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爆発前の静けさと散華の刹那

 世界から、自分以外の人間が全員消えたような錯覚を覚えた。それほどに街は静まり返り、祭りの喧騒はどこかに逃げてしばらく経っているらしかった。

「ここって、こんなに広かったんだな」

 目の前に広がる中央広場は、何もなくなっていた。日常的に広げられた露店は全て片付けられ、真ん中に噴水を残し、風通しが良くなっていた。

 街の住民も、祭りに参加しに来た客たちも、家屋に籠っているのだろう。それ以外はコボルトの森へと赴き、血を流しているに違いない。それが、自分なのか相手なのかの違いがあるだけの空しい祭りだ。

 耳をそちらへ向けてみる。森の方へと、意識を向ける。——聞こえる。コボルトの怒号、冒険者の雄叫び、バングルディアの嘶き、冒険者の悲鳴。壁に阻まれていても、その声は確かに聞こえた。

 とんだお祭り騒ぎだ。昨日の今日で、街と森の中身が入れ替わったみたいだ。

 バベルは、どうせなら住民も入れ替えて欲しかったと、存在自体が疑わしい神に吐いて捨てた。

 中央広場を真っ直ぐ進むバベルは、噴水の前で立ち止まった。普段は恋人の憩いの場になっているこの噴水も、ここまで風通しが良いと肌寒い。いや、元々ここは肌寒い場所だったのだろう。だから彼らは肩を寄せ合い、この寒さを凌いでいたのだ。

 なんとも間の抜けた話じゃあないか。

 水馬を象った石像と、それを追いかけるように噴射口をぐるりと回る人間の石像。これも御伽噺の何かだった気がする。

(どんな内容だったっけ)薄い記憶を辿りながら、バベルは大きな建物の前まで移動した。(駄目だ。思い出せないや)

 こんな日に開いているのか分からない集会所の前で、バベルは頭を振った。

 今日の目的は、冒険者ライセンスの受領だ。

 レインの件は、昨日で終わった。しかし、ガストンは言った。「バベルには必要になる物じゃ」と。だから受け取りに来た。それ以上の理由はないし、今のバベルには使う機会も無い。

 ただ、暇だった。それだけだ。やる事も無い今日を無駄にするよりはと、ここまで来た。

 幸い、集会所は開いていた。扉を押せば、簡単に歓迎してくれた。が、中はがらんと静寂ばかりが所狭しとぎゅうぎゅう詰めになっていた。それも、扉を開いた瞬間にやっと解放されると、一斉に外へと飛び出し、中に残ったのは扉の蝶番が唸るギギギと言う声と、バベルの靴が床をノックする音だけになった。

 無人の受付には、何も置かれていない。オルソはここで受け取れと言ったが、何もないし誰もいない。さて、どうやって受け取とろうか。

 静かで寂しい風が踊る集会所内でバベルは一人。テーブル席に座って、うんと体を伸ばした。

「これじゃあ貰えないじゃん」

 頬杖をついて、中央広場の見える窓に視線を投げた。

 思えば簡単な話だ。集会所は、コボルトの森に行く冒険者達のために開けていた。出発前の装備確認など、職員がいなくても何の問題もない。しかし、こうなると本当に暇だ。畑仕事など、他の作業者が家に引きこもっているせいで何もできない。農具を集めて保管している倉庫の鍵を、他の人が保管しているからだ。

「…………本でも読むか」

 集会所の二階には、多くの本が並んでいる。バベルが培った知識の殆どは、ここの本棚から来ている。最早、バベルの脳内を知りたければ、ここの図書室内を歩けば大体のことはわかると言って良い程だ。

 二階に向かったバベルは、三方向に伸びた通路を右に曲がる。無人の集会所に、バベルの足音が大きく反響した。

『本日の利用時間は終了しました』

 図書室の扉、に掛札が麻縄で首を吊って垂れていた。扉には鍵がかかっている。職員は、ここを開けては行かなかったようだ。

(そりゃそうか。本って、めっちゃ高いもんな)

 一冊の値段がどれくらいかは知らないが、昔一冊持って帰った時には、オルソに殴られた。しかし、この程度の鍵は、バベル相手には無意味だった。

(ガストンに返し忘れた)ウエストポーチから、針金と直角に曲がった金属板を取り出す。それらを鍵穴に差し込み、針金を上に下に軽く振る。と、何かに引っかかった。そのまま鍵穴を金属板で回すと、ガチャンッ! と、耳に心地のよい解錠音が集会所に響き渡った。

 ——開いた。昔タンゴとの冒険に役立つだろうと解錠能力(ピッキングスキル)を磨いていて良かった。

 ドアノブに手を伸ばし、軽く捻って押す。蝶番が唸りバベルの来方を歓迎してくれた。

「ふふん、楽勝楽勝」

 バベルは針金と金属板をポーチに戻し、本棚に本を入れ落とすように、その身を図書室へと進ませた。

 綴じられた空間は、紙と鉱石インクの匂いが渦を巻いていた。それらを肺に取り込みながら、バベルは本棚と本棚の間を抜けて行く。

 目当ての本があるわけではなかった。ここにある物は、大半が幼少期から読んで脳に刻まれている。今更読み返しても、記憶から引っ張り出すのと大差ない。

 新しい本が、すぐに本棚に追加される事はない。が、バベルの知らない背表紙もそこここに見ることができた。それらの中から惹かれるタイトルを見つけるべく、本棚の棚板を指でなぞる。

 木の感触をバベルに与えた指先が、一冊の本の前でピタリと止まった。

 赤い背表紙の古い本。これは新しく入った本ではない。しかし、今のバベルの興味を引く本は、これ以外には無かった。

『炎剣のフレイル』タンゴが好きだった英雄譚だ。

 炎の英雄フレイル・ユングの冒険と、エルフとの戦いを綴った一冊。

 本の背表紙に指をかけて引き抜く。本も棚もなんの抵抗も見せず、バベルの手元へと本を差し出した。

 表紙全体も赤い革張りで、中心に空けられた縦長の楕円形の窓に、一人の青年と大きなエルフが向き合っている絵が描かれている。その本を片手に、本棚前に置かれた読書机の上に腰掛けたバベルは、本を開いて異世界へとその身をそっと落とし込んだ。

 内容は概ね記憶の通りだった。英雄フレイルがエルフの王から炎の魔剣を取り戻し、人々の笑顔を取り戻す。心温まるハッピーエンドだ。

 英雄フレイルは、タンゴのお気に入りだった。薄い記憶では、この後フレイはさまざまな地を訪れては、困った人々を助けていく。そうして旅の最後には、龍皇と呼ばれる怪物を殺し物語の幕は閉じられる。

