アーク 一.
青島孝と関森由紀が関森康夫を空港に送っていた頃、アークの日本支部では、ちょっとした異変が起きていた。
アークが所有する全車両にはGPSがついており、日本支部では常にその現在地を把握できるシステムになっている。
そのモニターに表示される車両の中で、三台の車が奇妙な動きを見せていた。
モニターを前にした担当者が「おかしい……」と呟く。
それを偶然通りかかった夏目統括リーダーが聞きつけ、担当者に尋ねた。
「何があった?」
「林田司令官と川永リーダー、稲原リーダーの車がおかしな動きをしています」
「おかしな動き? どんな動きだ」
「とても車が通れそうもない狭い道を行ったり、迷走しているような動きをしたりしています」
「分かった」
夏目は冷静に状況を把握した。
「誰か見に行かせますか?」
「いや、わざわざ行かせることはない。きっと車からGPS装置を取り外し、動物にくくりつけたのだろう。動きがおかしくなったのは何時からで、どの地点からか調べろ」
夏目の頭脳は、即座にその可能性に辿り着いた。
「はい!」
夏目はその場を離れ、**塚田俊也**の様子を見に行くことにした。 (林田司令官、桐生、川永、稲原はアークを抜けたか……。とりあえず、できるだけのことはしよう) 彼はそう考えながら、塚田俊也のモニタールームに着いた。
「様子はどうだ?」
「はい、おとなしくしています」
直属の部下である木田リーダーが報告した。木田リーダーは、アークの各リーダーの中でも小柄な男だ。
「そうか。片時も目を離すな」
「はい。しかし、何もできない環境にあると思いますが……」
木田は、塚田が監禁されている部屋の厳重さから、彼の危険性を軽んじているようだった。
「まあ、そうだが、奴は頭がいい。何をやるか分からん」
夏目はそう言い残し、その場を立ち去った。