表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎天怪談  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/74

釣りに行かないか?

 それはスズキさんが夏休みにかけて体験したことだ。それなりに古い話になる、今の読者諸氏には友人に電話をかけるのに友人の家にかけて家族に取り次いでもらうような時代だったと言えば分かるだろうか。


 夏休みも終わりに近づいていた頃、ふと家の電話が鳴った。休日だったが、友人たちとは遊んだし、後は学校で会うくらいなので電話はかけてこないだろうと出なかった。どうせ家の誰かが出るだろう、そう考えていると母親の声で『アンタに電話だよ!』とがなる声が聞こえてきた。いくら夏休みだからってヒマを持て余すなら宿題くらい片付けろよと思いつつ電話に出た。


「~~なんだけど、釣り行かないか?」


 彼によると相手の名前がどうしても思い出せないらしい。当時はナンバーディスプレイなどないのでもはや確かめる術はない。


 とにかく彼は残り少ない夏休みを宿題にあてていたのと、釣りなら友人とたくさんしたので『いや、やめとく』とだけ言った。そこで電話はガチャンと切れた。なんだか受話器を叩きつけたような音と共に切れたので、随分と乱暴なやつだと思ったらしい。


 それから必至に宿題を終わらせ、夏休みは終わった。九月に登校したのだが、友人たちが真っ先にスズキさんに話しかけてきた。


『タケダのやつが死体を見つけたらしいぞ』


 そんな物騒な話から話を聞いた。


 どうも、タケダは釣りに行ったところ引っかかったものを引っ張っていると、白かったであろう服が海面に浮かんできて、それは女の遺体だった。腰を抜かして大急ぎで交番に走り説明をした。すぐに駐在さんと一緒に遺体の確認をして、一応の救急車と、引き上げるための部隊を呼んだそうだ。


 そうして回収された遺体は亡くなってから数ヶ月が経っていたらしい。それに結構なショックを受けたタケダさんは少しの間学校を休んだ。少しして登校してきたときにはすっかり元気そうだったので彼に話しかけると、なんとも奇妙な事を言う。


『なあ、お前は俺を釣りに誘ったか?』


 真剣にそう効いてきたので『いつの話だ?』と複数回釣りは一緒に行っているので訊ねると、夏休みの終盤、スズキさんのところへ電話がかかった日だった。


「誘ってないけどな」


『そうかあ……お前でもないか……」


 なんだか意味深な質問だったので嫌がる彼に詳細を聞くと、誰だったかは思い出せないが釣りの誘いが来たので、彼は宿題もそっちのけで釣りに急いだ。


 そうして海の近くで入水した遺体を見つけたということだった。


 スズキさんは自分のところに可愛ってきた電話のことを言おうか悩んだのだが、言っても怖がらせるだけだろうと思いそれは言わないことにした。


 後日分かったのだが、その遺体の情報が判明したときに、彼女は近くの有力者の娘で、彼女の家には電話機があると皆知っている家だった。


 しかし遺体は死後数日が経っていたのでその電話は彼女によるものではないと断言した。


「それ以来なんですが、どうにも釣りをする気が起きないんですよ」


 スズキさんは愚痴っぽくそう言った。自分が体験したわけではないが、その友人からの話とあの電話の件が釣りをしようかと思ったときに毎回頭をよぎってしまい、やる気が無くなってしまうのだそうだ。


 今ではスズキさんはインドアな趣味をいろいろ探しているそうだが、まだしっくりくる趣味がないと私に愚痴っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