 バベルが手に持つ本は、その一番最最初。所謂、英雄譚のプロローグである。

「もっと、現実に近づけて書けよ……」

 目の前に広がる本の世界を見渡すバベルは、紙とインクの風にそっと独り言を載せた。


『炎剣のフレイル』 著:ヴォルガダ・フィルム


 昔々の大昔。この世には、人々を恐怖で支配するエルフの王様がいました。

 恐ろしいエルフの王様が支配するこの国の人々には、笑顔が一つも見られません。それもそのはず。エルフの王様が、国から灯りを全て奪ってしまったからです。

 灯りと、一口にいっても、色々ありました。

 それは、夜道を明るく導くランタン

 それは、大人に力を与える子供の笑顔

 それは、子供を勇気づける大人の笑顔

 その全てを、エルフの王様は、奪ってしまったのです。

 奪った灯りは、この世で最も恐ろしい魔剣に取り込まれ、エルフの王様の力となってしまいました。それを見かねた一人の青年、フレイルはこう言いました。

「僕がエルフの王様を倒す。そして、この国に灯りを取り戻す」

 青年の言葉に、大人達は口々に、こう言いました。

 危険だ

 危ない

 駄目だ

 どうせ勝てやしない

 その言葉を全て受け止め、フレイルは笑顔でこう言いました。

「大丈夫、僕がみんなを照らしてみせるから」

 フレイルは、エルフの王様が待つ玉座の間へと向かいます。

 道中には、幾つもの罠が仕掛けられていました。

 迷いの霧の森

 毒蛇の川

 ドラゴンの洞窟

 そのどれもが、フレイルを殺そうと襲いかかりました。しかし、フレイルは諦めません。国の人々のため、フレイルは前へ前へと進みます。

 ようやく着いた玉座の間。中で待ち構えるはエルフの王様。フレイルは覚悟を決めて、その扉を開けました。

「待っていたぞ、英雄フレイル。私を倒しに来たか」

「エルフの王様、僕はあなたと戦いたくは無い。ただ国の人々に灯りを返してほしいのです」

 フレイルの前で、玉座に座るエルフの王様は、邪悪な笑みを浮かべます。

「それはできん。私は、この国のすべての灯りでより強く、より恐ろしい魔王になるのだから」

「残念だ、エルフの王様。僕はあなたを止めます」

 フレイルは剣を抜き、エルフの王様へと駆けました。

「やぁあ!」

 フレイルがエルフの王の心臓へと剣を突き立てました。しかし、エルフの王様は邪悪な笑みをさらに広げ、こう言います。

「私には効かんよ。この魔剣がある限り、国中の灯りで私の命は永遠に輝き続ける」

「そんな」フレイルは驚きました。

 国の人々の大切な灯りが、エルフの王様の道具になっていたからです。

「その灯りはみんなのものだ。返してもらう!」

 フレイルは剣を握りしめ声高々にそう叫びました。すると、突然エルフの王様の心臓へと刺した剣から眩い光が溢れ出てきたのです。

「なっ、なんだこの暖かな光は!」

 エルフの王様は戸惑い、フレイルはその光に笑みを溢しました。

「これは、みんなの灯りだ」

 フレイルの剣は、故郷で作られた大切な剣だったのです。

 人々の灯りを取り戻す——そんなフレイルの思いに剣が応えたのです。

「なんだと、そんなことがあるわけがない。フレイル、貴様ぁ!」

 驚き暴れるエルフの王様にフレイルは言いました。

「この光は、国の人々が僕にくれた灯火の輝きだ」

 フレイルは剣を引き抜き、高く高くに掲げます。

「国の人々は、僕に多くのものをくれた。今度は僕がそれを返す番だ!」

 そう言ったフレイルは、掲げた剣をエルフの王様の首へと振り下ろしました。

「そ、そんなバカな。この私が、こんな人間如きにぃ!」

 エルフの王様の首が地面に落ちました。

 フレイルは勝利したのです。人々がフレイルに託した数々の灯火によって。

 しかし、彼の戦いはまだ終わりません。魔剣を奪い返したフレイルは、その魔剣に宿った灯りを国の人々に返す旅に出るのでした。

 国の人々から授けられた灯火の剣と共に。


 読み終わった本を机に置いたバベルは、机の上でしばらく考え込んだ。

 エルフの持っていた魔剣とは、恐らく魔法武器だ。しかし、魔法武器にしては些か書き方が変だった。

 抽象的過ぎる。剣が使うのはプレーンと呼ばれる魔力だ。人々の何それは関係ない。なんせ、人はプレーンを取り込めないのだから。だったら、エルフの王は何を奪ったと言うのだろう。

「もっといい書き方があっただろうに」

 顔も知らない著者——ヴォルガダ・フィルムへ毒吐くバベルは、本を棚にそっと戻した。

 それからは、机の上に読んだことのない本で塔を作り、バベルは読書に没頭した。

 読書は良い。こことは別の世界、全く知らない登場人物と一緒に冒険ができる。たまに意見の食い違いはあるけれど、気に入らなければ世界を閉じて冒険を辞めればいいだけの話なのだ。

(ここよりは、ずっと良い)

 バベルは読み終わった本で、また新しく塔を建造する。塔を解体しては、異世界旅行を楽しみ。帰って来れば、別の塔の礎石として積み上げる。

 どれだけの時間が経っただろう。図書室に来たのは、朝日がまだ頭を出し切ってすぐの頃だったはずだ。

 図書室に時計は無い。ここの運営責任者のオルソ曰く『時間を忘れて情報収集は冒険者の基本』らしい。冒険者は、常に危険と隣り合わせなのだから、情報収集は怠るな。そう言いたいのだろう。オルソの不器用さには呆れ果てるばかりだ。

(こんなんじゃ、誰にも届かないよ)

 いや、少なくとも一人には通じているか。そう考え直して、バベルは図書室を後にした。

 ともかく、時間の確認だ。小腹が空いた、昼時だろうか。

 一階は依然、静かな空間が広がっていた。外も同様。噴水が上げる水飛沫の音が、ここまで響いてくる。

 どこかで買い食いできるところがあれば良かったが、これではどこも店を閉めているのだろう。

 一階のカウンター上に載せられた、十三個の石が埋め込まれたボードをバベルは確認する。誰が最初に発見したのかは知らないが、ごく稀にこの世界の時間を示す石が発見されることがある。その名を<日割り石>といい、己に刻まれた時刻になると、黒くて透明感のあるその石体を乳白色に変色させる力を持っている。

 ボードに嵌め込まれた日割り石の中で、丁度正午を示しすものが、その体を白く変色させていた。随分と、時間が経つのが遅い。

「……読書に戻ろ」

 本の世界に入り、全てを忘れよう。ヨシ、そうしよう。

 階段を一段一段のっそりと上がるバベルは、階段の踊り場で立ち止まった。そこには、中央広場を眺められる天窓が取り付けられている。

 天窓の外は相変わらず静かだ。森の方は騒がしい。なのに……。

 バベルは天窓を見て固まった。——何かが来る。直感がそう告げていた。妙な胸騒ぎがする。森の喧騒を押さえ込んで耳に飛び込んでくる。ゴゥンゴゥンと鐘の音に似た騒音が、森のお祭り騒ぎを遠ざけ、体の内側から鳴っていた。

 鐘の音をかき分け、意識を森の方へと向ける。今も、不協和音な戦闘音が聞こえてくる。勘違いだ。そう思いたかったが、脳は未だ危険信号を発していた。全身の産毛が逆立ち、心臓が打つ音が段々と速くなる。

 心臓の音が最高潮に達したその時——!

