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炎天怪談  作者: にとろ


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蜃気楼

「昔、変なものを見たんですよね。ただ、それ自体よりもそのバックストーリーの方が気になるんですけど……」


 飯田さんはそう語る。彼女が小学生だった頃見た奇妙なものがあるらしい。


 小学校の教室が二階になって割とすぐのことでした。当時でもおじいちゃんと呼ばれるような年をとった先生が担任だった時のことです。あの時は何の授業だったかは覚えてないんですけど、退屈な授業だったのでぼんやりと窓の外を見ながら退屈だなぁ……って呑気に外の様子を見ていました。


 暑苦しい教室でしたが、当時はエアコンなんてありませんでした。今ほど暑くはなかったので必要無かったのかもしれませんが、水筒を持ってくる程度には汗をかくような日でした。


 そんな中で、窓の外を女の子が歩いて行ったんです。その時は保健室か早退かなと思って見送ったんですよ。何事もなく授業が終わってお昼休みになったんですが……席を立ってゾクッとしました。自分の席って廊下側じゃないので窓の外は歩けないんですよ。あの少女は一体どこを歩いているのだろうと思いながら給食を食べました。その時に誰もあの子のことを話題にあげなかったので、『視えなかったのかな?』と思いました。


 午後の授業では窓の外をチラチラ見ていたんですが、あの少女が歩いて行くことはありませんでした。一体なんなのかは分かりませんが、私はあまり良くないものなのかなと思いました。


 それで、放課後に廊下で先生を捕まえて聞いてみたんです。


「先生、窓の外を女の子が歩いていたんですけど」


「そうか、早退でもしたんじゃないかな。そんなものに気をとられないで授業を聞かないとダメだよ」


 私に諭すように先生は言うわけですが……私が『向こうの窓の外を歩いてたの』と廊下の無い方の窓を指さすと先生はなんだか急に狼狽えたんです。それから言いました。


「飯田さん、蜃気楼というものを知っているかな? 空気が熱くなると光の屈折でありもしないものが見えたりするんだよ。きっとどこかで歩いている子が見えたんじゃないかな。あまり気にしないようにしなさい」


 そう言って話を打ち切ってさっさと職員室の方へ駆けていったんです。当時の私は『そういうこともあるんだなあ』と感心していたんです。でも後になっておかしいことに気がついたんです。蜃気楼は光の屈折で遠くのものが見えたりするだけなので、あそこで見えたとすると一階の窓の外を通った少女が見えたことになりますよね? 普通光がたかだか一階から二階までで九十度も屈折するはずがないんですよ。


 それに今思うとあの先生の反応は何か怖いものを見たようなものでした。私は絶対に何か知っていると思うんですが、同窓会でその事を聞こうと思いましたけど、お歳でしたから同窓会の時にはもう亡くなっていました。だから真相なんて分からないんですけど、アレは学校にいた何かなんだと思います。何かは分かりませんが、知っている人は今でもいるんじゃないでしょうか。


 それが彼女の見たものの全てだった。一体何がいたのかは分からない。ただ、世の中には知らない方が良いものがあるのだろう。きっと飯田さんの先生はその事を調べるなといいたかったのではないだろうか。


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