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炎天怪談  作者: にとろ


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海遊び

「僕は釣りが好きなんですよ」


 そう語る牧野さんは釣りをしている時に奇妙な経験をしたことがあるそうだ。


「釣りは好きなんですが、アレは勘弁して欲しかったですよ」


 それは暑さもなかなかキツくなってきた頃の話だという。


「昼間になると暑いので朝早くから車を走らせて波止場で釣りを始めたんですよ」


 その日はなかなか釣れず嫌になっていたんです。やっとかかったと思えば小さなふぐが引っかかっていたり、思えばフグが間違えてかかるような仕掛けでは無いはずなんですけど、あの時はイライラも相まってそんなことを気にしている暇はありませんでした。


 日が昇り始めて気温も上がり始めたんですよ。そろそろやめようかとも思ったんですけど、ボウズで帰るのも納得がいかなかったので続けたんです。なにしろ割と遠くまで足を伸ばしていましたから、釣れませんでしたでは納得がいかなかったんです。


 自販機があったのでスポーツドリンクを数本買ってきて、まだ魚が一匹も入っていないクーラーボックスに放り込んだんです。よく考えるとその時点で魚が釣れないのは予感していたのかもしれませんね。魚を入れたらスポドリは全部出さなければなりませんから。


 そうしているうちに太陽が水平線の向こうに全身を表してきた頃でした。子供の声が聞こえてきたんです。なんと言っていたのかは分かりません、ただ、まだ声変わりがしていないような声が響いてきたんです。それが近づいてくると水をパチャパチャする音が聞こえてきました。ああ、子供が遊ぶような時間か、そう思いました。


 遠方だったので土地勘もなく、子供の遊び場で釣りに興じているのは少し気が引けましたが、漁業権も買っているのでこちらにだって権利があります。意地になって釣りを続けました。


 そこまで頑張ったのに釣れるのは外道と呼ばれる食えないような魚ばかりで、狙っていたものは一匹もかからなかったんです。うんざりしながらスポドリを取り出して飲みました。少し気分が良くなって、そのまま汗をかきながら釣りを続けたんです。


 自分で言うのもなんですが、なかなか根性を入れて頑張ったと思いますよ。でもこちらが頑張っていることなんて魚からすれば微塵も関係無いんですよ。そりゃ人間が頑張っているのだから自分が食卓に並んでやろうなんて魚はいませんよね?


 日が高く昇った時点で私は諦めて帰ることにしました。最後のスポドリを飲み干して、空のペットボトルを自販機の横のゴミ箱に捨てました。そして残念な釣り場を睨みながら帰ろうとしました。そこでふと気がついたんです。


 よく考えれば、この辺の海岸はコンクリで固めてあって、地面とコンクリートの先はすぐに海が広がっているんですよ。だから子供が遊ぶような場所なんて無いんですよ。じゃあさっきまで聞こえ続けていた声は? と考えていると『あはは!』と少年高少女だか分からない声が響いたんです。背筋が寒くなってすぐに帰路につきましたよ。


 後で少し調べたんですけどね、あの辺りは水害の多い地域だったそうなんです。だから子供が……アレは犠牲になった……あまり考えたくはないことですけどね。


 そう言って牧野さんは話を終えた。彼はそれ以来、その釣り場に入っていないそうだが、最近になって見直され、釣り人がそれなりに集まる場所になっているらしい。ただ、そこの具体的な場所は伏せさせてもらう。

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