 視界を奪う眩い白光。次いで、内臓をひっくり返すほどの衝撃と、耳に突き刺さる爆発音。

 集会所の外、街の中で、何かが爆発した。

 勘に従ったバベルは、一階へと引き返していた。数秒前まで立っていた階段の踊り場は、砕かれた天窓が降り注ぎ、陽光をはんさしゃする針の山と化していた。

「——っぶな、何が起きた?」


 ——!

 ——————!

 ————————!


 最初の爆発を皮切りに、街の各所で爆発が起きる。その度に白光と衝撃、爆音の繰り返しで、体がバラバラになりそうだった。

 どれくらいそうしていたのか。ようやく、街に色と音が戻った頃。床で丸くなっていたバベルは、上体を起こし視線を外へと投げた。

 住民の悲鳴が、四方八方から街中を揺らしていた。爆発音は耳に悪かったが、こっちの騒音は精神的に悪い。心臓が二、三回ひっくり返った気がする。

「何なんだよ、一体?」

 混乱した頭で、バベルは立ち上がった。

 何が起きたのか、何が起きているのか、何が起きようとしているのか。その全てが、わからなかった。

 急いで外に出たバベルは、集会所の前で立ち尽くす。周囲から立ち登る土煙が、視界を塞いでいた。どれも軽く、風に流されてはいるが、それでも晴れることはなく、地面から無限に湧いていた。

 爆発音と建物の崩落音。そこに住民の悲鳴が混じり、耳の中にぎゅうぎゅうと無理やりに押し込められる。しかし、そこに不可解なものが混じっていることに気づいた。

 ——魔物の鳴き声だ。

 混乱した頭は、一周回って冷静に落ち着いた。

「魔物が、街に入って来た」

 自分で言っていて変だとは思っている。爆発の直前まで、確かにバベルは森の喧騒を耳にしていた。魔物がここまで来れるはずがない。

 獣道かとも考えたが、オルソはタンゴの地図を複写している。それを他の冒険者に渡していないわけはない。だとすれば、その道から森に侵攻する冒険者部隊だっているはずだ。

 残る可能性——魔法か? 推測の一つにしては一番スッと頭の奥底に入ってくるのを感じたバベルは、集会所前から移動を始めた。もう時期、ここも戦場になる。多くの人がこちらにあちらにのおおわらわだ。この状況、この混乱。何が起きているかはっきり分かった。

 バベルがもし魔物として生まれていても、今のバベル自身でも代わりはない。選択肢は一つだ。

 生きていくには食事が必要なのだ。


 西南の冒険者区画の端。どこに向かうでもなく走り出したバベルは、気づけばここにいた。

 こちらは比較的逃げ惑う人が少なかった。それもそのはず、ここにいるのは冒険者を支える商人と鍛治師ばかりだ。その辺の住民より、よっぽど血の気が多い。現に今も、左右の家屋の内外から、魔物と人間の怒号が飛び出して、こちらの五臓六腑を揺さぶってきた。

 ——お前はどうする?

 突然、喧騒を押し退け静寂と共に耳に飛び込んできたのは、五年前のバベルの声だった。声変わりをしたかしていないかの間の頃の、安定しない声が聞こえた。視線を少し下に向ければ、四角く切り出した石材で作られた街の道に、ブロードソードを突き刺し柄の端に片方の手のひらを乗せた少年が、こちらを睨みつけるように見上げて立っていた。

「どうって、守らなきゃ」

 ——何を? 誰を?

「街を、コーラルに住む人達を」

 ——何の意味がある? こいつらの自業自得だろ。勇者を祭り上げ、森の現状をまともに知ろうともしない。森に住む住民を勝手に敵視して、一方的な意見で殺し合いを望んだんだろ。

 両腕を広げて、幼き日のバベルは嘲笑をその顔に貼り付けていた。しかし、その目には確かな怒りが燃えていた。

「……確かに、そうなのかも知れないな」

 少年バベルは満足げに笑った。

 ——さっさとこの街を出よう。ライセンスが無くても、コーラルが消えたとなれば、特別措置が施される。それで他の街でも生きていける。

「それは、できない」

 ——何故?

 少年バベルは眉根を寄せて、現在のバベルの顔を仰ぎ見た。

「ガストンに、まだ伝えてない事があるんだ」

 腰に差した短剣。ガストンから貰ったアルマの柄を握り締め、今朝のことを思い出す。

 目を覚ますと、傍に座っていた家族が、姿を消していた。伝えなきゃいけない言葉があった。しかし、ガストンはそれを持って行ってはくれなかった。

「だからせめて、おかえりぐらいは言わないと」

 馬鹿なことだ。わかってる。ここで何をしたとしても、その結果はこの街自体がすでに表していた。

 バベルとすれ違う商人や鍛治師は、まるで自分が一番だというように、皆競走をしている。一番が、一番可哀想な被害者だとでもいうのだろうか。

 ここからどこに逃げるのかすらわからない。ゴールの無い競走は、街の至る所で起きている。バベルの耳に届く悲鳴がそれを教えてくれた。

「誰か! 助けて!」

薬師通りから出てきた一人の女性が、石畳を転がった。前方約十メートル。その先からは魔物の臭い。

「コボルトか……」

 ——どうする気? まさか殺すの?

 短剣を引き抜こうとしたバベルの右手を、少年バベルが止めて来た。

 まだいたのか、いい加減にしてくれ。

 心の中で怒鳴ろうが無駄だ。これは、自分自身なのだから。

「助けて!」

 ——助けが必要なのはどっちなのかな?

 言いたい事は分かる。コボルトも生きるのに食事は必要だ。特に、いきなり始まった騒乱の中にいてはなおのこと栄養源は確保しておきたいはずだ。対して、女性はバベルの知り合いではない。助ける理由がない。

 爆発音を最初に聞いた時から、ずっと左腕に熱がこもっていた。その不快さが、ずっと脳を締め付ける。良い加減、この感覚にもウンザリだ。

 「どっちも助けない。あの人達の問題だ」

 右手を短剣から離したバベルは、周囲を見渡す。

 ここは冒険者区画だ。装備は余りが出るほど、その辺に転がっている。死にたくなければ、皆手に取るだろう。

 ——僕ってそんなに最低な人間だったっけ?

