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炎天怪談  作者: にとろ


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釣れてしまった

 カイトさんがまだ子供の頃の話になる。彼はもう社会人で、それなりに昔の話になるのだが、当時はいろいろと許されていたことらしい。


「ほら、ブラックバスの放流って禁止されてるじゃないですか、昔は釣り上げたら逃がしてもよかったんですよね。今は釣り上げたら責任持って始末しないといけないらしいですがね」


 そんな言葉からうかがえるとおり、彼の子供時代にはバス釣りが流行っていた。彼もその流行に乗った一人だそうだ。


 当時はバスの釣れる池が自転車で少し行けばあったんですよ、そんな所子供の格好の遊び場になるじゃないですか。漁業権とかいろいろあるんでしょうが、ガキが釣るのはブラックバスで、当時は在来種が減っていたのでバスくらい自由に釣らせてやれって雰囲気がありましたよ。実際バスと精々ブルーギルが釣れるくらいでしたしね。


 子供なんて単純なもので、それを釣って逃がすのも十分に楽しめたんですよ。バスを逃がしたところでそのまま元気よく生きていけるかは怪しいらしいですが、釣り上げたら殺さなければならないというハードルがなかったので割と気軽に釣ってました。


 その日も釣りが趣味の連中で釣具屋に集まってからなけなしの小遣いでルアーとかを買って、バスの釣れる池まで皆で自転車を漕ぎました。その日は皆割と楽しそうにしていましたよ。当時は夏でも水筒が一本あれば外出できたんですよね、今の暑さだと絶対熱中症になるような時期でも、精々スポドリを追加で持っていくかどうかくらいでしたね。


 太陽が照りつけるなか、池に集まって皆で釣りを始めたんですよ。始めにかかったのはワームで釣っているやつでした。興奮しながらリールを巻いているのですが、途中でソイツの顔が曇ったんですよ。どうしたのかと思ったらよく見ると引っ張るのは重いようですが、向こうが逃げようと引っ張っている様子がないんです。ああ、なんか引っかけたなと思いながら皆でそちらに目をやると、ソイツはスニーカーを釣り上げました。


『チッ……誰だよ靴なんて捨てたやつ』


 ソイツは悪態をつきながら靴をその辺に放りました。考えてみるとバスを放流したやつの方がタチが悪いんじゃないかとも思うんですが、当時は皆してソイツを笑いました。


 次にかかったのはルアーを沈めてアタリを待っていたやつです。引っかかったと喜んで引っ張ったんですが、ソイツも靴を吊り上げたんです。先に上がったのは左足、ソイツが釣り上げたのは右足でした。


『誰だよ靴を捨てたやつ! 両足あるならまだ使えるだろうが!』


 そんな風に悪態をつきながら靴を放ったんです。


 次に引っかかったもので誰も笑えなくなりました。次にかかったのは右手の手袋だったんです。これはおかしいぞとなったわけですが、誰かが釣りに使ってそのまま捨てたんだろと言い、不安を誤魔化すように釣りを続けたんですが左手の手袋がかかったあたりで笑えなくなっていました。


 決定的だったのが、ガキ大将的なやつが、釣り竿をあげたんですが、竿が折れるんじゃないかというくらい曲がっていました。ここにそんな大物がいたっけと全員が思ったのですが、浮かんできたのはセーターだったんです。皆竿をたたんで大急ぎで散り散りに逃げたんです。セーターを釣ったやつはルアーごと糸を切って自転車で構わず逃げていました。


 それで釣りのブームは終わったんですが、たぶんあのまま続けていたら釣れたのはズボンだったと今でも思っています。ただ、人の服一式が揃ったら何が起きるのかまでは分かりませんがね。


 それから釣りのブームは終息し、今では当時の友人も釣りをしているとしても海釣りをしているそうだ。ブラックバスが釣り上げた後逃がせなくなったのも理由だろうが、当時あそこに居た面子はたぶんそう言う理由ではないんだろうと彼は語った。

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