不明
**青島孝と関森由紀**は、がっくりと肩を落としてうなだれていた。
関森義行に兄弟の連絡先へ電話をかけてもらい、「これから由紀が四石を守っていくことになったから、受け取りに行ったら渡してほしい」と伝えるつもりだった。しかし、相手はまったく電話に出ないのである。
**関森義行**が言うには、退院して家に帰ってすぐに兄弟たちに電話し、四石を狙われて襲われたことを伝えた上で、「すぐにどこかに身を隠すように」と話したという。
「携帯は持っていらっしゃらないのですか?」
青島孝が尋ねたが、義行は首を横に振り、「確認していなかった」と告げた。
ほんの少しの間を置いてから、青島孝が口を開いた。
「メモを見せてください」
義行は持っていたメモを渡した。
孝はメモをちらっと見ると、
「仕方ありません。メモに書かれた住所に行って、手掛かりを見つけるしかなさそうですね」
と、淡々と告げた。
そう言うと、今度はゆっくりとメモを眺めた。
「これはお返しします」
孝はメモを義行に返した。
「連絡先を控えていかなくてもいいのかね?」
義行が尋ねる。
「はい。長期記憶に格納したので、好きな時に取り出せますし、簡単に忘れてしまうこともありません」
「なるほど……」
「由紀はやはり連れていくのですか?」
**関森清美**が小さな声で尋ねた。
「由紀さんは、四石のありかを探せる特殊な能力を持っているので、一緒についてもらわないと探すのは無理です」
「そうですか……」
清美の声は、さらに小さくなった。
「由紀さんは、人の考えを読む能力で危険を回避できると思います。僕も全力を尽くして、必ず守ります」
「分かった。ところで、いつ出発するのかね?」
義行は、きっぱりとした口調で言った。
「明日には出発したいと思っています。今から調べて、具体的な予定を決めます」
「そんなに急がなくても……」
清美は、心配そうに引き止めようとする。
「急ぐのには訳があります。実は、ずっと見張られていて、いつ再び襲われるか分かりません。早く出発して、まいてしまうつもりです」
「まけるの?」
「自信があります」
青島孝は、そう力強く答えた。清美は、もう何も言えなかった。ただ、無事を祈るだけだ。
青島孝は辞去し、あてがわれた部屋に戻って携帯を操作していた。
しばらくすると、そこへ由紀がやってきた。
「さっきはまいてみせるって、自信たっぷりだったけど、本当に大丈夫なの?」
「テレパシーを使って見張っている方は厄介だ。撹乱することはできないか?」
「やりたいけど、相手の位置が掴めないから、どうしようもないのよ」
「探りを入れてきていることに対し、逆探知はできないのか?」
「残念だけど、そこまでの能力はないわ」
「分かった。もう一方の監視者は、ただ尾行しているだけだから、まくことはできる」
「今のところは特殊な能力は感じないから、大丈夫みたいね。ところで、何か調べているの?」
「時刻表だ。明日の予定を組んでいる。スムーズに行動する必要があるから、後で説明する」
「分かったわ。コーヒーでもどう?」
「いれてくれ」
由紀は、コーヒーを準備するために部屋を出ていった。