エピソード 10
「ところで、俺たちの部屋はどこなんだ? まさか狙われているからとか、部屋が広いからとかって……一緒の部屋ってわけじゃ……ないよね?」
「違う! イルスとマスターは隣の部屋。ただ……依頼を引き受けてくれたから、ここでちゃんとお話しないとと思って」
「うん? ああ、ジンの母親のことか」
「そうそう。母の名は縁狐。昔、私と母はここに住んでいたけど、私だけじっとしてられなかったの。それで、母に無理を言って、だいぶ前にサイバー・ジャンクシティのスラブ街に一人だけで移り住んだのよ」
ジンの母親は、こんな部屋で何年も?
いくらなんでも退屈すぎるだろうに……いや、そうか。狙われていたんだな。
「誰に狙われていたんだ? 話を聞くと最初から狙われていたんだな。だが、それは人身売買組織ではないな」
俺は冷たい声で、ジンに聞いた。
縮こまったジンは、震える声で「わからないの」と答えて首を振った。
ジンの母親なら知っていたってことか……。
「イルス? なんでそうなるんだ? 相手は最初から人身売買組織じゃないのか?」
「いえ、違うんです。マスター。最初にジンと母親を狙っていたのは、誰か? でもあるんですよ」
「へ?」
「最初から人身売買組織に目をつけられてるのなら、ジンと母親だけが隠れているのは、危険なだけです。相手はあやかしを狙っているのですから、相手の目から隠れるためには、少なくても一人の人間がいないといけない。人間に匿ってもらえば、そして、身の周りの世話をしてもらえば、それだけ危険はなくなります」
「へえ。確かにそうだな」
「ふんふん。そうなんだイルス。でも、私。母がどこから逃げてきたのかさえも、全く知らないの」
「うん? 妙だな……」
「え?」
「ここに住む前を知らないって?! ジンは昔住んでいたところから逃げてきたんだろ? 逃げて来たときは、そんなに若かったのか? ここに住む前の記憶は本当にないのか?」
話の最中で、ジンは少しずつ項垂れていった。
「だって……。ずっと前の住処では緑色の檻に入っていたから」
「なんだって?!」
「あ、でも。檻とはちょっと違うかも……その檻には、呼吸ができる緑色の液体が詰まっていたの。まるで、培養カプセルみたいだった」
「……緑色の液体が詰まった檻……」




