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炎天怪談  作者: にとろ


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夏休みの読書感想文

 工藤さんが小学生だった頃のある夏、いや、正確に言えば九月は秋なのだが、まだまだ暑かったので夏として扱おう。


 彼はうんざりした顔で登校した、その理由は当然夏休みの宿題をサボって終わらせていない物があるからだ。


 他のことは最後の最後でなんとか終わらせた。ただ、彼は読書感想文だけは終わらなかった。どうにも字を追っていると眠気を催すので、他の宿題は作業として終わるのだが、感想文を書くことよりも、読書をするのが辛かった。


 そして当然のように教師は感想文が書けていないことをネチネチと言い、居残りをしてでも書けと言ってきた。どうせやらされるんだからと渋々放課後に課題図書を読んで感想を書くことになった。その性質上、他にも幾人か居た宿題をやっていなかった生徒は次々に終わらせてさっさと帰っていく。


 人数が少ないということはエネルギー効率が悪いと言うことであり、教室に設置されたエアコンは止められていた。


 なんとか本を読み終えたので、少し太陽が赤くなってきた頃に、原稿用紙に感想文を書いていった。


 当然だが嫌々読まされた本に感想もなにも無い。つまらなかったと書こうものなら教師が激怒するのは目に見えている。


 そこで定番のあらすじを書いてそれに関する一言コメントをつけていく方法で文字数を稼いだ。『彼は~』と本に書かれていれば、感想の部分ではそこを代名詞では無く主語をフルネームで書いていった。コレで微妙に文字数が稼げる、読書感想文を無理矢理埋めるライフハックだった。


 内容はもう覚えていない、記憶の限りではきれい事を煮詰めて固めたようなものだったと記憶している。それを泣きそうになりながら本文からの引用もしていく。ふとその時、教室の中に風が吹いた。涼やかであり、少しだけ涼しくなり、意識がハッキリしてきた。


 そのまま勢いで無理矢理原稿用紙を二枚埋めて職員室に提出に行く。当然だが教師は感想文を読んで非常に渋い顔をしていた。今になれば無理矢理文字を稼いだのが丸わかりな文章だが、どのように書くべきか教えられているわけでもないのでそうなったのは必然だ。


「帰っていいぞ」


 その言葉を聞いてさっさと職員室を後にして教室へ帰った、荷物を一通り持って帰宅の用意をした。そこでふと気がついた。教室の窓は全て閉まっている、出入り口のドアも当然閉まっていた。ではあの涼しさはどこからやって来たのだろう?


 怪訝に思いつつも、そんなことを考えて時間を浪費したくなかったので、気のせいということにして帰宅した。


 親に『どうして遅くなったの?』と聞かれたので、正直に『宿題が終わらなかったから』と答えた。すると母親は怒ることも無く遠い目をして『時代が変わっても変わらないわねえ……』としみじみ言う。それから『私の頃にも泣きながら宿題をやっていた子が居たものよ』と言われた。


「多分、あの時の涼しさは昔の子供たちが私を応援してくれたのだと思っています。昔は熱中症にはなりませんが、はるかに厳しい教育だったそうですから」


 別に幽霊が出たわけではないのだが、夏の思い出として読書感想文に苦戦していた私には思い出深く残っていたメモをこうして書き連ねた次第である。

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