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炎天怪談  作者: にとろ


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梅雨の後

 梅雨が明け、本格的な夏がそろそろ来るかというころ、エアコンの室外機が温風を吹き出して居るのが当たり前になってきたころのことらしい。


「大したことじゃないと信じたいんですけどねえ……」


 元某女子校生だったアリタさんの話はなかなか後味の悪いものだった。


 自転車を走らせていたんです。まだ高校に通学していた頃の話です。通学するときに坂を下るところがあるんですけど、坂の手前にさしかかったところで何か食べ物……肉か魚のようなものが傷んだときのような匂いがしたんです。この辺にそんなものがあるのかな? と思いつつペダルを漕いで坂道に行きました。


 あっという間に下り坂は過ぎていくんですが、下っている途中にひときわ匂いがきつくなったところがあったんです。ふと左右を見ると真っ黒なコートを着た……たぶん男でしょう、がちらっと見えました。その男は暑い中坂の途中にある文具店のエアコンの室外機の前に立っていたんです。この熱いのに何考えるんだろうとは思いましたが、匂いがきついのでその場から離れるべくペダルを漕いで一気にそこを通り過ぎました。


 高校ではエアコンが効いているので外の暑さや、あの音この事なんてすっかり忘れていました。


 そのまま授業が終わって下校することになったんですが、帰りは行きに通った下り坂を上らないといけないんです。そこそこ急な坂だったので汗をかきながら自転車を押しました。ただ、途中でまた同じ匂いが漂ってきたんです。暑い中なので道ばたで何か動物の死体でもあるのだろうかと思うと、そんなものは見たくないので道だけを見て進みました。


 ただ、行きに通った文具店の横にあの男が立っていたんです。黒装束で全く動いているようには見えませんでした。梅雨も明けたんですよ? 普通にそんな中で平気で立っていられますか? まるで動いた様子がないんです、ご丁寧に室外機の温風を浴びる位置に立っているので気味が悪くなって自転車を押す力を強くして早くその場から離れることにしました。


 通りがかりに思いっきり臭い匂いがしましたが、無視して駆け足で坂を登り切りました。そこでもう匂いは消えたんですよ。


 もう大丈夫と思ってつい振り返ると『ドスン』という音がして、そこでは男が着ていた服だけが中身が急に消えたように残っていました。脱いだとかそう言うのではなく、消えたんだと思います。


 そこからは自転車を必死に漕いで家に帰るとエアコンをかけてスポドリを飲みました。それ以来その男は見ていないんですが、もう終わったと言うことでいいんでしょうか?


 私は『それだけであれば終わったのでは』と答えると、彼女は渋い顔をして『後日、坂の上のマンションの前に救急車とパトカーが来ていたんです。あの男との関係が繋がると嫌だと思って見なかったことにしているんですけどね。


 そういうことなので、彼女からこれ以上は完全な推測になる。そんな不気味なことを考えても仕方ないので『あなたとは縁が切れたと思いますよ』と言葉を濁して伝えておいた。

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