エピソード 05 千年電脳仮想空間
かなり強いアルコールを飲んで、厨房に隠れていた奥歯までガタガタ震えている依頼人を。俺は極力落ち着かせ、もう危険はないからと、金を貰うと、その足で。料理屋「キアニーナ・ビステッカ」へ戻る。それが今日の午後。それから、夕方にジンとマスターを連れて、すぐに廃棄物処分場へ向かった。
ジンがこう言ったからだ……。「アンダーワールドへの入り口? うん。私、知ってるよ」
ここ廃棄物処分場の奥に、アンダーワールドがあるとジンが言ったが。廃棄物処分場は広大だが、中はすっからかんだ。幾つもの錆びた鉄骨が立ち。様々な頑丈な物体でも処理できる機械のなれの果てや、薄汚れた緑の苔が生えていて、廃棄された野良モンスター付きだった。
俺は、研ぎ澄まされた集中力を保ち、高出力電磁ソードで、相対する超化学モンスターの左腕を切り落とした。モンスターは頭の電極が火花を飛ばすほどの大絶叫を放つ。すぐさまモンスターが大口を開けたままこちらに突進してきた。
俺は骨董屋での掘り出し物の44マグナムを、上着の内ポケットから抜いた。撃鉄を上げて、狙いを定め。数発撃ち放す。
モンスターの胸に幾つもの大きな風穴ができた。
それでも、モンスターはそのままこちらに向かって、無造作に右腕を振り回した。鞭のようなその細長い管の腕は、所々が放電している。
俺はその場から、遥か上の鉄骨に向かって、跳躍した。
雨に濡れた鉄骨に着地すると、黴臭い銃で今度はモンスターの電極だらけの頭部を狙う。
「お疲れ様……」
パンッ!
と、一つの発砲音で、ケリはついた。下方のモンスターの頭部は破裂し、やっと事切れたようだ。
「ふうっ!」
一息吐いて、俺は44マグナムを肩からぶら下がっているホルスターへ入れると、辺りを見回した。ここにも無いやと、歩き出すと、西側の鉄骨の影に隠れていたジンがひょっこり顔を出した。
「お疲れ様……あ、ねえ! どこ行くの?」
「どこって?? アンダーワールドの入り口を探してるんだ」
「入り口? さっき言ったでしょ。ここにあるよ。って……」
「こんな人っ子一人来ない場所にか?」
「そうそう」
「……」
「ここに、アンダーワールド。別の名をヴァーチャルミレニアム(千年電脳仮想空間)の入り口があるの」
「ヴァーチャルミレニアム?」
「そうそう。ほら、ここの文様。矢印にも見えない?」
「……うん?」
ジンはいつの間にか、地面に浮かび上がる文様を指さした。
「み・ぎ……?」
「多分、そうそう」