エピソード 18
マスターの素晴らしい肉とワインの後で、依頼人であるジンが珍しく食器を片付けてくれた。
「でもねえイルス。このまま彼女の母を探しても、どうやって救出するんだい?」
マスターが、テーブル越しに俺に今後のことを話し掛けてきた。
俺は食器を洗っているジンの方を向いて、今まで頭の片隅で考えていたことを、一度話しておくことにした。
「マスター。ジンの母親である縁狐は、人身売買組織に今もいるとは考えにくいのですよ」
「え? そいつはどういう意味なんだい?」
「あのですねえマスター。ジンがスラブ街で縁狐と連絡が取れなくなってから、どれくらいの時間がかかっているか? そして、ここをいきなり襲撃してきた組織のシンフォニックエラー研究所。これらで、だいたいわかりませんか?」
「?? あれ? 俺には、さっぱりだよ」
「当然、二つの組織はジンと縁狐を殺そうとしているんです」
「?!」
「多分、特定のあやかしという存在が、災害と関連しているとかなんでしょうね。いや……」
「災害と? うん? どうしたんだ? イルス?」
「あやかし……シンフォニックエラー……あやかし……シンフォニックエラー……」
「?? あ! そうか!! わかったぞ!! 二つは関係しているんだ?!」「ええ……そうなんですマスター。……そういえば、シンフォニックエラーは未だに原因不明。あやかしの存在も未だに原因不明……。きっと、シンフォニックエラー研究所でも、人身売買組織もこの二つの謎は解けていない……」
ジンが食器を洗うのを止め。
狐耳をピンと立てて、心配そうにこちらを窺った。
「うん! マスター。この話はここで一旦おしまいにしましょう。続きはまた今度にしましょう」
「え? あれ? なんでだ?? 俺は続きが気になって夜も眠れなくなるぞ」
「すみませんマスター。でも、今日は良い夜です。ワインがよく合いますよ」
俺は、マスターに目配せをして、ジンの不安気な顔に顎を指した。
「ワイン……飲み干しちまったよ……」
マスターは、ジンの今にも震えそうな表情を気のどくに思い。
ワインを買いに、席を立ち部屋のドアへと向かった。




