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エピソード 0

 黒い色の雨の夜だった。


 街の至る所の電子機器からは、種々雑多な赤い文字でエラーが表示され、都市機能が一時的だが完全に停止していた。


 激しい雨の中。308階の超高層タワーの天辺のフェンス越しで、一人の尻尾が生えた女が佇んでいた。


 そして、女は何を思ったのか、遥か遠くのアスファルト目掛けて飛び降りた。


 空から激しい雨が降り続ける中。強風と共に女の身体は、ユラユラと吸い込まれるかのように地面へと落下していく。


 元は都会のネオンが煌びやかなこの街は、その光が排気ガスによって、真っ黒に覆われていた。


 超高層タワーの仄かな明かりが、女が落下するほど、通り過ぎていくほど、明滅し、停電したかのように消えていく。


 女が落ちるべき。 

 地上の交差点のど真ん中は、すぐそこまで来ていた。


 だが、尻尾の生えた女は、これでいいんだとでも思っているかのような。とても安らかな顔だった。


 

――――



 ここはサイバー・ジャンクシティ。


 世界中を巻き込んだ核戦争後でも、逞しく生きる人々によって、作られた。いわば屑鉄でできたゴミ箱だ。


 だが、全てが終わりを告げる時は、誰にも予想できずに突然にやって来てしまうもんだ。


 当然、この街にも。

 その終わりの時がきた……。


 世界中のネットワークに垂れ流される。

 原因不明のエラーの数々。

 インターネット、経済、医療機関、警察機関などは瞬く間に崩壊し、人々は恐怖、不安、不信感、疑念、猜疑心から、その狂騒曲のような現象を皮肉を込めてこう言った。


『シンフォニック・エラー』と……。




 多くの命でさえ奪うシンフォニック・エラーとは、前代未聞の原因不明のエラー群だが、一斉に全てのコンピュータが突然誤りと判断して表示されるものだが、その誤りがどこにあるかすら、国の研究機関でさえ皆目見当がつかないんだそうだ。


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