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炎天怪談  作者: にとろ


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帰省と子供

 エツコさんは夫と二人で暮らしていたのだが、あるとき、夫の実家に帰省することになった。彼女の姓はその地方が特定できそうなモノのため伏せておく。


「悪いことばかりじゃないなって思った帰省でした」


 始めはうんざりしていたんですよ。もう夫の実家に帰省という時点で面倒なので車の中から気怠さがただ酔っていたと思います。夫も空気を読んだのか必要以上に口をききませんでした。それで結構な時間車を走らせてようやく実家に着いたんです。


 させられることは農作業で、力仕事という時点でもう気が重かったんですが、夫の兄妹も来ているということで、多少は楽になるかななんて思いながら車を降りました。夫はさっさと家の玄関を開けていました、私は帰省のための荷物を持って後から向かいました。夫と義父と義母はさっさと三人で楽しげに家に入っていきました。私は重めの荷物を持ちながら玄関に行くと、女の子が一人立っていてぺこりとお辞儀をしたんです。


 躾の出来た子だなと思いながら、『よろしく』と言って私は奥に向かいました。そのときはたぶん夫の兄妹の娘、姪だろうなと思ってニコリと笑いました。関係をわざわざ悪くすることはありませんからね。


 ようやく荷物を与えられた部屋に広げると、すぐに農作業の手伝いを頼まれました。朝早く、いえ、夜明け前から準備を済ませ車で走ってきたのになと思いましたが渋々頼まれたとおりに作業をしました。稲刈りなんですけど、コンバインを持っていないので稲を一束ごとに立てられた竿のようなものにかけていくんです。個人でやるからコンバインは要らないといっていましたが、アレをやっているときは貯金を切り崩してでも実家にコンバインを買ってあげたくなりました。


 そんな重労働をしてから汗と泥にまみれたのでシャワーを浴びて着替えることにしました。疲れを流して浴室を出てからバスタオルの用意を忘れたことに気が付きました。そこで困っているとそこに来たときの女の子がバスタオルを持ってきて『はい!』と渡してくれたんです。随分できた子なんだなと思いながら着替えて部屋に行くとその子はいないんです。


 姪なので親の部屋に帰っているのだろうと理解してそれからもそれなりにこき使われてようやく寝ました。そのときの夢の中でその女の子が私に笑っているんです。人なつっこい笑顔だったんですが、そこで目が覚めると金縛りになっていて、体も動かず声も出せないんですが、隣で寝ている夫はなんだかうなされているのが聞こえてきました。そのまま寝ると、翌日には夫がもう帰ろうと言い出したんです。


 数泊はするのかなと思っていたので意外でしたが、あの稲の後始末をしなくて済むと思った私はその案に乗ってさっさと都内の家に帰ったんです。


 ただ……あの子にお礼とお別れを言っていないのが心残りだったので、帰りの車で『やっぱりお小遣いとかあげた方が良かったかな?』と夫にそれとなく訊くと、『誰にだよ』って言うんです。


 探りを入れたんですが、夫は本気であの子のことを見ていないようで、話を打ち切ったんです。


 と、まあこれが一連のできごとなんですが、何故怪談かというと、私が帰りにその質問をしたときに夫が酷く狼狽えた様子を見せました。ああ、何かあったんだなと直感したのですが、私は今、来年の帰省の時にはその子に何か思い出になるお菓子か玩具でもあげようと思っています。よく考えたらその子って着物姿だったんですよね。なんで不思議に思わなかったんでしょう。


 彼女の話は以上である。私が謝礼をいって別れるときに『今時の子供にあげるものって何がいいんでしょうね』と笑いながら言っていたので、来年も帰省はするのだろうなと思った。その女の子が誰なのかは謎のままだ。

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