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炎天怪談  作者: にとろ


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見えざる手

 梢さんは父親が工場で勤務しており、地方だったため跡継ぎとして期待されていた。彼女は工学部に進学し、無事卒業したら地元で『オヤジの後を継いでくれないか』という声に答えて地元に帰った。


 始めは仕事を覚えるだけの日だった。苦労はしたものの、引退した父親がきちんと引き継ぎマニュアルを作ってくれていたので支障はなかった。


「ただ……仕方ないですが父も私が戦力として数えられるころには逝ってしまいました。感謝はしているんですが不思議な事があったんですよ」


 彼女は割と真面目な顔で言う。それは夏場に起きたことだそうだ。


「夏でも仕事をするのは当然ですが、広い場所を冷やすには冷房が足りないんですよ。そのせいで夏場は暑くって……古株の人も『昔はこんな暑くなかったのになあ……』と愚痴っていましたよ」


 無限に予算があるわけではないので仕方ないんですけど、夏場は頻繁に汗を拭きながらの作業でした。キツいのもありますし、疲れも増加するんですよ。おかげで寝る前に栄養ドリンクを飲んで、朝起きたらエナジードリンクを飲んでなんて言う不健康な生活になっていました。生き急いでいるって言うんでしょうか? 目の前のことに精一杯でしたよ。


 ただ、アレが起きたのは父が亡くなって数年後の夏のことでした。


 あの日はプレス機の操作をしていたんです。当然製品に汗が付こうものなら大変なので汗を拭いながら作業をしてたんですが、その日は熱かったので意識がはっきりしないような状態でプレス機のボタンを押しました。汗を拭いてはプレスするという作業が続いたんです。


 こういう時もあるかなって思いつつ、さっさとシャワーを浴びて汗を流そうと家に帰ったんです。そしてシャワーを浴びていたんですが、シャワーの温度調整ダイヤルを見て気がついたんです。


 あの手の製品って熱すぎる温度でやけどしないように危険な温度に設定するときはボタンを押すんです。そこで気が付いたんですけど、その日作業をしていたプレス機にも動揺の安全策がとられていたんです。


 金属板を上下からプレスするって仕組みは単純なんですけど、人が指や手を詰めないように、動作させるときは左手と右手でそれぞれ手が届かない距離にあるボタンを両方押さなければ動かないようになっているんです。


 でも……その日は暑くってそんなことも忘れて淡々と右手でボタンを押しながら左手で汗を拭っていました。左手……ボタン押してないんですよ。


 なんで動いたのかさっぱり分からないんですが、シャワーを浴びて服を着ているとふと見えたんですが、実家から持ってきたものの中に父が使っていたタオルがそのまま入っていたんです。それには工場のロゴと名前が入っていました。


 機械側の不具合で片付けるのは簡単ですけど……やっぱりもう一個のボタンは父が押していたんじゃないかと思います。仕事をやりやすくしてくれたつもりなんでしょうが、『危ないじゃん!』って思いました。


 これも父の優しさなんでしょうか? 余計危なくなっただけのような気もするんですけどね。


 彼女の話は以上だが、後にその工場でプレス機に動揺の不具合が起きたとは報告が上がっていないそうだ。

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