エピソード 06
「この矢印が、そのヴァーチャルミレニアムとどう関係があるんだ?」
「……入り口に見えるの……」
「はい?」
その時、急に廃棄物処分場の頑丈な全ての扉の外が激しく振動した。
「あれれ? なんだろう?」
ジンが地面を向いていた姿勢から顔を上げ、頑丈な扉への隔壁シャッターのボタンを押そうと歩き出した。どうやら、外を確認しようとしているらしい。
廃棄物処分場の頑丈な扉へは、その中間点に位置するオレンジ色の警告とデカデカと書かれたテープが貼ってあるシャッターがある。その隔壁シャッターを開けなければらないからだ。
頑丈な扉は、そのまま公域施設の道路へと繋がっている。
俺は、公域施設の駐車場にいるマスターが乗った。オンボロ自動車が今頃心配になってきた。
「不用意に開けるな! ジン!」
「あ、でも。隔壁シャッターが向こうから開いたよー」
「……うん?」
「あれれ? イルス? こっちへマスターが血相変えて走って来たね」
「……はあ?!」
マスターは、死に物狂いでこっちへ走ってきていた。それも引き金が軽いポンコツショットガン片手にだった。ジンの後ろに隠れると、ガタガタと震え出しては俺の顔へ上目遣いに命乞いをした。
「イルス!! 外は危ないんだ!! それも特大に!! た、助けてくれ」
「マ、マスター? 何が起きたんですか?」
「シ……シ……シシ」
「シ?」
「シンフォニック・エラーだよ!!」
「?!」
突然。廃棄物処分場の天井にぶら下がる。頼りない電球の灯りが全て消えた。
鋼鉄の壁。頑丈な扉。隔壁シャッター。と、緩やかな振動と共に全てが静寂に包まれた。
「もう!! 行くよ!! イルス! マスター! 多分、こっちの方!」
ジンが文様を右の方向へ走り出した。
俺たちもジンを追う。
しかし、目と鼻の先には、鋼鉄の壁があった。
「ジン!!」
「ジンちゃん!!」
ジンが壁に激突? いや、通り抜けた。
……
すると、ジンが通って行った壁の中から、廃棄物処分場の隅まで、多くのあやかしたちや人々が行き交う市場、古い雑居ビル、薄い本しか並んでいない本屋、不味そうな料理屋などの街の様子が押し寄せてきた。
その街は、最初ホログラフィーのように朧気だったが、次第に街自体が高慢な顔をしているかのように、実体感を兼ね備えて、廃棄物処分場の鉄骨や壁もお構いなく、物理法則と現実世界も破壊して隅々まで広がりだした。
「さあ、多分こっち! 急いでね!」
ジンが俺たちを街の雑居ビルの中へと誘導する。