表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎天怪談  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/74

御利益か災いか

 カトーさんはお盆に久しぶりの帰省をした。就職してから多少放置気味だったとはいえ、墓を完全に無碍にするわけにもいかないそうだ。彼の大学の学費は祖父母に出してもらったのでその分、お盆くらいは顔を出しておこうという考えだったそうだ。


「お盆の実家でキュウリの馬と、ナスの牛を見ながら、そういやこんなのも作ってたななんて思いながらだらだらしてたんだけどなあ……両親そろって実家だから甘やかすつもりは無いとか言ってこき使うんだよ。あんたらのために帰ってきたんじゃねーっての」


 でさ、そうして家の力仕事や細々したことをしながら休暇を過ごしたんだよ。そんな時に『墓参りに行ってこい』って言うんだよ。自分たちはもう行ったからお前も世話になった人たちに挨拶してこいってことらしい。死んじまったら感謝も何もない気はするがな、まあそういうのは気持ちって事なんだろう。渋々墓参りの準備にライターと線香を持って墓に出かけたんだ。


 墓参りはしなきゃなって思ってたから死んじまっているにしても顔くらい出しておこうかって思いながら歩いて行ったんだよ。近所の寺の墓地に来て、線香の束を出してライターで火を付けたんだ。独特の匂いが漂ってきたな、そういや仏間じゃよくこの匂いが漂ってたななんて思いながらご先祖様とやらの墓に線香を置いて言ったんだ。爺さんとばあさんの墓にはサービスで余った線香をまとめて立てといたよ、ああいうのは量が多くて悪いってこた無いだろ?


 それで墓参りはおしまい、あとは帰るだけになったんだが……しくじったんだよ。墓を区切っている石に足を引っかけて転んだんだ。そんな時は悪いことは重なるもんで足が別の石に思い切り当たってさ痛みで悶絶していると寺の住職に救急車を呼ばれたんだ。


 ああ、骨折だったよ。休みだってのにとんだ災難だなって思いながら運ばれた先で寝てたんだ。そんな時消防車のサイレンが鳴ったよ。何の偶然だろうな、実家で火が出たんだそうだ。一応全焼は免れたが、俺以外の家族全員が火傷とかの怪我をしたんだ。しかも傷跡が残るんだとさ。


 その晩の夢にさ、爺さんとばあさんが出てきたんだ。その……俺に微笑んでいるのかと始めは思ったんだよ。でもさ、なんか違うんだよ。微笑みだったら好意を感じるはずじゃん? あれはなんて言うか……好意と言うより嘲りのようなものを感じたんだよ。


 それでも火事から俺を助けてくれたんだと信じてるよ。だってさ、俺がちょうど居なくなったタイミングで仏壇から火が出たなんて出来すぎた偶然だろ? だから俺はその事を深く考えないようにしてるんだ。


 カトーさんの話はそれで終わった。彼は今では実家への帰省を諦め、墓参りだけをして泊まるのは地元のビジネスホテルにしているそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