 こちらを制止しておいて、少年バベルはその幼い顔にいやらしい笑みを浮かべていた。

「うるさいよ。僕は、見ず知らずの人を助けるほどお人好しじゃない」

 吐き捨てるように呟いたバベルは、体の向きを百八十度反転させた。と、その時、

「だったら俺を助けろ!」

 聞き慣れた男の声が聞こえた。背後から聞こえたその声は、風に流れてその姿と共に、バベルを追い越し、町中から浮き上がる喧騒と混じって中空へと飛び去った。

「だらぁあ!」

 赤黒色の大剣を下段に構え、コボルト目掛け突進する。石畳に触れた剣が、そこに鋭く細い痕を残す。太陽の光が、彼の赤みがかった髪を煌めかせる。

「タンゴ!」

 タンゴ・トリーゲル、バベルの親友が、コボルトへと突っ込んでいた。

「グギャ?」

「ふんっ!」

 コボルトの黄変した瞳と、タンゴの緋色の瞳が交差する。女性以外、目に入っていなかったコボルトは、間抜けな声を出して防ぐ事もなく、大剣を小さく痩せ細ったその体で受けた。

「ギャギャギャ——! ギャ、ギャ……」

 建物の壁に血化粧を施し、コボルトの心臓は鼓動を止めた。バベルの前で振り上げられたタンゴの大剣が、その身に別の赤を彩り滴らせた。

「あ、ありがとう、ございます!」

 泣きじゃくった女性はそう言いつつも、ふらふらとした危うげな足取りで、どこかに逃げて行った。しかし、そっちにも魔物はいるのに、どこに向かっているのだろう。

「なんですぐ助けなかった!」

 タンゴが剣を石畳に突き立て、こちらを見た。その目には、確かな怒りが燃えている。

「知らない人だったから?」

 昨日の事で、バベルは多少なりともタンゴの事を引きずっていた。そのせいか、タンゴを前にバベルは最も悪い返しをしてしまった。

「お前——っ!」

 タンゴの視線が、バベルの背後へと貫通した。何を見たのか、この状況では、不思議なことは何もない。

「た、助けて、助けてくれ!」

 今度は、青年の悲鳴が聞こえた。タンゴが見ている方からだ。しかし、その青年を狙っている魔物を、バベルは知らなかった。

 その魔物の臭いは、二度行った森の中で嗅いだことのないものだった。

 湿気をたくさん吸い込んだ植物と、生臭い血を混ぜたような臭い。鼻の奥に纏わりつかれて気分が悪くなる。

 振り返ったバベルの肩と、青年の肩がぶつかった。

「ちょっと待って。何があったんだ?」

 バランスを崩し、倒れそうになった青年を、タンゴは支えて声をかけた。

「ちょ、何だよ、は、離せ! 魔物だ! 魔物が街の中に!」タンゴが掴んだ腕と肩を振り回し、青年は暴れて叫び散らす。

 一種のパニック状態だからしょうがないのだろうが、助けてもらってこれはどうなのだろう。バベルはそう思った。

「どんな魔物を見たのかって、聞いてるんだ」

 対するタンゴは、掴んだ両方の手に力を込めている。正気に戻したいのだろうが、そんなに力込めたら骨が折れてしまう。

「知らねぇよ! 離せ! もう、そこまで来てんだよ!」

 確かに、何かがこちらに迫ってきていた。聞きなれない足音。金属質で鋭利な物が、石畳を砕き割る音が聞こえる。頭上からは、鞭をしならせているのか、風を切って建物を崩す音が断続的に聞こえた。

「ギュルルルル!」

 魔物の鳴き声だろうか。金属をすりつぶしたような声だ。臓腑を震わせるほど大きく、不快だった。

「ひっ、ひぃぃぃ!」情けない悲鳴をあげた青年は、掴まれた腕を力任せに振り払い、どこかへ走り去った。

 土煙の向こうで、何かが揺らめいている。とても大きい。全長およそ三・五メートル、幅一・五メートルの巨体。煙の向こうで揺らめくその出立ちは、異形の一言に尽きた。

「バベル。これでもお前は、手を出さないつもりか?」

 剣を構えるタンゴが、煙の向こうの質量の塊を睨み付け、こちらへ問いかける。しかし、本音は別だ。

 ——こいつは強い。一人じゃ勝てそうにない。タンゴはそう考えているのだろう。声にしなくても、その言葉は届いている。なんせ正面から見据えたバベルも、タンゴと全くの同感だったから。

 姿が見えずともわかる。崖から岩が落ちてくるようなこの存在感はミルミクスと同等か、それ以上だ。

「タンゴ、逃げた方が良い。コイツはマズイ!」

 アルマを引き抜いたバベルは、タンゴの隣に立ち構える。その額からは、汗が流れ落ちていた。言っても無駄だとわかっていても、撤退を勧めずにはいられない。熱のこもった左腕が震える。胸でうずくまる獣の笑みが深まった。

「ギャリルルル!」

 刹那、視界に何かが映った。

「なっ!」

「っぶな!」

 反応できなかった。振り返ってみれば、煙の向こうから、二人の間を黒と紫が合わさった枝が伸びて、石畳を砕いて地中俯角にまで突き刺さっていた。

「……なんだ、これ?」

 タンゴの呟きが耳に届く前から、バベルの脳が魔物図鑑を開いていた。

 黒と紫の外皮、いや、外殻だろうか? それをで覆った伸縮自在な部位を体に持つ魔物。生息域は、不明。冒険者の討伐推奨等級は、今のを見るに達級以上だろうか。

 ページを捲る中で、条件に当てはまる魔物を次から次へと見送って行く。

 駄目だ、条件が広すぎる。

「何なんだ、お前」

 バベルの呟きに呼応するように、伸ばされた枝をその巨体へと引き戻す。その速度は、送り時とは比べるまでもなく、枝の先端に取り付けられたそれを、目視で確認することができるほどだった。

 先端を斜めに切られた円柱状で、その中は空洞。先端から、体に悪そうなピンクの液体が、ドロリと滴り落ちていた。

 針だ。煙の向こうの生物には尻尾があり、その先には毒を注入する尾針がついている。

 追加情報を図鑑に入れる。——あった。しかしこれは………………。

 該当する魔物は、確かにいた。しかし、これは現実から遠く離れた結果だった。

「……シックネススコーピオン」

 魔物の名を口にしたバベルは濃褐色の瞳を見開き、全身を硬直させた。対する魔物は、煙の向こうからその巨体を現した。

 巨体を支える八つの足。人間の首など、簡単に切断できそうな二対の鋏角。真っ赤に染まった五対の複眼。それらの特徴は、その昔『死神の使い』と呼ばれる所以として最もだと思った。そして、体液の毒を獲物に投与する白銀の毒尾針と、過剰なまでに全身を固めた紫色の甲殻。その上に着込んだ黒い鎧。どれをとっても、駆け出し冒険者から『討伐』の二文字を吹き飛ばすには十分な存在感を放っていた。

 土煙が幸いした。初見で直に見ていれば、卒倒物だっただろう。

「ルゥルルルル」

 煙の壁から、大きな鋏角が突き出された。ご丁寧に、先端まで紫の甲殻と、真っ黒な鎧で完全武装だ。


<シックネススコーピオン>

 真級冒険者五名以上、もしくは達級冒険者八名以上での討伐が推奨の蠍型の魔物。見た目通りの耐久度を誇り、その尾からは強力な溶解毒を噴出させる。そこに加え、その巨体からは想像出来ない速さで移動する。素材としては優秀で、外殻は防具に、鋏角、尾針は武器に、体液と肉は薬や食料として役に立つ。


