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炎天怪談  作者: にとろ


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宿題と夢

 小学生の夏休みに多くの子供が苦労するように、ハルコさんも夏休みの末に宿題に追われていた。


「どこまでが事実かは不明なのですが……」そう彼女は言ってから事情を話してくれた。


 小学生の夏休みに定番の自由研究と読書感想文が残っていたときのこと。


 あまりお行儀の良い生徒ではなかったが、担任が怖い女教師だったため、なんとか課題を終わらせなくてはと躍起になっていた。


 とりあえず自由研究から片付けることにしたのだが、短時間でなんとか終わらせることの出来るものを考えなければならない。


 そこで思いついたのが、円周率の計算だ。学校では3.14で習っていたが、実際はもっと数があると知っていた。まだ無理数という概念は知らなかったが、円周率は十分な長さがあったので、自由研究の課題に『円周率の計算』をすることにした。


 思えばかなり無理のある自由研究だが、追い詰められていたため円周率の式を調べてそれを延々と計算して書き留めていくことで数字だけで無理矢理ノートを埋めた。数字を大きめに書いたので数十ページを埋めることが出来、一応体裁だけは整えられただろうと無理矢理自分を納得させた。


 しかし、残り二日の夏休みで読書感想文を終わらせなければならない、課題図書を読むととても間に合わないので、家の本棚から出来るかぎり薄い本を選んでそれをあらすじから速読して書くことにした。


 選んだ本は怪談本だった。何故かその本だけ妙に薄かったからという理由だ。あらすじを読むと、怪談の短編集だと書いてあり、心の中でガッツポーズをした。これなら全部読む必要は無い、短編を一話読んで本文引用と段落とかっこを多用して改行をたくさん取ってスカスカでもなんとか原稿用紙二枚を終わらせようとした。


 一番薄い話を選んだのだが、内容は丑の刻参りの話で、神社で呪術が行われていたのを見てしまった男が必死に逃げると、数日後に知り合いの女が事故で死ぬという内容で、当時は丑の刻参りの正式な作法など知らなかったが、呪いをかけるような格好をすると知人でさえも分からなくなるものだろうかと疑問に思った。とりあえず使えそうな文章をメモしておいた。


 夏休み最終日にその短編を使ってメモした文章を大量に入れて無理矢理原稿用紙を埋めた。これで一安心して翌日の投稿に備え早めに寝た。


 その日見た夢は、自分が神社にいてコンコンと鳴る音の方へ行くと、髪を振り乱した女が必死に藁人形を大きな木に打ち付けているのをぼんやり見ている夢だった。


 目が覚めたときの気分はあまり良いものではない。学校が始まるというのに嫌な夢を見たなと思いながら課題を持って課題が終わったことに安心しながら登校した。


 始業式が終わり、担任の話を聞くのに教室に戻ったのだが、担任がなかなか現れない。そこへガラッと戸を開けて副担任が入ってきた。


 副担任は担任が事故に遭ったため、しばらくの間自分が担任を代行すると言った。


 結局、担任が卒業するまで復職することはなく、そのまま卒業した。


「それでですね、夢を見たっていったでしょう? あの夢に出てきた丑の刻参りをしていたのって担任じゃないかと思ってるんですよ」


 私は興味を持ってその理由を聞いた。


「夏休み明けの参観日に備えて壁の上の方に掲示物を貼るスペースがあって、そのときは夏休みで書いた作文か読書感想文を皆の分が乗る予定だったんです。読書感想文を選んだ私はそれが貼られると思っていたんですが、何故か私のものだけ貼られなかったんですよ、ただそれだけなんですが夢の中に出てきた女を思い出すと担任と特徴が似てるんですよ。恐ろしい顔をしていたので顔だけでは判断が付かなかったんですが、泣きぼくろが担任と同じ位置にあったんですよ。偶然かもしれませんが偶然もここまで重なっちゃうと疑うでしょう?」


 彼女はそう言って話を締めた。


 真相は結局分からないそうだが、彼女は呪いの報いだろうと信じているといっていた。


 なお、小学校の同窓会は開かれたが、担任は体調をまだ崩しているという理由で不参加だったのもその推測を補強するものになったらしい。

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