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自殺しようとしている子を救ってあげたら懐かれたんだが  作者: 遠藤俊介
第1章 自殺しようとしている子がいるんだが
3/3

第3話 自殺しようとしていた子が泊まることになった件

「......とりあえず、家に帰って落ち着いたほうがいい」


 彼女の嗚咽が収まったころ、まだ俺の腕の中にいる彼女に向って言った。


「......帰りたくない」


「なんでだ?」


「言いたくない」


 なんじゃそりゃ。


「俺にはこれ以上追求する権利はないから、これ以上は聞かない。とりあえず、俺の家に来い」


 彼女はこくっと首を動かした。


「傘、持ってるか?」


「......持ってない」


「これ使え、って荷物校門に置いてきたんだった」


 まあ濡れすぎてて傘をさしても無意味な気がするが。


「ほら、いくぞ」


 なんで俺は初対面の女子を家に連れ込もうとしているんだ?


 まあ、いいか。


 俺は彼女を連れて校門へと向かう。荷物盗まれてないといいが。






「お前、名前は?」


 校門で荷物を取り家まで歩いている途中、ふと尋ねてみた。さっきは泣きじゃくっていて顔がよく見えなかったが、よく見てみるとめっちゃ可愛い。高1だろうか。背は俺よりも10センチほど小さい。ちなみに俺もそんなに背は高い方ではない。


「......れい村花怜むらはなれい


れいか。いい名前だな。れいは何歳なんだ?」


「......17、今高3」


 俺より年上だったとは。今は10月なんだ。高3ならもう共テまで三ヶ月じゃないか。なぜ自殺しようとしていたのか。余計気になるな。


「家まではもうすぐだから。家に着いたらとりあえず風呂に入れ」


 俺たちは大雨の中、びしょぬれの状態で家まで歩いた。






 家までは歩いてすぐなので、すぐについた。


「今から風呂沸かすからとりあえずこれで体をふけ」


 そう言って俺はれいにタオルを渡す。


「あったかい......」


「そうか、それはよかった」


 タオルに顔をうずめるれいは年齢には見合わない可愛らしさがあった。これ以上見ていると惚れてしまいそうだ。


 そんなことを思っているとちょうど聞き覚えのある音が聞こえてきた。どうやら風呂が沸いたらしい。


「風呂沸いたから入ってこい、今お前がきている服は洗濯しちゃうから更衣室にある服に着替えてくれ」


「そこまでしてくれる必要ないのに...」


 そう言うとれいは風呂場に向かっていった。


 とりあえず俺はれいが風呂に入っている間に食事を作っておくとしよう。


 この家には俺と中3の妹の二人で暮らしている。父と母は俺が5歳のとき離婚し、父の方について行ったが、父も5年前に亡くなった。母は今では音信不通でどこにいるかもわからない。今は父方の祖父母の仕送りで暮らしている。今妹は修学旅行なのでこの家に妹が帰ってくることはないだろう。


「食材余ってたっけなぁ」


 そう思いながら俺は冷蔵庫を開ける。


 よかった、食材は一昨日買ったばかりだから余ってる。

 俺は手早く簡単に作れる料理を二人分作る。


 この家は父が亡くなった時に祖父母が買ってくれた家である。近所の友達と離れ離れにならないようにと祖父母が気を遣ってくれたのである。


「祖父母には感謝してもしきれないよなぁ」


 そんなことを思いながら俺はソファに座る。服がびちょぬれだったので上半身だけでも拭いておこうと思い俺は体を拭き始めた。


「ありがとうございました、お風呂。ってお取り込み中でしたか」


「いや、大丈夫だ。体拭いてるだけだから。それよりもご飯作っておいたから食べなよ」


「流石にそこまでお世話になるのは...」


「家帰りたくないんじゃなかったのか?」


「それはそうですけど...」


「ちょうど食材が余ってたんだよ。だから逆に食べてくれたほうがありがたいまである」


「じゃあお言葉に甘えて、いただきます」


「俺は風呂入ってくるから先食べといてくれ」


 そうれいに言い、俺は風呂に入った。






「やっぱお風呂は最高だな」


 風呂に10分ほど入った俺は体を拭きながら思った。


れいの様子を見るに家族と何か揉めたのは間違いなさそうだ」


 体を拭き終えてタオルを洗濯機に入れ、パジャマに着替えた。俺は家ではパジャマで生活するのがベストだと考えている。


 俺がリビングに戻った時、怜はご飯を食べながら泣いていた。


「なんで泣いてるんだ?もしかして、口に合わなかった?」


 れいは無言で首を横に振った。


「違うの、こんなにおいしいごはん、久しぶりに食べたから......」


 れいはまた泣き始めた。


「.......なんで」


「え?」


「なんであの時、私を助けたの」


「なんでってそりゃ、見殺しにするわけにはいかないだろ」


「嘘、何か理由がなきゃあんな必死に助けない」


「.......はぁ、あんまり言いたくないんだけどな」


「昔、親友がいたんだ。けど、ちょっとな、学校に来なくなって、そのまま.....」


 今でもあのことを思い出すと胸がはち切れそうになる。


「......そう、辛いこと話させちゃって、ごめんね」


「いや、いいんだ。こうしてお前を助けられたし」


「...そう」


「それでお前はこの後どうするんだ?」


「このままお世話になるのも申し訳ないから、帰る」


「帰るってお前、帰りたくないんじゃないのか?」


「......」


「...はぁ。今日は俺の家に泊まれ。」


「そんな、迷惑かけるわけにいかない」


「だからって見捨てるわけにはいかないだろ」


「...ありがとう」


 れいは笑顔でそう言った。れいの笑顔を俺は初めて見たかもしれない。それは可愛いでは言い表せないほどの可愛さ、もはや愛おしかった。


「妹の部屋が空いているから今日はそこで寝ろ」


 れいはこっちを見て黙っていた。


「どうした?」


「そういえばまだ、あなたの名前を聞いてない」


檜垣ひかき檜垣悠真ひかきゆうまだ。さっきから偉そうに話してるけど実はお前より年下の高2だ」


「そう、今日はありがとう。檜垣ひかき君」


 れいはそう言い、妹の部屋へと向かっていった。

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