「ギギャリリリ」

 前体が、こちらに近づいた。

 さっきの攻撃もだが、この動作。まさか……。

 バベルは目を見開き、自分の至った一つの考えに驚いた。

「くそっ!やるぞ、バベル!」

「待って!」

 汗を流すタンゴの顔が、引き攣っている。あまりの存在感に、少し足が震えている。そんな、今にも剣を振りそうなタンゴをバベルは制止した。当然、タンゴからしたら冗談では無いだろう。目の前の全身凶器を前に、バベルは大人しく餌になれと言っているようなものだ。

「バベル! お前っ!」

「違う。コイツ、人間に慣れてないんだ!」

 目の前にいるシックネススコーピオンは、まるで無垢な子供だ。一度も家から出た事の無い、赤子と言ってもいい。眼前の生物が、自分にとってどう動くものなのか。それを計っているんだ。

「そりゃいい。こっちを敵だと判断する前に、殺せば良いんだ!」

 タンゴは、握った大剣に更に力を込めた。

「ギュリルゥリ」

 赤い複眼がこちらを捉える。長い尾を揺らし、大きな図体をこちらに向ける。その動作はゆっくりなもので、図鑑で読んだような、高速移動は全く見せなかった。

「こいつ、まだ幼体なんだ」

 バベルは感動していた。絶滅したはずの魔物が、眼前に現れたこの事実に。

 ルシオンは、絶滅した魔物を繁殖させていたのか? そんな疑問を浮かべたが、バベルは首を振ってそれを否定した。妙だったから。

 絶滅したはずの魔物を、こんな状態で放り出すだろうか。あの優しげなマゼンタの光を持つ青年を頭に浮かべたバベルには、到底そうは思えなかった。では誰かと聞かれれば、他に魔法で魔物をこちらに呼ぶことなど、魔王ぐらいしかでてこない。が、そもそもこれが魔法による騒動なのかも確定した話ではない。

 唯一わかるのは、目の前の個体がどう見ても、図鑑に書かれた能力を見せていないことぐらいだ。

「ルゥルルルル」

 針の尻尾を揺らし、こちらを見つめているシックネススコーピオンはまだ、襲う気配を見せない。

 シックネススコーピオンは、現代では絶滅した事になっている。あまりの危険性に、人間が狩り尽くしてしまったのが原因だ。当然、当時の冒険者側にも多大な被害は出ただろう。しかし、この魔物は素材としてとても優秀だ。絶滅させた頃には、冒険者市場は暫くは困らなかったことだろう。

 そんな人間に嫌われた生物が、なぜここにいるのか。気にはなるが、それよりもバベルには、隣の友人の命の方が優先順位が高かった。

「タンゴ、僕が気を引く。その間に隙間を狙うんだ!」

「隙間? そんなのあんのかよ」

 シックネススコーピオンは一見、全身を固く守っている。しかし、頭部のある前体、腹部から尻尾の付け根までの後体の間には、鎧も甲殻も纏っていない関節部が幾つも存在している。シックネススコーピオンが柔軟な動きをできるよう、進化の過程で残した弱点だ。

 タンゴの短剣では短すぎる。切りつけたところで、大した傷にはならない。しかし、タンゴの大剣の性能に彼自身の筋力を合わせれば、切断だって可能なはずだ。

「ルルル、ギャリリリ!」

 シックネススコーピオンが大きな鳴き声を発した。耳を塞ぎたくなる甲高い音に、バベルもタンゴも、動き出すのに一瞬遅れてしまった。

 白銀の槍が揺れて、頭上から降ってくる。その狙いは——。

「タンゴ、避けろ!」

 図体のデカい方から。と、考えたのだろう。単純な優先付けだ。

「ハッ!」

 バベルが一番近くの地面に突き刺さった第一脚を切り付けた。当然、短剣と鎧の間で火花を散らせるだけで、刃は全く通らない。それでも、シックネススコーピオンの注意を引くことが目的のバベルは、構う事なくシックネススコーピオンの下に潜り込み、何度も何度も足を切り付けた。その度に火花と金属音が鳴り響き、右手と両耳が痺れてきた。

「ギャルリリリ!」

 足元で動き回るバベルが鬱陶しいと、シックネススコーピオンはその体を揺らし、長い尾針を自身の腹下に突き通してきた。

「タンゴ!」

 足と足の間に隠れるようにして針を避けながら、バベルはタンゴへと合図を送る。その時にはすでに、タンゴは崩れた建物の壁を足場に、中空へと身を踊らせていた。

「分かってるっての」

 シックネススコーピオンの頭上で答えたタンゴは、大剣を上段に構えて自由落下を始めた。

 しかし、ギュリンと短い呻き声を漏らして、赤い瞳の一つが上空のタンゴを捉えた。足の間に入れられた尾針が、素早く引き戻される。次の狙いはタンゴだ。

「させるか!」

 バベルは、短剣を尾針を胴体と繋げる黒紫の枝へと振り下ろした。何度目かの金属音が鳴り響き、眼前で火花が散る。しかし、シックネススコーピオンの尻尾は長い。完全に足の間に入れていた分、引き戻す動作に合わせて、バベルの短剣とぶつかった箇所から火花を撒き散らし続けた。

「ックソ。タンゴ避けろ!」

 空中で身動きの取れないタンゴには土台無理な話だが、バベルは叫び、短剣を振り抜いた。

 ギャリン! と、短剣と尻尾の先端の白銀針がぶつかり、今までで一番甲高い音が鳴った。

「——っぶね!」

 振り抜いたバベルの短剣が針の軌道を逸らしたことで、タンゴの体の拳一つ分横を、白銀の槍が通って行った。タンゴは無事だ。しかし、空中で姿勢を崩したタンゴは、そのまま地上へと戻る事を余儀なくされた。

「タンゴ、生きてる?」

「あぁ、なんとかな」

 一度引いたバベルは、タンゴの隣へ並ぶ。目の前の蠍は、未だ元気に威嚇していた。

「一度動きを止めた方が良い」そう言って、タンゴは大剣を正面に構え、目の前の巨体を支える脚に狙いを付けた。

「そう、だね」

 右手のアルマを確認したバベルは、痺れる右手に力を込め直し、タンゴと同時に走り出した。

 シックネススコーピオンの攻撃は、どれも大振りだ。戦闘経験が無いのだろう。二対の鋏角も長い尾針も脅威ではあるが、しっかり目を開いていれば避けられる。

 突き出される針と、挟み込もうと横に流れる鋏角を避け、タンゴは赤い宝玉が計十個埋め込まれた頭部に迫った。

「おらぁ!」

 タンゴは大剣を横に寝かせ、一閃。赤い線が尾を引き、シックベススコーピオンの足を払う。関節部の装甲の隙間には入らなかったが、タンゴの膂力が、シックネススコーピオンの体勢を崩すことに成功した。

