失敗
話はさかのぼり、関森家の地下室で麻酔によって襲撃され、**青島孝**が逆襲した事件のすぐ後のことだ。
**林田未結**は、関森家の三人と青島孝を麻酔で眠らせて運び出し、監禁して口を割らせ、「四石」の情報を得る、という計画を立てていた。しかし、その計画が失敗に終わり、稲原リーダーとその部下二名が警察に捕まったという報告を聞いて愕然とした。
「一体、何があったというんだ……」
林田未結は、信じられないという顔で呟いた。不思議でならない。とにかく、何が起きたのか確認しなければ気が済まない。
「桐生、私は何があったか、確認に行って来ようと思う」
「今、川永リーダーがネットニュースを調べています。それからでも遅くはないでしょう。それにしても、なぜ失敗したのか。失敗するはずはないと思ったのですが」
**桐生明**は、冷静にそう答えた。
「相手は素人ばかりだったはず。こっちはプロだぞ」
「慢心していたとしか考えられません」
桐生は、そう分析するしかなかった。
その時、同じワゴン車の中にいた川永リーダーが、彼らに話しかけた。
「ネットニュースに載っていました」
ネットニュースによると、関森家に強盗と思われる三人組が侵入したが、逆襲にあって捕まったという。三人は負傷しているが、回復を待って取り調べを行うとのこと。撃退した功労者は、遊びに来ていた青島孝さん、と書かれていた。
「青島孝!」
林田未結と桐生明は、同時に声を上げた。
「三人が青島孝に敗れるなんて……」
林田未結は、信じられないという様子で桐生に説明を求めるような口ぶりだった。
「もしかしたら、四石の能力を得たのかもしれません」
桐生は、唯一考えられる可能性を口にした。
「それは考えられない。関森家の者がそう簡単に青島孝に全幅の信頼を置くとは思えない。やっぱり私が行って調べてくる」
林田未結は、いても立ってもいられない様子で車から出ようとした。
「ちょっと待ってください。関森家の周辺を偵察に行った部下から連絡が入っています」
川永が、今にも車から飛び出していきそうな林田未結を引き止めた。
連絡によると、関森家には多数の警察関係者が集まっており、とても近づくことはできないという内容だった。
それを聞いた林田未結は、がっくりと肩を落とし、まるで独り言のように呟いた。
「失敗したけど……。稲原リーダーたちは、かねて打ち合わせた通り、私たちへ向かうアークの追撃の手を緩めてくれるはずだ。その後に、なんとかして助け出してやりたいな」
桐生と川永は、静かに頷いた。