病院 二.
関森家の三人は、広い部屋の中にいくつも並べられたカーテンで仕切られた一角のベッドに横たわっていた。
周りには誰もいない。広い部屋は途中で直角に曲がっており、その向こうから、人の声が聞こえてくる。おそらく、今到着した急患の処置を行っているのだろう。
**神山明衣**は、透視の能力を使い、カーテンや壁越しに誰も周囲にいないことを確認すると、関森由紀の額にそっと掌を当てた。 (三人とも、死んでもらうわけにはいかない) 明衣は心の中でそう呟いた。
彼女の大きな瞳が見開かれ、オレンジ色に輝く。額に当てた掌からエネルギーがほとばしり出て、関森由紀に活力を与えた。そして、同じように生死の境をさまよっていた他の二人にもエネルギーを与え、次々と生へと引き戻していく。
(これで、とりあえずは一段落ね) そう思った明衣は、再び周囲を透視して、誰もいないことを確認した。それから、もう一度由紀の額に掌を当て、眠りから覚めるようにエネルギーを与えた。もちろん、青島孝から頼まれた伝言を伝えるためだ。
由紀が目覚め、明衣が青島孝からの伝言を伝えると、彼女はすぐに立ち去った。その後、すぐに担当医がやって来て、驚きの声を上げた。生死の境をさまよっていたはずの由紀が、起き上がっていたからだ。さらに、**関森義行も清美**も、危篤の状態から急激に回復していたのである。
明衣は、能力を使った疲れを感じ、ホテルまでタクシーを使った。
ホテルにチェックインして部屋に入ると、ベッドに腰掛けた。 (報告をしなくちゃいけないけど、さっぱりしてからにしよう)
シャワーを使い、さっぱりしたところで、彼女は電話をかけた。相手は**神山一輝**室長である。電話に出た一輝の第一声は、「遅かったな」だった。
色々とあって遅くなったことを伝え、明衣は今日の報告をした。
「**青島孝**には何か秘密がありそう。銃弾を受けているのに、けろりとしているし、泳がせていたら、何かを掴めそう。もちろん、関森由紀も義行、清美もね」
「わかった。ところで、中原が関森康夫に遠隔催眠を行って、いくつかの情報を得た」
「遠隔催眠を?」
「そうだ」
「どんな情報?」
「四石という不思議な石が四つあり、関森康夫はその中の**智石**を所有していたこと。そして、それを関森由紀に預けたこと。**抗石**は関森義行が持っているが、その他の石がどこにあるかは分からない。四石を全部集めて、全ての能力を身につけると、更にとてつもない能力が身につくという話だが、どんな能力かは不明だ。智石と抗石の能力については分かったがな」
一輝はそう言うと、智石と抗石の能力を説明し、抗石の能力を一番最初に身につけなければならないことも伝えた。
「関森康夫の方は、動きがあるかどうかを見張っていたらいいから、中原は明衣の方に向かわせる」
「関森康夫の方には、誰を?」
「**淳**に行かせる」
電話を切った神山明衣は、関森家の三人にエネルギーを与えている時のことを思い返していた。 (淳がいてくれたら良かったのに……) もし淳がいたら、周囲を透視して疲れることもなかっただろう。淳が気配を読んで知らせてくれたはずだ。 (青島孝は抗石の能力を得たのかもしれない……。だとすると、地下室にあった石が抗石か?もう一つのは智石に違いない) そう思うと、明衣は今すぐにでも関森家の地下室に行きたくなった。しかし、今夜は止めておこう。警察関係者がたくさんいて、スキがないに違いない。
神山明衣はベッドに横たわり、眠りについた。