「ギャルリルゥルル……」

 前傾に崩れた所に、バベルは短剣を逆手に持ち、何度も振り下ろした。計五回。その内二回は硬い甲殻に弾かれたが、三個の瞳を潰すことができた。

「ギャン! ルゥルルル!」

 シックネススコーピオンの悲鳴が周囲の空気を震わせた。タンゴは警戒を解かずに一度離れたが、バベルはその悲鳴に一瞬動きを止めてしまった。

「——ッ!」

 刹那、気付けば体が宙を舞っていた。『舞う』なんて綺麗なものではなく、『投げ出した』と言った方が適切だったかもしれない。体に力が入らず、血と一緒に吐き出された空気が、肺を萎ませた。

 何が起きた? 混乱する頭の中で記憶を辿ったバベルは、最後の光景を確認した。

 視界へと迫る黒い塊。それが、バベルの体を空へと打ち上げた。

「バベル!」

 タンゴの声が遠くに聞こえる。とても心配そうだ。大丈夫だと伝えなければなのに、口が動かない。

 体への衝撃、視界はとても低く、すぐ隣で砕かれた石畳が確認できた。

(落ちた、のか……)

 体を這い回る電流が、体に悲鳴を上げさせた。

「バベル!」

 タンゴの顔が視界に現れた。大きく映るタンゴの顔は、心配の表情に歪んでいる。

「だい、じょう、ぶ」

 まだ戦闘中だ。腕に力を込め、タンゴを押しやる。この間にもシックネススコーピオンの尾針が飛んでくるかも知れない。

「行け! すぐ、戻る」

 石畳に体を投げ出したバベルは、タンゴにそう言って、体の痺れに耐える。

「任せとけ! お前が来るまでに、終わらせるから!」

 明るく振る舞うタンゴの表情は、引き攣っていたと思う。心配と恐怖が同居していながら、奮い立たせているのだろう。

 友人を、自分の身勝手で死なせたとでも思ったのだろう。

「ギャリギャリオン!」

 金属質の鳴き声を上げるシックネススコーピオンを遠くに感じる。完全に敵だと認識したらしい。ここから殺すのは、さらに難しい。それだけじゃない。あの個体は今、苦しんでいる。瞳を三個失い、足の一本には深い傷を負っている。タンゴが切り払った足からは青い液体が流れ、地面に染み込んでいた。それでもまだこちらへ向かってくる。逃げない。格上だとしれば逃げる魔物もいるとガストンから聞いたことがあるが、そんな無理難題を今のバベル達がこなせるわけもなかった。

 見れば、タンゴが大剣の腹で攻撃を凌いでいる。シックネススコーピオンの攻撃は尻尾の毒針だけじゃない。触肢から伸びる鋏角と呼ばれる二対の刃がある。普通の蠍ならば一対なのに、魔物の蠍はその倍あるのだから、刺々しさがこちらにある種の威圧感を飛ばしてきていた。

 あの鋏に、打ち上げられた。その事実が体に浸透するのに数秒を要した。しかし、その甲斐あってか体は少し動く程度に回復した。まだ痺れも残り満足に動かないが、左腕は先に復活している。熱が痺れや痛みを早く溶かしてくれたのだろうか。

 タンゴが回収していてくれた短剣を、自由に動く左手で拾い上げる。

「だぁ!」

 右鋏角の一つと正面からぶつかるタンゴの大剣が、派手に火花を散らしていた。至近距離から睨み合っていたタンゴは、気づかなかったのだろう。

 タンゴよりも高い位置へと鎌首をもたげた白銀の槍は、タンゴの頭部へとその矛先を固定していた。一度後ろに縮んだ尻尾は、シックネススコーピオンの筋力によって、バネの伸縮動作のように的確にタンゴの頭部へと迫る。タンゴはまだ気づかない。力比べで、激しく火花を散らせていた。

(タンゴ上だ!)

 咄嗟で、声が出なかった。喉から出たのは肺から送られてくる空気だけで、どれだけ形作ろうとしても、外に出た瞬間に崩れてしまう。意味のある言葉にできなかった。

 肺から一気に空気を出し過ぎた。視界が一瞬ぼやけて、脚の力が抜けそうになる。急いで息を吸い込むと、心臓から送られる血液を感じた。血液は体全体を巡る。その中でも、左腕へと進む血液にバベルの意識は向けられた。左腕にこもった熱が、心臓から送られた冷たく感じる血液と混ざり合う感覚。不思議と、安らぎすら覚えるこの感覚に、バベルは時間を忘れて意識を溶かした。

 視界に映る景色の動きが、徐々に遅くなる。タンゴとシックネススコーピオンの間で花ひらく火花が、長くそこに残っていた。タンゴの頭部を狙った毒針の伸びが、急速に遅まった。

 その他にも、視界に映る倒れ始めた建物の壁が釣り糸にぶら下げられたように、ゆっくり地面を目指していた。空を目指して登る煙が、その身を風に煽られる様を、じっくりと観察できた。

 全てがゆっくりに進む。時間を忘れたバベルだけが、この世界でいつも通りに動けた。

「何だ、これ」

 体の感覚が完全に戻ったバベルは、その世界を見渡し歩く。誰も彼もが、ゆっくりと動いていた。中には、走っているのか、空中にしばらく浮いている者もいた。

 いきなりの出来事に、バベルの頭は完全に思考を放棄した。この世界が何なのかも、今起きている現象が現実なのかも、バベルの脳は考えることを拒否している。それでも一つ、やらなければいけないことだけは、わかっていた。

 タンゴを助ける。この状況ならば、できることは多くある。しかし、真っ先にやる事など、それ以外にない。

 シックネススコーピオンの尾針は、着実にタンゴの頭へと進んでいた。到達する前に、針をどうにかしないと。

 バベルはいくつかの方法を思案した。

 一つ目、針を切断する。狙いは逸れるが、タンゴとの距離が近すぎる。針の先端に溜まった毒液がタンゴにかかる。それに、最悪切り落としたところで、タンゴに刺さる可能性が残ってしまう。——ダメだ。

 二つ目、シックネススコーピオンの前体を切断する。短剣の長さでは届かない。タンゴの大剣を奪って切れば、確かに可能かもしれない。——が、そんな時間があるか怪しい。

 三つ目、瞳を全て潰す。目が見えなくなれば、狙いが逸れるかも知れない。選択肢の中で一番の賭けになってしまう。——ダメだ。

 どうすればいい。ゆっくりの世界で、バベルの心臓が鼓動を速くする。その度に、この世界の終わりを告げているように感じてより焦った。

 これしかない。できるかは分からないけど、タンゴを助けるにはこれしか。

 結局、どの選択を取ってもタンゴが死ぬ可能性は残る。バベルがするべきなのは、タンゴが生き残る確率を上げる事だけだった。

 バベルは走り出した。短剣を逆手に持ち換え、シックネススコーピオンへと肉薄する。正面は、タンゴと鍔迫り合いを続けているため、避けて右側面から狙いをつける。火花を散らす空間に体を滑り込ませ、シックネススコーピオンの巨体の下を滑る。肉を隠す紫と黒の鎧の二重鎧の隙間。そこにある暗闇へと空色の刃を突き刺し、移動に合わせて空色の一筋の軌跡を描く。

 これに、大した意味はない。シックネススコーピオンの体をつなげる重要な場所が、こんな短い剣では切断で切るわけがない。だから、バベルは滑り抜けた先で、走らせた短剣を勢いそのままに横に薙いだ。

