エピソード 19
「さて、どっちへ行くかだ……」
翌朝のホテル前で、軽い荷物だけを携えたマスターと俺たちは、裕福層の都市部へ行こうか。それとも、人通りの激しい市場から更に南の方。貧民層のスラブ街へ行こうかと迷っていた。
「都市部かスラブ街か……」
「イルス。どっちも車で行くんだよな?」
「あ、ええ。マスター。そうなんですが……」
「じゃあ、地面の凹凸が少なそうな都市部だな」
「あ、はい……」
「イルス……お母さんは? 人身売買組織はどこ?」
「うーん……」
恐らく、バーチャルミレニアムでは雨が良く振るのだろう。
その時。俺の気持ちを現すかのようにグッドタイミングで、再び空から水色の雨が降って来て、貧相な格好でも賑わいごった返す市場に、どこかどうしようもない静けさと鬱屈さを与えた。
「なあ、イルス? 一度、サイバージャンクシティに戻らないか? 店を空けすぎるのもいけないし。それに、今日になって、新しい情報が俺の情報屋から入ったようだ」
「そうなんですか? 例のマリカからですか?」
「そうだ。そのマリカがいつもの場所へ来てほしいってさ」
「……うん。そうですね。そうしましょう。ジン。一旦、サイバージャンクシティへ戻って、ジンの母親がどこにいるのかの情報を探してみよう。マリカが知っているかも知れないし、その新しい情報はどんなものか気になるじゃないか?」
「え? イルス? マリカって誰なの?」
「マスターの昔からの知り合いで、超一流の情報屋をやっている人なんだ」
「あ。イルス? そのマリカの情報ってな。この事件絡みじゃないかもしれん」
「え? どういう意味でしょうかマスター?」
「俺はシンフォニックエラーのことで、マリカに依頼していたんだ……」




