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炎天怪談  作者: にとろ


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夏への準備

 夏が忍び寄ってきた頃のことらしい。まだ暑いとまで言えるか微妙だった頃に東野さんはエアコンを購入していた。本格的に暑くなってからでは手遅れだと店頭にポップが出ていたのと、冬場にエアコンがバチンと音を立てて壊れてしまったからだ。


「夏場になってエアコンを買うのは遅いと思いまして、早めに買ったんですよ。エアコン本体はともかく、取り付け工事は時間がかかるでしょう? 余裕を持って暑くなる前に交換してもらったんですよ」


 そうして東野さんの自宅には無事新しいエアコンが設置された。一階だったので工賃が追加でかかるようなこともなく、順調に工事が終わり彼女は良い気分で夏が涼しく過ごせることを喜んでいた。


「そのエアコンに何かあったんでしょうか?」


 私がそう訊ねると、彼女は少し悩んでから言う。


「そうですねぇ……一応エアコンがおかしかったんですけど、エアコンのせいじゃないような気がするんです」


 エアコンがおかしいのにエアコンのせいではない? それは一体どういうことだろう?


「ええっと……なにが起きたんでしょうか?」


 それから彼女の夏への準備の話が始まった。まず着替えを夏物に替えて、必要のないカーテンは閉めて日光が無駄に室内を暖めないように遮断する。


「まあ一通り済ませたんですが、本格的に夏になる前にエアコンの試運転をしておかないといけないのに気がついたんですよ」


「それはそうですね、年式が浅くても故障がないとは言えませんから、夏が来る前にきちんと確かめるべきでしょう」


 私がそう言うと、彼女は少し困った顔をした。


「その試運転がおかしかったのよ。いや、きちんと冷たい風が出たの、でも冷房って感じじゃなくて本当に冷え切った風……そうね、冷蔵庫を開けた時に出てくる冷気って言えばいいかしら。そんな温度の風が出てきたから驚いちゃって、設定温度を確認したけど、二十二度の設定なのよ。その時の室温より少し低いくらいで動かしたのにこんなに冷たいなんて思わなかったの」


 しかしエアコンとなれば車の事故車や、家の事故物件のようなことはないだろう。一体何が原因なのか?


「おかしいって思ってエアコンのカバーを開けてみたの、でもしっかり綺麗なフィルターが付いているだけだったわ。なんでこんなに寒いのかと思いながら冷房の設定をそのままにして室外機を見に行ったのよ」


 そこで悲しそうな顔になってから彼女は言う。


「室外機の上で子猫が一匹冷たくなっていたわ。その子猫はきちんと斎場に運んで荼毘に付してから線香を上げたの。そうしたらエアコンはすっかり普通に動くようになったのよ。多分見つけて欲しかったんじゃないかしら」


 そうして彼女のエアコンは無事稼働するようになった。それ以来、故障なしで夏も冬も動き続けているらしいが、彼女によると『それはあの子猫が壊れないようにしてくれてるんじゃないかしら』と言っていた。


 おかげで彼女は今夏も快適に過ごせるのだそうだ。

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