 二本の鋭利な足を、関節部で切り落とす。これだけの太さなら、アルマの剣身でも十分に届く。

 切り落とした足を見ていると、自分の中にある大事な何かも同時に切りつけているような、鈍い痛みが広がった。

(やっぱり、冒険者に向いてないな)そんなことを考えながらも、バベルは縮めた足を強く伸ばし、跳躍した。その体は空を切り浮遊感に包まれ、中空へとその身を晒した。

 バベルの狙い、それは毒針の軌道を逸らすこと。足を切りつけたのは、その後の為だ。本命は別にある。

 空へと身を投げたバベルはその身を翻し、毒針を足場に、急角度で進路を変更した。上空からの落下に加え、針を足場にした二度目の跳躍。高速に達したバベルは、逆手に持った短剣を赤く光る七つの宝玉に突き立てた。

 通常であれば、ここで甲高い鳴き声が響くのだが、バベルの体は時間を忘れている。他とは別の世界で生きている。この世界では、鳴き声も抵抗もずっと後にやってくる。

 一つ、二つ、三つ……。無抵抗の宝玉に短剣を突き立てるたびに、その見た目に反した青い液体が噴き出してくる。シックネススコーピオンの血液だ。噴き出すといっても、短剣を引き抜きしばらく経つと、ゆっくり煙が立ち上るように、傷跡から這い出てくる。そのおかげで、バベルは全身を真っ青にすることはなかった。

 しかし、異変が起きた。五つ目の赤玉に短剣を突き刺そうと、左腕を上に持ち上げたその時、全身の筋肉が強張り、振り上げた姿勢のまま、身動きが取れなくなった。呼吸はできているのに、肺に酸素が入らない。心臓の鼓動が鳴り止んだ。さっきまでうるさいほど暴れていた心臓が、急に動きを止めた。体内をめぐる血液を送るのを、吸い上げるのを、放棄した。

 バベル自身驚いた。今までの人生で、一度も感じたことのない感覚に、脳は何も解決策を提示できなかった。視界は良好と言って良い。間伸びして、音にならない音も聞こえる。普段以上に大きく聞き取っているくらいだ。肌を打つ重めな妙な風を捉えることもできる。しかし、動けない。指先一つを動かすことすらできない。

 シックネススコーピオンの鎧を踏みしめるつま先から、冷たいものが這い上がってきた。それに飲まれれば、もう二度と現実に戻れなくなる気がした。

 冷たい何かが胸の高さまで来た瞬間、両の指先からも冷たいものが、這い上がってきた。不安感も一気に膨張する。呼吸が荒くなる。酸素を取り込めない呼吸に何の意味があるのかと、いつものバベルなら考えた。だが、そんなことを考えている余裕はなかった。

 熱の籠っていた左腕も、完全に冷たい何かに侵蝕され熱を失っていた。

(まだ、まだ……もう少し……あと、少し……)

 動けと脳から指示を送っても体は動かない。いくら祈っても、瞬きひとつしない体は、完全に時間を停止していた。世界からも離されているような感覚が胸を貫き背中から出ていった。

 不安感に孤独感まで追加された。

 冷たい何かが、頭のてっぺんに到達した。その瞬間、目の前は真っ黒に染まった。何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。


「…………」

 誰かが叫んでいるのが聞こえる。しかし、それは言葉として耳に入ってこない。耳に蓋でも付いたようで聞き取りにくい。

「…………!」

 やはり聞こえない。真っ暗な世界でバベルは一人。この空間を漂っているのか、倒れているのか、歩いているのか、浮かんでいるのか、沈んでいるのか、それすらも分からない。

「………………!」

 何度こちらに声をかけても無駄だ。何も分からないのだから。

 深く暗い、真っ暗な世界。そこにバベルは一人。この事実が、胸の中で孤独感を大きく育てていた。しかし、そんな世界にも終わりが来た。一筋の光が、世界の端からバベルの顔まで伸びてきた。

「…………ベル! ……ろ!」

 光の向こうで、声が聞こえる。誰かが耳に付いた蓋を取り去ってくれたように、はっきりと聞こえ始めた。

 光がさらに強くなる。左腕がぴくりと動いた。

「……ル! ………………ろ!」

 誰かが呼んでいる。その声が段々と、はっきり聞こえるようになってきた。眩しいくらいに強まった光が、バベルの全身を優しく包み込む。

 

 心臓が、動き出した。

 ドクドクと、全身に血液を巡らせる。肺の中に酸素が入る。体が動く。

 開いていた瞳が、乾燥で少し痛んだ。どうやら、目を開いたまま気を失っていたようだ。

「バベル早く起きろ! また来るぞ!」

 タンゴが、どこか明後日の方向へと大剣を構えて叫んでいた。

 ………………何が、起きた?

  混乱する脳を無理やりに叩き起こし、現状を理解させようと、周囲を見渡した。

 砕けた石畳、崩れる石壁。立ち昇る明々とした炎と、見ているだけで鼻の奥に臭いを伝えてくる黒煙。

 タンゴの視線の先で、悶え苦しむように体を半壊した建物へと打ち付け、石畳を転がるシックネススコーピオン。

「……………………ああ」

 間抜けな声が喉を通った。全てを思い出した。今は、戦闘中だ

 すぐに起き上がったバベルは、手元に短剣がある事を確かめる。左手に持っていた短剣を右手に持ち替え、タンゴがそうしているように、転がるシックネススコーピオンへと構えた。

「どうなってんだ?」

 タンゴの質問の意味が分からなかった。

「お前がいきなり倒れたと思ったら、こいつもこうなったぞ」

 激しく火花を散らせていたタンゴの視界には、バベルは映っていなかったらしい。バベルは、シックネススコーピオンの目を四つ潰した後に、また吹き飛ばされたらしい。そうして気を失い今に至る。

「目を四つ。それと、右の足を二本切り落とした。あと、一応首の隙間に傷を入れたんだよ」

「は!? いつの間に」

「タンゴが、気を引いている間に」

 針のことは、気づいていないのなら言う必要は無いだろう。それに、まだ相手は生きている。

 手負いの魔物が一番危険だと言ったのは、ガストンだっただろうか。今、目の前にしてそれを実感している。今までで一番、存在感を強めていた。肌を打つ嵐のような空気が、シックネススコーピオンから放たれている。

「ギャリ——グリュ——ギリゥリリリ!」

 転がるのをやめたシックネススコーピオンの尾針が、こちらへと伸ばされる。しかし、ここは射程外だ。なぜ伸ばしたのかと、一瞬疑問が頭を過った。が、本能がすでに体を動かしていた。

