労と出血で地面に倒れ伏せ、意識を失ってしまった。








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