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炎天怪談  作者: にとろ


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冷房の効果

 テラチさんはマンション住みなのだが、その物件で奇妙なできごとに遭遇したそうだ。


「アレはあまり後味のいい話ではないんですけど、まあ誰かが死んだわけじゃないしいいですかね?」


 一応死者の出るような話ではないと聞いていたが、彼も随分と軽々しい態度で話すんだなと思った。


 話は夏が春を越えて徐々に見え始めてきた頃のことだそうだ。


「私はどうも暑いのが苦手なんですよね、だからそのときも少し暑いのでエアコンをかけて寝ようとしたんです」


 ああ、エアコンをかけるのは前年の秋以来です。冬は炬燵があれば眠れますから、あんまり健康には良くないんでしょうけどね。


 それでエアコンを早速かけて部屋を冷やし始めたんですが、何かがおかしいんですよ。いえ、エアコンからはきちんと冷風が出ているんです。ただ、エアコンから出てくる空気が何かおかしいって言うか……そのときはその正体が分からなかったんです。


 翌日のことなんですが、なんだか部屋が薄暗いまま目が覚めたんです。窓からあまり光が入っていないので近寄ってみると窓に靄がかかっていたんです。触って見るとそれが水だと気づいたんです。それと同時に違和感の正体はエアコンから出ている空気がやけに湿っぽいせいだと気づいたんです。


 エアコンの中には冷房をかけるとき同時に加湿する機能が付いた物もありますが、部屋の備え付けのエアコンにそんな機能はありません。だから冷房をかけっぱなしにすると仕組み上は湿度は下がるはずなんですよ。それなのに何故か部屋の湿度が上がっているんです、おかしいですよね?


 私も暑がりなもので、暑いときにエアコン無しの生活なんて考えられないんです。仕方なくひとまずの対処にドラッグストアで沢山の除湿剤を買ってきたんです。これで問題が解決するだなんて思っていませんが、ひとまずの対処にはなります。修理なりなんなりを考えるにしても時間がかかりますからね。


 それから数日で使い物にならなくなる除湿剤を買い続ける羽目になります、迷惑だなあと思いつつも原因不明なので手の出しようが無いんです。気休め程度に室外機の様子を観察しましたが、部屋で冷房をかけているときちんと温風を吐き出しているんです。だからきっと故障では無いのだと思っていたんですが、手をこまねいたまま数日が経ったんです。


 ある日部屋にお年寄りが訪ねてきて、上の階に住んでいる人の親だと名乗ったんです。なんでも、息子が病気で田舎へ帰るので挨拶に来たと言うんです。ここ最近のこともあったのでその方にそれとなく尋ねたところ、ある日急な頭痛に襲われて緊急搬送された先で卒中だと言われたそうです。詳しいことは分かりませんでしたが引っ越すのだと言うことだけは分かりました。


 しかし、なぜ同じ階の人ならともかく、下に住んでいるというだけで私のところへ挨拶に来たのか気になったのでそのことを聞くと、なんでも両隣の部屋からは生臭いからなんとかしてくれと再三言われていたそうです。それを知ったご両親が息子の部屋を調べると、手入れされなくなったアクアリウムが全滅して異臭を出していたそうです。それで、下に住んでいる私にも不快な思いをさせたかもしれないと挨拶に来たそうです。


 なんとなく湿っぽかった理由は察したので息子さんが回復すると良いですねと言い上の階は空っぽになりました。


 それからは案の定、エアコンが湿気を吐き出すことはなくなりました。人間でなくとも幽霊に近いものになるのか、あるいはアクアリウムの水から出た湿気がここまで伝わってきたのかは分かりません。ただ、今ではすっかり解決したので何事も無く住んでいます。


 そう言ってから彼はアイスコーヒーを一息に飲んで私の謝礼を受け取ると去って行った。


 私は人間以外が霊的なものをもつことを否定はしないが、奇妙な事もあるものだと思った。

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