「——ッ!」

「うわっ!」

 隣のタンゴをつき飛ばし、体を横に逸らす。その行動と入れ替わるように、タンゴとバベルの立っていた場所を針が通過した。

 伸ばして来やがった。筋繊維を伸ばし、骨を外した尻尾が一直線にこちらを狙った。その線上の石畳が、白煙を吐き出しながら溶けている。毒液の量も増やしたようだ。

 シックネススコーピオンの毒は強力だ。自身の強固な鎧と甲殻すら溶かす。その強力さ故に、シックネススコーピオン自身、毒液の分泌と放出には制限をかけている。

 シックネススコーピオンは、目の前にいる二人の人間を自身の命を脅かす敵と判断し、自傷を厭わない特攻を決めたらしい。

「何だよ。何なんだよこいつ!」

 タンゴの混乱した声がバベルの耳を叩いた。

「タンゴ、アイツは覚悟を決めたんだ。僕らを全力で殺しにくるよ」

 そう言ったバベルの中には、赤子を思う気持ちなど消え去っていた。残っているのは、生物同士が命を奪い合う、純粋な殺意のみ。

 バベルも覚悟を決めた。どれだけ泥臭かろうと、地を這ってでも、目の前の魔物だけは殺す。それが、これだけの傷を負わせた者の責任だと、そう思うから。

 胸の中で、釘を打ちこまれた獣が、音の無い声で歓喜を表した。

「行くよタンゴ!」

「おう!」

 こちらの意志を汲み取ったのか、タンゴの緋色の瞳にも強い光が宿った。得物を握る手に、力が篭る。

 シックネススコーピオンが、伸びた尻尾を自身の元へと引き戻し終えたようだ。身の回りにあるあらゆるものを打ち砕き、石畳に無数の切創痕と溶解痕を作っていた。

 毒液も、常に分泌させているようだ。あれでは、体の内側から溶解するのも時間の問題だ。

「ギャリルリゥリリ!」

 大きな鋏角を打ち鳴らすシックネススコーピオンの巨体が空気を揺らし、その身がブレた。

 風が頬を撫で付けた。そこに、湿り気を帯びた植物と生臭い血を混ぜたような臭いが乗っている。

「バベル……あれが、あいつの本気なのか?」

 タンゴの震える声が、背後を向いていた。視界に収めていたシックネススコーピオンが、消えた。その気配は、背後で蠢いていた。

「……………らしいね」

 図鑑に書かれていたことは、間違いではなかったが、正しくもなかった。これは、高速移動なんて優しいものじゃない。

「瞬間移動かよ」動きに目が追いつかなかった。

「ギリュリルリゥ」

 笑った。バベルにはそう見えた。シックネススコーピオンは、嬉しげに尾を揺らしているように見えた。肉の桃色と、骨らしき白濁色の塊の間を青い液体が滴り落ちる。その上に被さった紫と黒の二重鎧は所々にひび割れを作り、場所によっては砕けて剥がれ落ちていた。そんな尻尾が毒液を撒き散らしながら、針をあちらこちらへと先端を覗かせる。

「……………あの中なら」

「え?」

 バベルの呟きに反応したタンゴだが、会話をしている暇などない。シックネススコーピオンの体が、再度空気に溶け込んだ。

「——ガッ!」

 隣にいたタンゴが、一瞬にして消えた。

「タンゴ!」

 風がバベルの体を煽る中、後ろを振り返った。

 元は武具店だったであろう崩れた建物。その壁に、タンゴは寄りかかって座り込んでいた。両足を投げ出し、完全に脱力している。手元から離れたのか、大剣が姿を消していた。

 直ぐにでも駆け寄ろうと足を動かしかけたバベルは、動きを止めた。

「ギャルリゥルリ」

 シックネススコーピオンが、こちらを見ていた。潰れた瞳からは、未だ青い血が流れ出ている。

 残った三つの瞳。そのどれにも、バベルが反射して映っていた。

 完全に狙われている。それを理解したバベルの脳は、逃げるよう警告を発していた。

(あの中に入れたら)

 バベルは思う。もう一度、時間を忘れたあの世界を。

 時間の進みが遅くなるあの世界ならば、シックネススコーピオンの動きも見えるはずだ。それ以外に勝つ術がない。警告を無視し続けるバベルは頭痛に襲われ、視界が揺れた。

「クソッ!」

 待てど祈れど、あの感覚はやってこない。火傷したかと思わせるほどの左腕の熱と、心臓から送られる冷え切った血液が溶け合うあの感覚。安らぎを覚えるあの感覚。それが、全く感じられない。不快な臭いと熱気。全身にぶつけられる殺意だけが、バベルの周囲を取り巻いていた。

「ギュルルルル」

 鋭利な鋏角をガチャガチャ鳴らし、シックネススコーピオンはその身を小さく折り畳んだ。力を込めている。そう感じ取ったバベルは、諦めにも似たものが湧いて出た。

(ここまでか)

 満足の人生だとは全く言えなかった。今朝、ガストンに言えなかった言葉を、この後にも言えないことが悔やまれる。レインとの昔の約束を果たせないことに、心が抉られる。タンゴがいつか、語って聞かせてくれるであろう英雄タンゴの冒険譚を聞くことができないのが、残念でならない。

 

 ——あれだけごちゃごちゃ言っといて、諦めるの?

 幼き日のバベルが、銅のブロードソードに体を預けて嘲笑っていた。

(しょうがないだろ、人間と魔物じゃ、そもそものできが違う)

 ——言い訳だね。そのためのパーティだろ、そのための言葉だろ!

 幼いバベルが、怒りを露わにした。

 ——それをお前は拒んだんだ! 命を奪う。その当事者になりたくなかったから。だから、お前は誰の手も取らなかった。

「そう…………だな」

 ——でも結局、その道を選んだ。しょうがない。自分は嫌々やっているんだって言い聞かせて。まるで、自分は他の冒険者とは違うんだと、他を見下すことで、自分を正当化してきたんだ。カルカロとお前で何が違うんだ?

 最後に自分に責められて死ぬなんて、何とも間抜けな終わり方だ。バベルは嘲笑を浮かべ、自己嫌悪に浸った。

 首筋に冷たい何かが這った。胸の中の獣が、吊り上げた嘲笑を上からこちらに落としていた。

 ——運で生き残るのか。……それもいいんじゃない。言い換えれば、この先もっともっと苦しむことになるんだから。

 そう言った少年バベルは、姿を消した。


 何かが近づいている。——いや、何かが降って来る。


 ——————!


 眩い白光、そして爆発音。

 バベルもシックネススコーピオンも吹き飛ばされた。全身を滅多打ちする衝撃に、バベルは石畳を転がりながら体を丸めた。

 耳の奥で、爆発が尾を引いていた。他の音を吹き飛ばしてして暴れ回っていた。見える物が二重三重になって見える。全身に力が入らない。

 揺れる視界の中で、何かが地面に落ちたのがわかった。人の形にも見える。陽炎の向こうを見ているようで、視点が定まらない。

 人の形をしてる何かがこちらに近づいてきた。が、真っ黒に塗りつぶされていて、詳しくは分からない。

「……! ……………!」

 何かが聞こえた気がする。しかし、視界が薄れて行く。感覚が鈍って行く。


 ————————!


 最後に感じたのは、暗闇の向こうで感じた、二度目の白光と爆発の嵐。そしてバベルが倒れている石畳を、広範囲に砕く大きな衝撃だった。

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